第17話
雨が降っていた。
ぽつ、ぽつと落ちてきた水滴はすぐに本降りとなり、俺の身体を容赦なく濡らしていった。
濡れた地面に膝をつき、俺は黙って空を見上げていた。
空には何の答えもない。
どうして、こんなにも独りなんだろう。
何かが間違っていると、わかっていた。
だけど、それがなんなのか、もう思い出せない。
俺は、間違っていたのか?
優しくすることが?
癒すことが?
助けを求める声に応えたこと。
震える手に手を伸ばしたこと。
痛みに寄り添い、涙を拭ってきたこと。
全部、間違いだったのか?
それが、裏切りの理由だったのか?
フィーネ。
あの瞳は、もう俺を見ていなかった。
真柴。
あいつはまた、俺のすべてを奪って笑っていた。
そして、村人たち。
教会の噂を鵜呑みにし、俺を恐れ、拒絶し、否定した。
救ったはずの老夫婦でさえ──再会したときには目を逸らし、逃げた。
「ごめんなさい……関わってはいけないって、言われて……」
あの時の老婆の震える声が、今も耳に残っている。
誰も、見ていない。
誰も、聞こうとしない。
黒い光。
それは、俺の中から生まれる力だった。
何度も、人を癒した。
傷を、病を、苦しみを取り除いた。
だけど、その光を見た者は──皆、恐れた。
呪いだと、魔の力だと、背を向けた。
ならば、もう癒す必要なんてない。
優しさなんて、意味がなかった。
差し伸べた手は、振り払われるだけだった。
孤独だった。
寒かった。
夜の森で、焚き火の前に座る。
火はあっても、心は凍えていた。
子供に石を投げられ、罵られ、追われても、何の怒りも湧かなかった。
ただ、空虚だった。
どこで間違えたんだ。
誰か、教えてくれよ。
でも、誰も答えてくれない。
だから、俺は、自分の手のひらを睨んだ。
そこに揺れる、黒い光。
まるで俺の心そのものみたいな、暗くて、深くて、出口のない光。
あれほど信じた癒しを。
この手に宿った優しさを。
その夜、俺は初めて──
心の底から、自分の癒しを、憎んだ。




