表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
優しすぎる少年は“黒い癒し”で世界を救う 〜追放され、裏切られ、それでも優しさを貫いたら最強になってた〜  作者: 風谷 華


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/38

第14話

 俺は広場を離れた後、しばらく無言で歩き続けた。

 胸の奥がざらついて、呼吸が上手くできない。

 真柴の顔が、声が、脳裏にこびりついて離れなかった。


 あいつが、あの真柴が──この世界でも“聖なる癒しの勇者”だなんて。


 神の加護を受けた救世主?

 人々に称賛され、白い光で癒しを与える存在?


 ふざけるな。

 何もかも持っていくつもりか。


 「……待って」


 フィーネが声をかけてきた。

 気づけば、俺は人気のない裏路地に入り込んでいた。

 乾いた風が、埃を巻き上げる。


「大丈夫……じゃないよね」


 その言葉に、俺は力なく笑った。


「大丈夫なわけ、ないだろ」


 吐き出すように言ってから、背を壁に預け、ゆっくりと腰を下ろした。

 手が震えていた。足の力が抜けて立っていられなかった。


「どうして、あんなやつが……」


 あいつは、俺のすべてを奪った。

 友達も、葵も、俺が築いてきた居場所も。

 何も悪いことなんかしていなかったのに。

 ただ、みんなに笑っていてほしくて、幸せでいてほしかっただけだった。


 なのに、あいつは俺を地獄に突き落とした。

 俺のことを気持ち悪いと笑い、嘘をばらまいて、全部壊した。


 そして今度は──この異世界で、俺が信じてきた“癒し”までも。


 フィーネは、隣にしゃがんで静かに言った。


「でも、あんたの癒しは、ちゃんと人を救ってる。

 グラニードで見てた。あの光は、確かに人の痛みを和らげてた」


「でも……誰も信じてくれなかったら?」


 言葉が震える。

 また、あの地獄が繰り返されるのか。

 周囲の視線が、冷たい刃のように背中を刺す日々が。


「信じるよ、私は」


 フィーネの声が、すとんと心に落ちてきた。


「……それだけじゃ、きっと足りない」


「それでも、私が最初に信じる。だからあんたは、前を見て」


 その言葉に、少しだけ救われた気がした。

 でも、それだけでは足りないともわかっていた。


 その日の夜、宿に戻ると、すでに妙な空気が漂っていた。

 人々の目が、俺たちを見る目が変わっている。

 どこかよそよそしく、怯えるような、距離を取るような気配。


 宿の女将が、そっと視線を逸らしたのを見て、確信した。

 誰かが噂を流したのだ。

 黒い光の異端者が、王都に現れたと。


 影が、また俺を包もうとしていた。

 真柴の言葉と光が、じわじわと俺の立場を侵食していく。


 光の中に立つ真柴と、闇に堕ちる俺。

 同じ癒しでも、これほどまでに違うのか。


 この世界でも、俺はまた一人になるのか?

 フィーネも、いつか去ってしまうのか?

 そんな疑念が、心を濁らせていく。


 光と影──その再会は、静かに、確実に、俺の心を削っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ