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「お父様はカイの正体をご存知だったのですか?」
カイが従僕らしき人に連れて行かれた後、しばらくの間カイを待っていたが、
「本日は本宅へと帰られた為お待ち頂く必要はありません。」
と言われため、私たちも街へと帰って来た。
屋敷に戻るとちょうど父も帰宅しており、そのまま執務室へと流れ込んだ。
父はカイの母も屋敷へ呼び、今は応接室に父と団長夫妻。カイの母とわたしがソファーに腰を掛けている。カイの母もカイが大会に出た事を知らないでおり、少し青ざめていたが意を決したのかポツリポツリと話し始めた。
「私は以前、クーカス伯爵家の奥様付きメイドとして働いておりました。奥様はもともとお身体が弱かったのですが、御嫡男をお産みになられてからは更に寝込む様になられました。」
カイの母はもともと男爵家の次女で、嫁入りの支度金の用意が出来ない事から、伯爵家へ働きに出たらしい。当時奥様以外にご側室様も同じ屋敷に住んでおり、その事も寝込む原因だったようだ。
それでも嫡男を産み、正室としての役目を果たした時側室も懐妊したと耳に入った。側室は男爵令嬢でもし男の子を産んだら我が子が廃嫡される。
そう思った正室は事もあろうかカイの母に伯爵との子を作る様言われたと・・
そして産まれた子は正室の子として育てるから!と言われ、断る事の出来なかったカイの母は泣く泣く伯爵に抱かれカイを身籠ったと。
しかし側室が産んだのは女の子。
我が子を脅やかす存在となってしまったお腹の中のカイを、正室は下ろせと言ってきた・・と・・。
それはそれは、とても辛そうに話してくれた。
そこからは父も知っていた様でカイの母を客室へと下がらせた。
「彼女を見つけたのは妻なんだ。」
シェリーを身籠った妻は産婆の元から帰る途中、橋の端でうずくまるカイの母を見つけた。
自身も身籠っていた事から気になり声を掛けた所、伯爵家から逃げて来たと話した。このままでは母子共に危険と感じた妻は屋敷へと連れて帰り、自身の話し相手として屋敷に置く事にしたんだ。
「そこからは、みんな知っているだろう?」
父の話しを聞いて、皆んなが黙ってしまった。
訳ありだろうと思っていたカイ親子が実は貴族で、しかも伯爵家は高位貴族だ。
(あの時感じた胸騒ぎは、これの事だったんだわ。)
次男とは言え高位貴族となったカイに、今まで通り接する事は出来ない。
わたしとカイの間に高い壁が出来た気がした。
この事をカイは知らなかったのか?
いや、知らない筈がない。カイの母は必要最低限しか表には出て来なかった。それは伯爵家の人に見つからない為だとしたら、カイにも何かしら伝えていたと思う。
それなのに、危険を冒してまで出た理由は?
「・・・・」
わたしの表情に気づいた父が、
「カイが大会に出たのは、私が原因なのかも知れないな。」
とつぶやいた。




