十年後 変わらない気持ち 2
「カイお願い、私も商会へ連れて行って!ここにいても落ち着かないの」
商会へ行こうと準備をしているとシェリーが部屋へと入って来た。
デビットが誘拐されて丸一日、メグの話では一睡もしていないとの事だった。
見れば目には隈が出来ていた・・
「シェリーダメだ。眠れていないんだろう?」
「それはカイも同じでしょ?」
腕を掴む力が強い。
「でもダメだ。君は今一人の身体では無いだろ?キャロルもいる。お願いだから屋敷で待っていて欲しい」
ハラハラと泣き出すシェリーを黙って抱き寄せる。
相手の狙いがハイル子爵家なのか、デル商会なのか・・
とにかく相手を掴まなければ動けない。
「奥様、あちらで少し休みましょう。きっと旦那様とハリソンが坊ちゃんを連れて帰ってくれますから」
「メグ・・」
メグが駆けつけシェリーをソファーへと誘導し腰掛けさせる。俺もシェリーの横に腰掛けると
「必ず連れて帰るから待っていて欲しい。お母さんが元気無いとデビットも心配するぞ」
泣き止まないシェリーを抱きしめるとソファーから立ち上がる。
「メグ!シェリーを頼んだ」
「はい、お任せください」
廊下へ出ると俺を待ち構えるように影が側へ着く。
「副会長、皆がお待ちしております」
「わかった」
俺は愛馬のウォルフに跨ると、急いで商会へと走らせた。
商会の地下にある隠し部屋に裏商会の仲間の代表が集まっていた。
この人たちはお義父さんの元で動いていた人もいれば、俺がスカウトした奴もいる。
ほとんどが曲がった事を嫌い、弱い者を助ける!そんな熱い心の持ち主の集まりだ。だからこそ、シェリーが連れ去られた時も、今回の時も、それ以外での事でも集合をかければ直ぐに集まる。
「では報告を頼みます」
「孤児院から連れ出された事は間違いありません。その際に坊ちゃんとメイドも一緒に連れ去られています」
「連れ去られた二人はウォーエン商会の倉庫へと運ばれています」
「ルッツ伯爵家は今回の事は関わっていませんが、品物以外にも違う物を運んでいると報告がありました」
それぞれが調べ上げた事を報告し合う。
そしてそれを上手にまとめていくのがハリソンさんの仕事だ。
「メイドは敵か?味方か?」
「見張りの話ではメイドは坊ちゃんの面倒をみているとの報告です」
「デビットは元気なんだな?」
「「はい!」」
それを聞いてひとまず安心した。
だが、場所を転々と変えていて商会の者が辿り着いた頃には移動していると・・
「いったい何が目的なんだ?」
俺は頭を抱える。
身代金の要求がある訳でもなく、商売の邪魔をする訳でも無い・・
だがデビットはまだ三歳だ。いくら側にメイドがいると言ってもシェリーには敵わないはずだ。
「とりあえずウォーエン商会へ行く。ハリソンさん、同行お願いします」
「では準備致します」
無事の確認は出来ていてもこの目で見るまでは安心出来ない。どうか泣かないでいてくれ・・
「これはこれはデル商会会長様。今日はどのような・・」
「不思議な事を聞かれるのですね?シスター。私の孫がここで行方不明になったと言うのに」
寄付を期待したのか?新しいシスターは応接室へ入るなりデビットの事は一言も触れず笑顔で入って来た。
「ハイル家の者たちも伺っていると思うが・・」
「!!もっ、もちろんでございます!!こちらでも手を尽くして」「の割には何の報告が無いのは何故?なのですか」
「!!」
顔色を悪くしながら狼狽えている。
新しいシスターが孤児院で何をしているのか・・ここへ来る前に調べて来ていると思わないのか。
「シスター、孫の事は商会の方で追っているから心配はしていない。その内無事な連絡が入るだろうから。それよりも・・我が妻の領地で貴女がやっている事について聞きたいが・・」
シスターはその場から逃げようと席から立ち上がるが、後ろに控えていた護衛に捕まり連れ戻される。
「今まで何人の子供たちを売ったんだ?」
「・・・」
「もう一度聞く。子供たちをどうしたんだ?」
「こ、子供たちは・・ある貴族の屋敷へ・・」
「何処の屋敷だ?」
「そっ、それは・・」
無言でシスターを睨むと泣きながら命乞いをしてきた。
「ルッツ伯爵」
「!!!」
今のシスターの態度で分かった。
「後は頼んだよ」
そう護衛に言い残すと跪いたシスターを見る事もせずその場を離れた。
残された子供たちは食べる物も惜しまれていたのか・・随分と痩せこけていた。
シェリー達の寄付金も使い込んだか・・
子供たちには持ってきたパンや果物を与えるよう伝え、孤児院を後にした。
デビットは間違いなくルッツ伯爵家だろう。直ぐにカイヘ知らせるか・・
俺は鳩笛で鳩を呼ぶとカイヘ手紙を送った。
「ご無沙汰してます、ウォーエン会長」
「デル商会の婿さんが何の用だね?」
ウォーエン商会の会長室へ無理矢理通してもらうと商談中だったのか?見覚えの無い顔が並んでいた。
一見商売人風だが・・
「これは失礼しました。商談中、でしたか?」
「・・そちらこそ急ぎの用事でもあったかな?」
会長が俺の方へ向かって来ている間にテーブルの上の書類が片付けられていく。
チラッと見えたがあれは品物の書類では無かった。
「まぁ立ち話では難だからこちらへ」
俺とハリソンさんをテーブルから離すため、ワザと反対側にあるソファーをすすめてきた。
俺は会長の指示に従い腰掛ける。
「で?婿さんは何の用でここへ「今日はそちらの息子さんはいないんですね、ほらいつも会長の後ろにいる」
言葉を被せる。
「ああ・・今日は別の仕事をさせるために現地へ向かわせたんだ」
しどろもどろになりながら続ける。
現地・・は何処だろう。
それよりも
「最近、息子さんはサルーン国へ店舗を出しましたよね?いえね、俺の義弟にサルーン国での店を任せてましてね。その息子さんの店が悪質だと手紙が届いたんです」
迷惑ですよねー、同じ国の者としては・・
最後までは言わない。
いや、言わなくても分からなければこの世界では生きていけない。
その事は義父から教わった事だ。
「息子の商売は私には分からず・・だが、あちらの国に迷惑を掛けているのなら黙ってはおれませんな!」
「ええ・・どうもその店は表向きは商品を売っているようですが、とても売り物とは言えない粗悪品とか」
会長はご存知ないのですか?と、含みを持たせる。
会長は あちらの国のことは息子に任せてる! の一点張りだ。
時間の無駄だったか?そう思った時ハリソンさんが窓へと近づく。
「窓を開けても?」
会長が頷き扉を開ける。
どうやら義父からの伝言らしく、ハリソンさんは手紙を俺の元へ持ってくる。
「人身・・」
俺の一言で会長の顔色が悪くなった。
「カイさん、ギルバイスさんからの報告に間違い無いかと・・」
俺はハリソンさんに頷くと急いで商会へと戻った。
義父からの報告とギルからの報告。
影たちの報告を踏まえ考えついたのは
「人身販売・・しかも、身寄りのない孤児院へ引き取られた子供たちをシスターとルッツ伯爵が手を組み、ウォーエン商会がサルーン国へと運び競売にかける。
「カイさん、采配を・・。会長からそう言伝をいただいております」
俺は一つ頷くと兄であるクーカス伯爵と、弟ギルヘ手紙を書いた。
「孤児院は会長が手を打ってくれた。ルッツ伯爵はクーカス伯爵に頼みサルーン国はギルに頼んだ」
「では?」
「ああ、今回の件で決まった。ウォーエン商会がデル商会に入れば良し。もし歯向かえば・・」
「・・」
「徹底的に潰します」
まずはデビットを救出し、周りを潰した後は・・
「久しぶりですね、メグも坊ちゃん救出に参加すると言っております」
「それは心強いな!では始めるか、俺の家族に手を出したこと必ず後悔させてやる!!」
二話で終わらせるつもりが、例のごとく自由に動きまくってくれたお陰で続きます!




