船の中での出来事 前編
サルーン国からオブランス国へ帰る船でのお話です。
オブランス国へも残り二日となったある日。
船の甲板からも国の形が分かるほどの距離になった頃、父が急にカイを呼び出した。
私もカイも残り少ない二人時間を満喫していた時だった。
「すまないね、シェリー。今後の事をカイと相談したいから少し借りるよ。」
振り返ると申し訳なさそうにしている父と、その後ろにハリソンが立っていた。
仕事の話なら仕方がないと頭を縦に振る。
「私はメグの所にでも行っているわ。終わったら迎えに来てね!」
「ああ、分かった。」
カイはそう言うとオデコにそっとキスをした。
オブランス国へ着いたら私はハイル子爵として社交を。
カイはデル商会の副社長として、サルーン国との貿易を開始する準備を始めるのだろう。
おそらく父はサルーン国との貿易が成功したら、カイに商会を譲るつもりでいるのだろう。
その為にカイとハリソンを育て始めている。
ハリソンは、
「自分はあくまでも補佐として、カイ様にお仕えしたいと思います。そうでないとメグに叱られてしまいますから。」
ハッキリと言い切った!
「ハリソンもメグも、もっと前に出ても良いのに・・」
そう独り言を呟きながら、メグの部屋へと足を向けた。
「シェリーどうしたの?浮かない顔して。」
もう少しでメグの部屋の前に到着!の所で声を掛けられる。
顔を上げるとメグとメイが扉の前で立っていた。
「メグこそ部屋から出て、どこに行こうとしてるの?」
「お母さんと甲板へ行こうと思って。今日は天気も良いし、波も静かだから。」
「安定期に入ったので散歩です。ずっと部屋に居るのも体に良くないので、運動ですよ。
奥様がシェリー様を孕られた時も一緒に散歩したんですよ。」
メグの母メイは、お母様の侍女だった。
今まで甲板にいた事は伏せて、私も一緒について行くことにした。
「それでハリソン。カイはどこまで影を捌けるようになった?」
「そうですね、旦那様付きの影以外は捌けるようになりましたよ。まぁ彼を捌くことは・・難しいでしょう。」
そう言ってハリソンさんは後ろを見る。
お義父さん付きの影はハリソンさんと同じくらいの腕があるらしく、なかなか認めて貰えない。
影を捌かなければお義父さんにも認めて貰えない為、シェリーには秘密で鍛え続けている。
お義父さんはオブランス国では表も裏も掌握している。
表の世界は分かる。
商会の主人として、オブランス国の品物全てを手にしているから。
では裏の世界は?
「・・・」
「今日こそは聞かせてください。裏の世界に手を出した理由を!」
この件はハリソンさんも知らなかったようで、興味津々だ!
ハリソンさんでも知らない事実を、今日こそは聞かせて貰う!
俺とハリソンさんの圧に、お義父さんも折れた。
と、思ったのに・・
「あれ?シェリー。また戻って来たのかい?」
振り返るとメグと一緒に歩いているシェリーがいた。
「メグ!ここは寒い、部屋へ戻ろう。」
ハリソンがメグの側へと駆け寄るが、メイに叱られてしまう。
「ハリソンさん!メグを甘やかさないで!」
メイに叱られるも懲りていない様子だ。
「いや、、でも、、身体が冷えてしまう、、」
とメイを説得しようと奮闘しているハリソンさんを、シェリーとメグは笑って見ている。
俺はお義父さんをチラッと見たが、これは話す気がないな!と諦めシェリーの側へ駆け寄った。
夕食が終わりみんなでお茶を飲んでいると船長が現れた。
このまま進めば明日の夕方にはオブランス国へ到着すると言われ、一番喜んだのはメイだった。
「やっとメグとハリソンを引き離す事が出来ますわ!」
「そんなお義母さん!僕はメグとお腹の子が・・」
「二人ともそこまで弱くはありません!」
と一喝され、小さくなるハリソン。
こんな毎日が続くと良いな・・
そう微笑んでいるとお父様に船長が耳打ちすると、
頷き席を外した。
カイとギルを伴って・・
もう一話は明日投稿します。




