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カイが入場した際、チラッと目が合った気がしたが、直ぐに目線を前に向けた。
相手はカイよりも一回り身体が大きく腕回りも厚く、カイと並ぶとまるで大人と子供のように見える。
わたしは両手を目の前に組み、ただ祈る事しか出来なかった。
闘いは準決勝に相応しく難航した。ガキン!ガキン!と剣がぶつかり合う音。相手の力に薙ぎ払われ地に叩き付けられる音。
わたしはいつの間にか目を瞑って、祈っていた。
(カイ!カイ!怪我しないで!頑張って!出来たら勝って!でも怪我はしないで!お願い!)
自然と身体が震えてくる。手も瞼も力が入る。
そんな時フッと手が包まれる感じがして、ゆっくり目を開けるとアンリさんがわたしの両手を包んでくれていた。
大丈夫よ!
そう目が語っている様な気がして、わたしがカイを見つめた時
ガッッッキィィィィンッ!!!
と、どちらかの剣が飛び地面に突き刺さった。
一瞬静寂に包まれたのち・・
うぉぉぉぉぉぉ!!!
「良いぞーちっこいの!」
「すごい闘いだったぞー!」
「二人とも!すごいカッコ良かったよー!」
割れんばかりの大歓声が響いた。
勝ったのはカイ。
二人とも身体中に傷が出来ていたが、深い傷は無さそうだと団長が安心した様につぶやく。
カイが先に立ち上がり相手の側まで行き手を差し伸べる。その手を相手が握り立ち上がると更に大歓声が湧く。
「シェリーちゃん、大丈夫?」
ハンカチを渡してくれた時、わたしは自分が泣いている事にも気付かなかった。
顔をハンカチで拭いてカイを見ると、カイはわたしが腕に巻いたハンカチを手に取りわたしを見ていた。
そして、そっとハンカチに唇を押し当てている。
「!?!!」
「ねーねー、カイくんが手に持ってるハンカチ、もしかしたら・・・聞かなくても分かったわ。」
アンリさんに言われなくても、顔中が熱くなっている事に気付いていた・・
閉会式でカイは第四騎士隊への入隊を断った。
本人の希望を優先される為、相手の騎士が入隊する事となり今回の大会は幕を閉じた。
わたしと団長、アンリさんはカイのいる部屋へと足を向けた。団長は断った事への怒り。わたしはとにかく無事を確かめたくて。
部屋へ入ると治療が終わった所だったのか、カイは上着を着ようとしていた。
「カイ、大丈夫なの?それと、おめでとう?」
「なんで疑問系?」
わたしがカイの側へ駆け寄ると、笑いながら答えてくれた。
「カイ!なぜ騎士隊入りを断ったんだ!こんなチャンス滅多にない事なのに!」
今にも胸ぐらを掴みかかろうとしている所をアンリさんが止めている。
団長もさすがにアンリさんを振り払う事はせず、一呼吸してから話しかけてきた。
「すみません団長。でも、自分はこの大会に出る事が希望であって騎士隊入りを望んでいた訳では無かったので・・」
そう言って頭を下げたカイ。
わたしはカイの隣りに立ち団長の顔を見ていた。団長もカイの意見は聞いていたのを思い出したのか、
「すまない、そうだったな。我が騎士団から騎士隊入りするかも知れないと思ったら、我を失ってしまった。」
と頭を下げた。
そんな私たちに一人の従僕らしき人物が近づいて来て
「歓談中失礼致します。カイディアン・クーカス様。
本日は優勝おめでとう御座います。お父上様であるクーカス伯爵様がお呼びです。私に着いて来て頂きます。」
「・・・・・。」
と、拒否権無しの言葉をカイに告げた。
カイは立ち上がると、わたしと団長に軽く頭を下げ
「先に帰ってて欲しい。大丈夫、すぐ帰るから。」
そう言い残し、男性と共に扉の向こうへと歩いて行った。
わたしはただ黙って見送る事しか出来ないでいた。




