サルーン国 31 カイ
今回二話投稿です。
こちらからの方は一話お戻りください。
パーティーもまだ続いていたが、わたし達は一足先に下がらせて頂いた。だからと言って屋敷へと帰った訳ではなく、その後の話がしたい!とアンソニー殿下が言い出した。
場所は王太子宮の応接の間。
アンソニー殿下、ジェネヴェクト殿下、カイ、ギル、何故かお義父さん。
「で、カイはこれからどうするの?」
侍女が淹れたお茶を一口飲むと、アンソニー殿下が切り出した。
「どう、とは?」
「こちらでも爵位持ちになったから、永住して俺の護衛しない?」
「まてアンソニー、だったら祖国で俺の護衛になってもらう!」
「ジェネヴェクト兄様にはギルが居るじゃないですか!」
何故だか二人が俺を取り合っている?だが、それよりも痛い視線を送ってくる人がいる事を早く気付いてくれ!
その熱い視線を送る人は、さっきからワインを飲むピッチが早い気がする・・そしてやっと口を開くと、
「カイはシェリーの夫で、ハイル家、デル商会を守ってもらわねばならない!」
お義父さんのドスの効いた声で、二人の殿下が静かになる。
あの声で黙らせる圧はどうすれば身に付くのだろう・・
これ以上俺を勧誘出来ないと諦めたアンソニー殿下は、じゃあ!と話がギルへ向く。
「そうですね、まだこの先の事を話あった訳ではありませんが、今度二人で彼女のご両親へ挨拶に・・」
二人の殿下が目の色を変えたのがわかった。
そこからはまぁ質問攻めがすごく、ギルも答えるのがメンドーになったのか適当になっている。
斜め後ろを見るとお義父さんはコクリコクリト船を漕いでいた。お義父さんを部屋に送ると言って何とか二人から解放された俺とギルは、一旦お義父さんを部屋へと送るとまだ続いている会場で酒を飲む事にした。
「実はもう挨拶に行ったんだ。彼女のご両親の所へはこの前。とても喜んでくれて、キャシーには家の事は考えず自由にして欲しいと言われたんだ。親代わりの兄様にも手紙を出したから、今頃兄様へ届いていると思う。」
「ギルは本気なんだな。」
ワイングラスを傾けながら言葉を選んでいる。
「・・本来ならどう頑張っても手の届かない人が、俺の手の中に入る。そんな奇跡は二度と無いと思うし。だったら全身全霊を掛けて手に入れたいと思った。・・俺正直に言うと、結婚なんてどうでも良いと思ってたんだ。母の爵位を受け継ぐ以上は血を残さなきゃ・・とは考えてたけど、そこに愛とかの感情は必要無いと・・」
酒に酔ったのか、それとも緊張が解けたからなのか。今夜のギルは良く喋る。
どちらかと言えば寡黙な男が、何を考えていたのか知るチャンスだと思った。
「何で結婚する気になった?しかも身分差もあれば異国の人を。」
ギルは暫く考えるように黙った。
俺は給仕からもう一杯ワインを受け取るとギルにも渡す。
「・・兄様二人を見てたら、結婚も良いものかも!と思えたんだ。」
「えっ?」
「この人の笑顔を独り占め出来る。この人の特別になりたい。そう思えた人がキャシーだったんだ。」
俺たちを見てそう思ってもらえた事が嬉しくて、ついつい酒がすすむ。
「兄様も兄さんも、本来なら手の届かない人と一緒になれたし、それ以上に見ててゲロが出るほど奥さんに甘い!」
「なっ!」
そんな目で見られてたと思うと恥ずかしい。
(俺はともかく兄様も?)
「カイ兄は知らないかもだけど、兄様の姉様に対する態度は・・すごいぞ!あれは調教された獣だ!」
ギルはそう言うと大笑いし、そのまま眠り込んでしまった。
(ヤバイ、俺のことは置いといて兄様の話がもっと聞きたい。)
明日の朝起きたら詳しく聞き出そう!
そう思いながら眠り込んだギルを担ぎ、部屋へと戻る。
翌朝、目を覚ましたギルに続きを聞こうと思って声をかけたが、
「はっ?俺そんな事言ったか?知らん知らん!!」
と、はぐらかされてしまった。
しつこく聞いても結局それ以上は聞き出せなかった・・
次回で最終話となります。
喜んでいただけると嬉しいです。




