サルーン国 28
(あれ?ここはどこかしら・・)
気付けば目の前には光輝く湖がある。
とても静かで穏やかな、そして
「心地良い。なんかまだ寝足りない気がする・・」
「おかあたま、まだネンネする?」
声の方を向けばまだ二歳ほどの女の子がわたしの身体に擦り寄っている。
(あれ、この子どこの子かしら?でもちょっとカイに似てないかしら?)
そう思いながら女の子の頬に手を触れる。
女の子は嬉しそうに笑うと立ち上がり、どこかへ走り出す。
「走ると危ないわよ!◯◯◯ちゃん!」
あれ?わたし何であの子の名前を知ってるの?
ああ、夢ね!わたし夢を見ているのね!
「◯◯◯、お母さまのお腹の中に赤ちゃんがいるんだよ。◯◯◯はお姉ちゃんになるんだぞ!」
さっきの女の子を腕に抱えた一人の男性がこちらに向かって歩いてくる。
わたしはその男性に向かって
「◯◯。」
「!!」
「シェリー・・・」
目を開けると目の前にカイの心配を通り越した顔があった。ああ、夢の中の男性はこんな顔だったかしら・・なんて呆けていると
「シェリー・・良かった・・」
と、力強く抱きしめられた。
(あ・・カイの匂いだわ。わたしの大好きな・・)
「カイ・・カイ。会いたかった・・わたし、もうカイに会えないと・・」
「助けに行くのが遅くなって、本当にごめん・・良かった、目覚めてくれて本当に良かった・・」
カイは何度も何度も優しいキスをする。
体温を確かめるように、顔じゅうにキスをする。
「フフッ、くすぐったいわカイ。」
「うん、こんなんじゃ足りない。確かめさせてシェリー。君が本当に目覚めたんだと・・」
良く見たらカイも泣いている。わたしはカイの目元に軽く指で触れキスをする。
カイの顔が更にゆがみ、大粒の涙が出る。
「カイに会えて、嬉しい」
水を取り換えに戻ったフランがわたしに気付くと、これまた大粒の涙を流しながら、
「皆様にお知らせして来ます!!」
と言って部屋から出て行くと直ぐ、大勢の人たちが部屋へ雪崩れ込んで来た。
わたしはカイに救出されてから三日間も高熱で目を覚まさなかったらしい。
身体中に痣があったからそれが原因だと思われる。わたしが高熱でうなされている間、カイも寝ずの看病をしてくれたとメグが教えてくれた。
「さすがに丸二日目は無理やり寝かせたけどね。シェリーの横にソファーを持ち込んで、ここで寝なさい!って。シェリーの側から離れたく無いって駄々こねるから・・」
想像しただけで笑いが出る。
今は目覚めてから七日経ち、顔の腫れも身体中の痣も目立たなくなっている。
これなら三日後の祝賀パーティーに出席出来そう。
わたしとカイの衣装も、オブランス国から届いたと連絡がありメグがしっかり確認したと言っていた。
「気分はどうだい?シェリー」
「お父様!!」
わたしの事を聞かされたお父様は急いで船で駆け付けてくれたと聞いた時、泣いて詫びた。
心配をかけない!と約束したのにこんな事に巻き込まれてしまい、すごく心配をかけたと思う。
「でも、お父様に会えて嬉しいです。」
そう言って抱きつくとお父様も抱きしめ返してくれた。
「連絡が来た時は君も失うのかと血の気が引いたよ。お願いだから無茶はしないと約束をして欲しい。」
「わたしも懲り懲りよ?」
わたしが目覚めたと聞いた王太子殿下と妃殿下は、内密にローリング侯爵邸へと見舞いに来てくれた。両陛下からの手紙とともに・・
「えっ!!!わたしとカイ、ギルにこの国の爵位を!?」
そう、陛下からの手紙にはわたしとカイに伯爵位を。ギルには公爵位を授けるとあった。
「いやいやいや、俺に公爵って絶対無理でしょ!!だったらキャシーに贈って欲しい。何ならキャシーの両親でも良い。」
ギルは受け取り拒否をして、キャシーと結婚したらキャシーに贈ることになった。
両陛下、王太子両殿下の耳にもキャシーが王弟殿下の子だと知られたからだ。
「だったらわたしもカイに伯爵位を受け取って貰いたいわ。そうすれば、こちらでも商売しやすいもの!」
の一言で決定した。
祝賀パーティーで二人の爵位授与式が行われる事となった。




