サルーン国 26
「クッ!」
「さあキャシー、そろそろ良い返事を頂けませんか?このままだと、こちらのお嬢さまの身体に消えない傷が付くことになりますよ?」
あの後一度下がったはずのベンと騎士達が部屋へと雪崩れ込んできて、わたしを拘束した。
抵抗したら頬を叩かれ髪も引っ張られ床へと倒された。
わたしのところに来ようとしたキャシーは、わたしを人質に取られ身動きが取れなくなっている。
「ダメよキャシー!ギルと結婚するんでしょ!」
わたしの言葉に反応した公爵がわたしの顔を床に押し付ける。先程とは別人の様な態度に恐怖が押し寄せた。
「ギルと言えばクーカス家の三男でしたか?しかも爵位無し!」
アッハッハッハ!!!
「貴方の様な尊い血筋の方が、たかだか伯爵家の三男の、庶子で爵位なしの男に嫁ぐとは!気でも触れましたか!!」
きっとベンが耳に入れたのだろう。
身体を騎士に拘束され頭を床に押し付けられているわたしは、身動きも取れずもがくしか無い。
「そんな事を言ってもキャシーの心は変わらない。キャシーはわたしの義妹になるんだから!!」
それでも腹の底から叫べば、もう片方の頬を叩かれる。
「シェリー様!止めてください!シェリー様に手を上げないで!!おねがい・・」
泣きじゃくるキャシー
(ごめんね、貴方を守るつもりが逆に足を引っ張ってしまって・・)
気付くと目の前に鋭く光る剣がみえる。
酷い、女性にこんな脅迫して、悔しい・・
(カイ、あなたに会いたい。優しく抱きしめられたい。
カイ、カイ、カイ・・)
溢れ出す涙を止める事が出来ない。
「キャシー様、さぁ返事をするんだ!私の妻になると!」
「やめてー!!」
「カーイ!!たすけてーーー!!!!」
剣が振り落とされる瞬間、腹の底から悲鳴に近い声を張り上げた。
カイの顔を思い浮かべながら・・諦めかけた瞬間、
「よくも俺の大事な奥さんに、ここまで酷い事をしてくれたなぁぁぁ!!」
目だけを声のする方へ向けると、カイがわたしを守るように屈んでいた。
わたしを拘束していた騎士の姿は無く、
キャシーの側にいた騎士はギルに倒され、キャシーを守るように立っていた。
「カイ・・助けに、来てくれた、のね・・」
カイはわたしの姿を見て顔を辛そうに歪めた。
「ああ、シェリーが頑張ってくれたおかげだ・・もう、心配しなくても大丈夫だから。」
わたしはその言葉を聞いて、意識を失った・・
「カイ、私の大切なお姫様は?」
声を聞いただけでその主がわかる。
普段見せる顔とは別の、もう一つの顔を持つ男。
「今、意識を失いましたが、、ここまで本当に頑張ってくれました。お義父さん。」
俺はその人の最愛を腕に抱き上げると、義父の元へ。ギルもキャシーを連れて来る。
「ジャック・・デル。なぜ・・あなたが?」
義父は両頬を腫らしたシェリーの顔を泣きそうな顔で見ている。そして・・
「なぜ?おかしな事を君は言うのだね。親が娘の危機に来ないで誰が来るんだ?」
言葉は静だが口調はとても怖い。いや、恐ろしい程の圧でフォルスター公爵は震えている。
そんな空気も読めないベンが義父に向かって剣を振り下ろす。
ギンッ!!
と剣と剣がぶつかり合う。
ギルが俺たちの前に立ち塞がり、ベンの剣を受け止めていた。
「やはりお前だったか!キャシーを攫ったのは!」
「ハハッ、身の程知らずの騎士さんよー。俺と彼女を掛けて勝負しない?」
ギルはベンを後ろに押しやると義父と俺を見た。
「大切な人を奪うとどうなるか、君の手で教えてあげなさい。責任は私が持とう。」
義父の言葉を聞き、二人は外へと飛び出した。
実は裏の世界も牛耳る闇の帝王ジャック・デル。
最愛の妻と娘には決して見せた事が無い顔です。




