サルーン国 25.5 ハリソン→カイとギル
「ハリソンさんはメグの側に付いていてください。メグの事だから目覚めてシェリー居ないと、絶対探すために動き出すから。」
カイさんに言われ俺はメグの側で待機する事になった。本当は一緒にお嬢さま救出に向かいたかった!でもそれ以上にメグとお腹の子が心配だった。
(俺に家族ができる・・)
子供の頃に会長に救われる以前の記憶は・・思い出したくも無く消した。
それ程に、その後の生活が楽しく充実し、幸せだったから。でも、正直なところ結婚も考えてはなかった。できるとも思わなかった。
「んんっ、シェリー・・」
寝言で言うほどに幼馴染を心配している妻。
幼馴染で主人であるお嬢さまを守るため、護身術を習いたいと言い出した妻。小さな頃から二人を守るため、手本となるために努力している姿をずっと見てきた。
(私は二人のお姉ちゃんだから!)
が口癖だったな。
思い出したら笑えてきた。そんな時
コッツコッツコッツ、と窓を叩く音がした。
窓を覗くと一羽の鳥が羽ばたいている。窓を開けると中に入り込み、テーブルの上に降り立つ。
「ご苦労さま。」
と、労いつつ足に付いている筒を取り外す。鳥は所定の位置に移動して水やエサを突いている。
鳥と妻の様子を伺いながら筒の中から一枚の紙を取り出して読む。
その内容に感謝して、再び妻の元へと足を向けた。
(後のことは任せなさい。)
「カイ兄に話したいことがある。」
義弟であるギルからそう言われたのは、シェリー達が連れ去られる前日の事だった。
「酒が必要か?」
「あ〜、後半で!」
夜久しぶりにギルの部屋へ行くと、何故かそこにキャシーさんもいた。二人の立ち位置が近いことから何となく察された。
「彼女にプロポーズして、受けてもらえた。今度休みの日に二人で彼女のご両親に挨拶へ行こうと思っているんだ。」
顔を赤らめて報告してきたギルは、身体が大きな男なのに何故か小さく見えた。
「シェリーには話さないのか?」
「あっ、シェリー様には私から伝えようと・・」
ギル以上に顔を赤らめる彼女に、今までの彼女とのギャップに驚かされた。
母は違えど可愛い弟に変わりはない!
どうか幸せになって欲しい。と本気で思った。
のに・・
「ギル待て!気持ちはわかる!でも今乗り込んでも、逆に二人を傷つける恐れもあるんだ!今は落ち着くんだ!頼む!」
シェリーとキャシーさんが攫われたと聞いた時、新手の嫌がらせだと思った。しかし、二人を守って倒されたメグを見たら一気に怒りが溢れてきた。
しかも一歩間違えたらお腹の子まで・・
それはギルも同じでフォルスター公爵家に乗り込もうとしていたのだ。
取り敢えず落ち着かせ、二人でハリソンさんの元へと向かう。フォルスター公爵の情報を貰うためだったのだが、話を聞けば聞くほど怪しい人物に感じてしまい今度は俺が止められる立場になってしまった。
二人は部屋の中は自由に動けているようで少し安心出来たが、いつ危害を加えるかと思ったら不安で仕方なくなってしまう。
(騎士の時でもこんな風に感じたことは無いのに。)
子供の頃からシェリーだけを見てきた。
この先もずっとシェリーしか見ないだろう。
手が届かないと、一度は諦めた人。
諦めきれなかった人。
それがシェリーだ。
コッツコッツ、と窓から音がして扉を開けると一羽の鳥が中へと入って来た。
足にくくられた紙を取り読む。
準備は整った!
だから・・待ってろよシェリー!
「さぁギル、そろそろお姫様を連れ戻しに行くか!」
今回は二話投稿しました。
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