サルーン国 25
「失礼した。」
そう言うとまた侍女を呼び、新しいお茶を淹れなおす。
「私が言いたいのは、建国当時の国王夫妻の血を受け継ぐ女性がキャシー様だけになったのです。」
隣りでキャシーが真っ青な顔で震えている。
わたしはそっとキャシーの手を包むと、更に話を続けるよう伝える。
「そこで私は本来の血筋に戻そうと思ったまで。私の祖父もまた王弟。祖母も母も建国の血を持っている。キャシー様には我が妻となってこの国を正しい道へ戻す手伝いをして頂きたいのです。」
「わた、私の父はドードルの父だけです。確かに私の中に王弟殿下の血が入っているのかも知れませんが、公爵様と結婚する気はありません!」
真っ青な顔で叫ぶキャシーさんをわたしは思いっきり抱きしめる。
「まぁ直ぐに良い返事が頂けるとは思っていません。ですが良い返事が頂けるまでは、この城から出る事も許可出来ないと思ってくださいね。」
遠回しにわたしも帰すことはしない!と言っていた。ベンを先導に元の客室へと戻る。キャシーの顔色は悪いままだ。
ベンは扉の前に移動すると出て行く気配はない。
そう言えば朝も何か言いたそうだったな?と思ったわたしは、ベンに聞くことにした。
キャシーさんは三人用のソファーへと寝かせたまま、ベンの話を聞いてもらう。
「まずは、無理やり連れてきてしまい申し訳ありませんでした。」
謝ると同時に深く頭を下げる。何か理由があるのだろう・・
「フォルスター公爵家と我がフロックス子爵家は遠い縁戚にあたります。・・その二年前、我が領内に災害があり立て直せないほどの被害が・・。その時に手を差し伸べてくれたのがフォルスター公爵でした。」
ベンはわたし達を攫った時とは別人の様な態度だった。きっと人格を殺さなければ出来なかったのだろう。だからと言って許せる事では無いが!
「もしかして・・領地にいるご家族を人質に取られているのですか?」
「・・領地にいる家族もですが・・領地民も・・」
ベンは頭を下げ謝りっぱなしだ。
そんな彼の姿に思わず同情してしまいそうになった時、
「確かに二年前、フロックス領地は災害が起きました。それは陛下の耳にも入っております。ですがその際、国から見舞金が送られている筈ですが?」
キャシーさんが身体を起こしながら問いかける。
ベンの肩がピクっと揺れた。
「国からの支援だけでは立て直せなくて・・」
「その後、二度にわたって支援金が送られている筈です。フォルスター公爵家の援助の前に!王太子殿下の部下の者が視察に訪れていますよね?その時の子爵の報告では立て直し出来たと。それに貴方・・本当にベン・フロックスなの?」
どういう事なのかわからず、二人の顔を交互に見る。キャシーさんはベンの顔を睨むように見ている。ベンはそんなキャシーさんに対し楽しげに笑い出す。
「あーあ、アンタやっぱ普通の侍女じゃ無いねー。普通ならそこのお嬢さまみたいに騙されるんだけど。伊達に王太子妃付き専属侍女やってないね!それとも、これこそが王家の血?」
楽しそうに笑い続けるベンは、とても異様な雰囲気だった。
「ねぇ、公爵じゃなくて俺と結婚しない?公爵様と結婚すれば生活には困らないと思うけど楽しく無いよ!俺だったらずっと楽しませてあげる!それに、アンタが頷かないとこっちの彼女、旦那の元に帰れないよ?」
ニヤニヤと笑いながら言っている。とても本気のプロポーズでは無い。聞いていると段々と腹が立ってくる。
「せっかくの申し出ですが、お断り致しますわ。貴方様は私の好みではありませんので。」
「えー、そんな事言っていいのー?後悔するよー。」
「しません。」
ソファーに姿勢を正した姿ではっきりと断っている。公爵様の時は震えていたのに。
「アンタみたいな女、今を逃すと一生結婚なんて望めないと思うけど〜。」
「!!!!」
( 完全にわたしは蚊帳の外だ!)
そう思いながら二人の会話を聞いていると、
最後にキャシーの口から放たれた言葉に、わたしとベンは意表を突かれて一瞬だが言葉を忘れた。
「心配されなくてもわたくし、ギルバイト・クーカス様からプロポーズされており、先日お受けしたばかりですので。」
ギル、いつの間に・・




