サルーン国 21 ギル
俺はオブランス国王太子 ジェネヴェクト殿下の命で、シェリー・ハイル子爵の護衛に任命されると次兄と共に隣国サルーン国へと来ている。
ジェネヴェクト殿下の妹姫マリエンヌ殿下から連絡が途絶えたことを不安に思った両陛下から、そしてマリエンヌ殿下から直接次兄にSOSが来た事で結婚一周年祝賀パーティーの前にサルーン国へと乗り込んだ。
始めは姉さんの父であるデル商会長が宿を用意してくれる予定だったが、長兄の妻エルディアナ・クーカス伯爵夫人が自身の伯母がサルーン国へと嫁いでいるため、口を聞いてくれて今はローリング侯爵家でお世話になっている。
姉さんが王宮へ行く際は必ず護衛として付き従う。
そして必ず出迎えてくれるのは、マリエンヌ妃殿下の侍女キャシーだ。
「お待ちしておりました、ハイル子爵。妃殿下がお待ちでございます。こちらへ」
と言って案内する。
その仕草がとても美しく、下手をするとお義姉さんや姉さんよりも綺麗だと思った。
(王宮に勤める侍女はみんな所作が綺麗なのか?いやオブランス国の侍女もここ迄ではないぞ!)
そう思いながらも気付けばキャシーを目で追っていた。
初めて会話をしたのは俺が姉さんの護衛で王宮を訪れ、すぐにカイ兄さんが来たために少し下がった時だ。
「失礼ですがクーカス卿。私の気のせいであれば良いのですが、何かおっしゃりたい事でもお有りですか?」
一瞬何を言われたかわからなかった。が、どうやら俺が見ている事に気付いたらし。
その時は素直に 所作が綺麗で見惚れていた。 と伝えたら顔を赤くしながらお礼を言われた。
それからは目が合えばお辞儀をするようになり、挨拶をし、一言二言と会話も増えていった。
更に親しくなったのは、侯爵夫人の計らいで休みが出来た時。
俺は一人街を歩いていたら、目の前に見知った女性が買い物をしていた。声を掛けるとキャシーだった。
キャシーも休みで、妃殿下も好きだと言うお茶を買いに来たのだと言った。
「もう城へ帰るのか?もし時間があるのなら案内しては貰えないだろうか?」
無意識に口から言葉が出ていた。
彼女は驚いた様子だったが、 私で良ければぜひ。 と、街を案内してくれた。
彼女が連れて行ってくれた場所は(何故か)女性に人気の店だった。今思えば彼女に何か一つプレゼントすれば良かったと、後になって思った。
(きっとカイ兄ならスマートにプレゼントするんだろうなぁ。)
そんな風に思いながら彼女が案内してくれる所を、女性らしい仕草の彼女に胸を躍らせながら付いて歩く。
もちろんその日の食事代やお茶代は全部こちら持ちだ。二人で人気だと言われるケーキ屋で注文を取ったあと彼女が急に笑い出した。
「どうした?」
と聞けば
「見かけに寄らず甘党ですのね?その、ギャップ萌え?てヤツです笑」
「何だ?それは・・」
「フフッ、お可愛いらしいと言うことですわ。」
こちらが恥ずかしくなる事を平気で言って来た。
途中でデル商会のハリソンさんとメグさんに会い、キャシーを王宮に送るため先に帰ると伝えた。
キャシーは断って来たが
「今日一日付き合ってくれたお礼だから。」
と言えば受け入れてくれた。
途中、何度か誰かに見られているような視線を感じだが、彼女が気がついてない様子だったのでそのまま送った。
「今日は貴重な休みを俺に付き合ってくれてありがとう。とても楽しかった!と、俺は思った・・」
言っててなぜか恥ずかしくなった。
そんな彼女もつられて顔を赤くして、
「こちらこそお声を掛けて頂きとても嬉しく、楽しい一日でしたわ。これをデートと言うのでしょうか?良い思い出となりました。」
ありがとうございました。そう言って奥へと進んで行った。
彼女の後ろ姿を見て何やら不思議な感情が芽生えた事に気が付いた。
カイ兄さんにそれとなく聞いたら、
「それは間違いなく 恋 だな。」
ハリソンさんと二人で冷やかして来た。
そこからはもう意識しまくりだった。妃殿下と笑い合う顔も、俺と目が合っただけで頬を赤らめる顔も、彼女の顔を思い出すだけで胸が締め付けられるようだった。
妃殿下と姉さんが不審者に狙われた時、俺は無意識に身体が動いたが、正直姉さんよりも彼女が心配だった事に気付いた。
「そうか・・」
彼女のことを、顔を、笑顔を思い出すと痛むこの胸苦しさ。
もう認めよう。
俺はキャシーの事が好きなんだと。
ギルくんの初恋です。
実はキャシーに一目惚れしてたんですねー。




