サルーン国 18
(お互いの家紋・・)
「シェリーどうした?ってお互いの家紋かぁ、考えたなぁ。」
カイは感心した様子で見本を手に取って見ている。
「そう言えばギルの短剣にも家紋が彫られてたわよね?クーカス家の家紋かしら?」
「ああ、正騎士になると隊から送られるんだ。クーカス家は兜。ハイルは・・」
「湖ね!領地があった頃はとても美しい湖があって、恩恵も沢山あったと聞いているわ!お祖父様が騙されて領地を返納してしまったけど・・」
わたしが産まれた頃には領地は無くなっていたから、実際に湖に行ったことは無いがお父様とお母様は新婚旅行で行ったらしい。その時の湖の輝き、静かさ、爽やかに吹く風。全てがこの世のものとは思えない別世界だったと言っていた。
「国に戻ったらメグ達も誘って行こうか。」
わたしの気持ちを汲み取ってくれたのね。
涙が溢れそうになるのを堪えカイの手を取り、自分の頬に当てる。カイは黙ってわたしを抱き寄せ背中をさすってくれた。
「いらっしゃい。こちらが気になりますか?」
「ええ。見たことも聞いたことも無い、でも素敵な贈り物ね。」
「ああ、あんたらはこの国の人かい?」
「いや、オブランス国の者だ。」
「そうだろうと思ったよ。この国の者はこれを作ろうとしないからな。」
わたしとカイは顔を見合わせてから聞いてみた。
こんな素敵な贈り物をしないなんて・・婚約の贈り物にしても良いのに。
店主は話が少し長くなるからお茶でも出そう。と、わたし達を窓際にあるテーブルへと誘ってくれた。
「これは今は亡き王弟殿下が、さるお嬢様にプレゼントした物をヒントにした物でね。」
店主は先ほどカイが見ていた見本を持ってきた。
「王弟殿下が戦に出る前に依頼されたんだ。自分の家紋と相手の家紋を一緒に彫って欲しいと。これをお守りに持っていて貰いたい。そう言っていたと聞いた。
ちなみに請け負ったのは俺の親父だ。
出来上がった物を見て、それは嬉しそうな顔をしていたと言っていた・・だから質を落として恋のおまじないとして売り出したら大ヒット!自分も手伝ったけどそれは忙しい日々だったよ!」
お茶のお代わりを入れながら、昔を思い出し話てくれる。そんな時、フッと顔が曇り・・
「王弟殿下が戦で亡くなったと、号外が出たんだ。
そこからはまぁ、縁起の良い物では無くなり奥に追いやられてしまった代物だよ!」
悔しそうな、寂しそうな顔で言い切った。
こんな素敵な物なのに・・
王弟殿下が残した物だからこそ、引き継いでいって欲しい。見本を手に取り考えていると、
「俺が依頼しても良いか?俺はこの国の者じゃないから良いだろう?兜と湖で、図案が出来たらこちらに連絡を。その時にもう一組、二組の物もお願いすると思う。頼めるか?」
カイはそう言うと腰から短剣を出して、家紋を店主へと見せた。
思いがけない注文に店主は驚きと共に喜んだ。さっそく家紋を紙に写しハイル家はわたしが書き写した。
図案が出来たらお屋敷まで伺います!そう言われ屋敷を教えると、
「ろっ、ローリング侯爵様のお屋敷ですか!!」
驚きすぎて倒れそうなっていたが、わたし達はお世話になっているだけだから。と説明し屋敷まで届けてもらう事にした。
「図案楽しみね!他の二組は?」
「もちろん兄上と姉上。それとお義父さまとお義母さまの」
顔を赤くしながらも、わたしの両親の事も想ってくれたカイに心からの感謝を!人気の無いのを確認し、軽く頬にキスをした。
カイは驚いたがすぐにわたしの腰を引き寄せ、温かい唇をわたしの唇に重ねた。
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