サルーン国 14
キャシーさんの話では王弟殿下には恋人がおり、その人との結婚を認めてもらう為に戦争へ行く事を決めた。
陛下に相談もなく勝手に婚約解消をした挙句、身分違いの女性との結婚を認めることが出来ず、陛下は選択肢を与えた。それが戦争に出陣し戦果をあげよ!だった。
王弟殿下は彼女に[必ず戻る。そしたら一緒になろう。]と約束して戦場へと向かった。
約束の揃いのペンダントを渡して・・
しかしお腹に子がいる事がわかると、命を狙われると危惧した女性は王宮から姿を消した。
「王弟殿下が生きておられたら、妃殿下の命を狙う者もいなかったでしょう。」
「えっ?命をって殿下!お怪我は?」
「他国から嫁いで来た者を、受け入れられない家門もあるのだと思い知らされたわ。」
下を向きわずかに震えている。
キャシーさんの方を見れば妃殿下の肩に手を触れ、落ち着かせるように撫ぜている。
「今までも食べ物の中に毒まででは無いにしろ、体調を崩すような物が混入されていたり、ワザと味付けを間違えたり、ドレスに針、嫌がらせの手紙、小さい事も入れたら数えきれません。わたしが未然に防いだものもありますが、信用出来る侍女を三人付けてもダメで・・」
「もしかして、身近にいるんですね?殿下の命を狙う者が!」
妃殿下とキャシーさんが顔を見合わせる。
「大きな声では言えませんが・・そうでなければ食事に何かを入れたり、ドレスに針など仕込めません。王太子殿下も命に関わる事では無いので動けないと」
「そんな・・」
ただでさえ他国に嫁ぎ不安なのに、命に関わら無いからといって見過ごして良い事では無い。
もしエスカレートして命に関わる問題がおきてしまったら、それこそ国同士の問題になりかねない。
でも、わたしに何が出来る?
「ところでハイル子爵は式典までこの国にいらっしゃるの?」
「えっ、はい。ジェネヴェクト殿下とカイとの話し合いで、と聞いております。その為に護衛として殿下の護衛騎士をわたしにと・・」
私たちから少し離れた場所で待機しているギルへ目線を向ける。ギルもこちらの目線に気付いたのか、軽く頭を下げる。
「カイにどことなく似ているのね?」
ケンウッド卿も言っていたがやはり他人から見れば似ているのだなぁ、と考えてしまう。
「あらっ?」
良く見ると妃殿下の護衛騎士が見当たらない。
たとえ王宮内で、妃殿下の専用の庭といっても近くに控えるのが普通だ。
実際カイが妃殿下の護衛騎士だった時も、交代制であっても離れた所を見たことは無い。
「あのキャシーさん、」
そう話を振った時
「シェリー危ない!」
「妃殿下!!」
メグとキャシーさんの声が重なった。
一瞬何が起きたのかわからなかった。
目を開けるとメグがわたしを庇うよう、上から覆い被さっており、少し頭の向きをかえると妃殿下の顔があった。どうやらキャシーさんもメグと同じように妃殿下を身体で守ったようだ。
そして、わたしの顔の前にはペンダントが・・
(綺麗、剣と花?)
「姉さん!メグさん!大丈夫ですか!?」
ギルの声に反応しメグが退く。声のする方を見ると、ギルがフードを被った男を拘束していた。
男の肩には短剣が刺さっており、鞘にはクーカス家の家紋が付いている。ギルが咄嗟に投げたようだ。
「妃殿下!」
我に返り振り返ると、目を閉じたまま倒れ込む妃殿下の姿があった。




