サルーン国 8
「気付いてくれたのね?」
何の事かはすぐにわかった。
カイはニコッと笑い 懐かしかったですね。 と答えた。妃殿下も笑い、キャシーに協力してもらったのよ!と答えたあと顔を曇らせた。
「こちらでは、私の出す手紙も全て読まれるの。内容によっては送られると思うけれど、実際返事が一通も無いところを見れば・・全て破棄されているのでしょう。」
おそらく、オブランス国にも手紙を出していたのだろう。返事が来ないことからキャシーさんに確認してもらった所、全て読まれていたことが判明したと。
「抗議したのよ?でもダメだったの。妃殿下ともあろう方が、読まれて困る内容の手紙を無闇に出すことは間違っている。と・・」
今にも泣きそうな声がわたしの胸を掴む。
それはカイも同じだったのだろう、膝の上に置かれた拳がギュッ!と握られた。
「私を心配したキャシーが、何か手伝える事は無いか?と聞いてくれて、昔カイが教えてくれた事を思い出したの!カイなら気付いてくれると思って!」
フフフッと笑う妃殿下は、街にお忍びで来た時にカイに見せていた顔と同じだった。
そこからはオブランス国のこと、陛下や王妃陛下のこと、ジェネヴェクト殿下とフランソワ妃殿下のことなど聞かれることは全て答えていった。
なぜかクーカス家のことも聞かれ、?の顔をしていたら、
「妃殿下はよく、兄上にも怒られていたんだ。義姉上が結婚前に妃殿下の話相手に王城に来ていた時、
そこで兄上と義姉上が知り合ったんだけど、妃殿下が困らせていたんだ・・」
誰が?と聞かなくてもわかった。
昔の話よ?と妃殿下はお茶を口に含む。
そろそろお暇する時間が近づく。キャシーさんとメグが連絡先を交換しているとき妃殿下が小声で、
「カイ、お願い。こちらにいる間だけで良いの。わたしの護衛を頼めないかしら・・」
「妃殿下付の護衛は?」
「いるわ・・でも信頼出来ないの。ベンは王弟派だから・・」
王宮から下がり侯爵邸に戻る馬車の中。カイとわたし、メグはわたしの隣に座っている。ギルは護衛のため馬で馬車に並走している。
「王弟派って?」
「現王の弟。でも確か王弟殿下は10年ほど前の戦で亡くなっている筈だけど・・」
「でも妃殿下は確かに仰ってたわ。」
「ああ、亡くなった筈の王弟殿下の名が出てくるって事は、それが原因で連絡を断たれていたのも頷けるな!クソッ、情報が欲しい!」
少し荒れ気味のカイに声が掛けられない。もと主人の事だからなのか?騎士としての血が騒ぐのか?こんなとき何のアドバイスも出来ない自分が情けない。
「幼馴染としての助言。カイ、シェリーが不安がってるわよ!妃殿下の心配もわかるけど、何に対してイライラしてるのかをキチンとシェリーに説明しなさい。」
メグの言葉にハッと気付いたのか、わたしの手を握り ごめん と謝ってきた。部屋に戻ったら話すから!と約束をしてくれて不安が少し軽くなった。
「それから忘れてるのかしら?私たちにはハリソンが居るのよ?今頃商会のつてを使って情報を集めていると思うわよ?会長からもハリソンに護衛を付けると仰ってたらしいし・・」
カイも頭に血が昇っていたのか?そうだった、ハリソンさんが居たな! と息を吐いた。
「それに、ローリング侯爵の次男はアンソニー殿下の専属護衛騎士よ!今日あたり屋敷に戻られるとフランが言ってたわ。」
「「えっ?メグもうそこまで情報集めたの!?」」
カイと声を合わせて叫んでしまった。




