サルーン国 7
王太子殿下、妃殿下に謁見出来たのは、この国着いてから五日後だった。
妃殿下の願いで無理に時間を作ったと言われたのは、妃殿下専用の庭園にある東屋。
「お会いする為の準備が整いましたらおいでになられます。それまでの間こちらでお待ちください。」
殿下の従僕から伝えられた後メイドがお茶を淹れにきた際、
「殿下はとてもお忙しい身。妃殿下のワガママに付き合わされ家令も困っております。」
独り言なのか私たちから妃殿下へ諌めて欲しいと言ってるのか、カイの方を見れば聞こえていないフリをしてお茶を口に含んでいた。
わたしも聞こえないフリをしてお茶を口に含む。
「美味しい・・」
思わず口から出てしまった!
急いでカップを元に戻すと、
「こちらの茶葉は特に妃殿下のお気に入りで御座います。本日は妃殿下よりお出しするよう申しつかりました。お口に合ったようで良かったです。妃殿下もお喜びなさるでしょう。」
声を掛けてきたのは妃殿下の専属侍女。
名をキャシー・ドードル。ドードル子爵家の令嬢だ。
「わたくしも子爵家なんですよ。」
と伝えると
「シェリー様は子爵様で御座います。私は子爵家令嬢に過ぎません。」
優しく微笑んだ顔は、なるほど!妃殿下付きになるはずだ!と思わせる美しさで、女のわたしでもドキッとしてしまった。
所作も言葉使いもどれを取っても美しく、わたしも王宮務めしたら少しは貴族らしくみえるのかしら?
「シェリーはそのままで充分だから。無理に繕わなくて良いよ。」
「そうですよ、姉さまはそのままでも充分可愛らしいですよ。」
また心の声が漏れてた!?
この兄弟は本当に!
顔を赤らめてカイとギルの背中を叩く。
ちなみにギルはわたしの護衛として、メグは侍女として後ろに控えている。
「仲がよろしいんですね。」
新しいお茶を淹れに来たキャシーさんに言われ、ますます恥ずかしくなり下を向いてしまった。
「殿下、妃殿下がお越しになられます。」
従僕の言葉に、わたしとカイは席を立ち迎える準備をする。
「待たせてしまったね。」
「カイ!」
王太子殿下の言葉を遮るように妃殿下がカイに声をかける。それを良く思わないメイドと従僕が妃殿下をチラッと見る。
「殿下、お招きいただき嬉しく存じます。妃殿下もお元気でいらっしゃいましたか?」
本来なら子爵であるわたしが挨拶をするのが筋だが、妃殿下との事もありカイに挨拶してもらった。
「ジェネヴェクト義兄上から、貴殿たちのことをよろしく頼む。と手紙が届いた。マリもこの国に来て一年、式典まで少し時間があるから時間が許せば会いに来て欲しい。」
「有り難きお言葉。陛下も王妃陛下も妃殿下のことを案じられておりました。こうしてお会い出来たこと、お伝えしたいと思います。そしてお時間が許されるのであれば妻を妃殿下の話相手にと、思っております。」
「そうだな、マリと夫人は歳も近そうだ。あちらの国の話も聞きたいであろう、よろしくたのむ。」
「承知致しました。」
お茶を一口飲むと殿下は仕事があるからと、執務室へと戻った。妃殿下は
「久しぶりにオブランスの事が聞きたい。キャシー以外は下がりなさい。」
キャシーさん以外の人を下がらせる時、先ほど独り言を言っていたメイドがこちらの様子を伺う仕草をしていたが、
「妃殿下の言葉が聞こえませんでしたか?」
キャシーさんに言われ下がって行った。
妃殿下も周りに私たちとキャシーさんしかいない事を確認したのち、
はぁぁぁ、と深い溜息を吐き出した。




