サルーン国 5
航海中は特に問題なく船は進んだ。
わたしは思ってた以上に揺れに強かったようで、船旅を満喫出来たが、10日が過ぎた頃からメグに船酔い症状が出てきていて、ハリソンが付きっきりで看病している。持ってきた酔い止めで症状も軽く済んでいるが、それでも食欲無く顔色も悪い。
「メグ、大丈夫?明後日にはサルーン国に着くから、それまで頑張るのよ!」
「まだ丸一日あるのね・・」
手桶を手離せないせいで、部屋に篭っているメグのお見舞いに毎日来る。その間にハリソンには休息を取ってもらう。と言っても船の上でもやる事があるらしく、休めているのかは・・わからない。
「船は順調に進んでいて、一日早く着くみたいって船長とカイが話してたわ。侯爵家の迎えは次の日だから一晩ホテルに泊まりましょう!って。何でもそこのホテル、温かいお湯がいっぱい出て大きな浴槽があるんですって!楽しみね!」
わたしがウキウキ話していたらメグも気が紛れたのか、
(少し外へ行こうかしら?)
と言ってきたので手を貸してデッキへと足を向けた。
「あー、気持ち良いわねー。何日ぶりに出たかしら?揺れも無いから気分転換になるわ。」
日に当たったからか?メグの顔色も良くなっている気がする。二人でベンチに座って話していると、カイとハリソンが走って来た。
部屋に行ったらわたし達が居なくて探していたと。
「そう言えば手紙を残すの忘れたわね。」
久しぶりにコロコロ笑うメグにハリソンもホッとしたのか、(飲み物を貰ってくる。)と言って食堂へと降りて行った。
遠くにサルーン国が見えている。
「ようやく着くわね、サルーン国に。」
メグが言う。
「ええ。」
「そうだな。」
わたしとカイが答える。
妃殿下がどうなっているか、気にならない訳では無いけれど、自分たちに何が出来るのか?逆に足手纏いになるのでは無いか?そう考えると不安になるが、まだ船に乗っている今は夫婦の時間を大切にしようと、カイの腕に縋りついた。
船は二日後の昼前に港に着いた。
荷物を下ろしている間、わたしとメグは先に本日泊まるホテルへ移動した。メグは、
「船を降りたはずなのに、何でまだ揺れてるの?」
と言ってわたしと馭者を笑わせた。
ホテルは父が取ってくれたのか、とても豪華なホテルで特にわたしとカイの部屋は貴族夫婦の部屋だった。
入り口すぐの部屋は応接室になっており、ソファーに机、テーブルや家具などは見るからに貴重な材質で作られた物だった。次の間は寝室でこれまた大きなベッドが真ん中に置かれていた。
「このベッドで、四人一緒に寝れそうね。」
寝室の横には二つの扉。一つはお手洗い。もう一つは夫人用の支度部屋だ。我が家でもここまで立派じゃ無いのに・・と驚いていると、
「あなた様は今からハイル子爵でございますよ?この様な部屋で驚いていては、ローリング侯爵家に行ったら腰を抜かしてしまいます。慣れてくださいね。」
侍女風の言葉で言ってきた。
荷物を運び終わったカイとハリソンも、私たちの部屋を見て腰を抜かしそうにしていたのは、ここだけの話だ。
ホテルのお風呂は評判通り、素晴らしかった!
男性、女性と分かれており、しかも個室風呂もあった。わたしとメグは同じ個室風呂に入ろうとしたが、
「そこは夫婦で入るべきでしょう?」
とカイに連れ去られてしまった。
わたしがブーブー文句を言えば、
「今までも明日からも、夫婦の時間が取れるかわからない。俺もハリソンさんも限界なんだよ!」
その夜寝つけたのは、日にちが変わった後だった。




