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その五:クリスマス宮殿の案内人

 ハッとしたら、僕とシャーキスは光の溜まりのなかにいて、女王の姿は消えていた。女王が座っていた玉座のあった(だん)もない。


――バターン……!


 どこかでドアが開閉した音だ。


 ぺったぱった、ぺた。ぱた。

 ぱっふ、ぽっふ、ぽっふん!


 ぴょ~ん、すとん。

 ぴょ~ん、すっとん。

 ぱたたたた!


 奇妙な音が、だんだん近づいてくる。


「なんだろ、変わった音がするなあ」


「るっぷりい! ネズミがスリッパで踊っているような音なのです、ぷう?」


 ぱっふ、ぽっふ、ぽっふん!


 止まった。


 帽子は赤と白のしましま模様。

 左手に魔法使いの杖を持ち、銀の星の刺繍を散りばめた長い黒マントをはおり、先のとんがった薄い黄色の靴をはいている。


 上を向いた大きな顔には、びっくりするほど大きなギョロ目!


 その目の周りにはピンクの歯車みたいな模様が描いてあって、まるでピンクの歯車の形をしたメガネを掛けているみたいだ。その目にあわせて、鼻も口もバランスよく大きい。


「グッシッシ! 若き魔法玩具師さまにご挨拶申し上げます。あっしらが、女王さまより申しつかりやした、この宮殿の案内人でございやす。てまえはクリスピス・シャーキーズでやす。どうぞ、お見知りおきを!」


 クリスピス・シャーキーズは大きな前歯をむき出して、グッシッシィ! と笑った。


 その隣へ、空中から降り立ったのは、小さな熊のぬいぐるみだ。


 薄いほわっとした茶色のモヘアなふかふか布で作られていて、すごく柔らかそう。全体的にまるっこく、可愛らしさを強調して作られているから、大人の熊ではなく、子熊のぬいぐるみだろう。


「がううーッ! おいらはトッパラッタ・ラッタッターズだ、うがあッ!」


 小熊のぬいぐるみは、ものすごいダミ声で叫んだ。見た目からシャーキスみたいな甲高い子どもの声を想像していた僕は度肝を抜かれ、シャーキスも「るっぷ!?」と空中で飛び上がっていた。


「うう~、がううッ! お見知りおきやがれ、いや、よろしくなッ、がう~!」


 しゃべればしゃべるほど、耳ざわりなガラガラ声が鳴りひびく。

 僕もシャーキスもビックリしすぎて声も出ない。


「がう? なんだ、お前たち、その顔は? おいらに文句でもあるのか、が~うッ!?」


 トッパラッタ・ラッタッターズが僕の顔の前にビュンと飛んできて、「がーう、がう!」とおどすように()えたてる。


「い、いや、ていねいなご挨拶、ありがとう! あらためて、僕は魔法玩具師のニザだよ。よろしく!」


「がう! 覚えといてやらあ!」


「すごいね、シャーキス! ほら、きみとおなじぬいぐるみ妖精だよ。初めて見たね」


「るっぷ~? 少し違うような気がしますが、ぬいぐるみ妖精の一種ではあるようなのです。トッパラッタ・ラッタッターズさん、ボクはぬいぐるみ妖精のシャーキスです! これからよろしくお願いします、ぷう!」


「が~う、がうっ! おまえ、おいらとおなじ、熊族(くまぞく)のぬいぐるみだな。そんなピンクで花模様で、強いのか? が~う?」


「るっぷ? 意味がわからないのです! ボクはただのぬいぐるみ妖精なので、強いかどうかわかりません」


 トッパラッタ・ラッタッターズは、「がうーッ!」と空中高く飛び上がった!


「がーうッ! そんなのダメだダメだ、ダメに決まってるじゃないか! おいらは強いぬいぐるみだから、弱いぬいぐるみとは友だちになれないんだ! がうッ! いいか、お前とはぜったい友だちになれないからな! うがああ~ッ!!!」


 うんと高い空中で、僕らを見下ろしながら手足をじたばたさせるトッパラッタ・ラッタッターズの勢いに押され、僕とシャーキスは後ろへ下がった。


 でも、シャーキスはあんがい平気で、僕の顔の横あたりに浮かんだまま、首をちょこっとかしげただけだった。


「るっぷりい? トッパラッタ・ラッタッターズさんのいうことはよくわかりませんが、お友だちになれないことは、承知したのです、ぷう!」


「グッシッシィ! では、挨拶もすんだところで、お客さまがた、どうぞこちらへ。次の部屋へご案内しましょう」


 クリスピス・シャーキーズは赤と白のしましま帽子を取り、灰色のツンツンした髪の毛を見せながら、ふかぶか腰を折り曲げた。


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