その十三:悪い魔法使い人形とひねくれ小熊のぬいぐるみ
グッシッシィ!
うがッ! うががあッ!
「さあ、どうだろう、あいつらの様子は? そろそろ迷路を出られなくて垣根を破壊して近道しようとしたり、邪魔な雪ウサギをかたっぱしから踏みつけたり、かわいい子猫を投げ捨てたりして、とんでもない悪い子になったころじゃないか?」
悪い魔法使い人形と、ひねくれ小熊のぬいぐるみは、こそこそとホワイト・クリスマス・ツリーの側へ現れた。
悪い魔法使い人形は、白いツリーの根元にある、水晶のプレートを覗き込んだ。
そこには庭園迷路の図があり、探求者が迷路を移動していると、その様子が光の点となって表れるのだ。
「グシィ! やや、いない! 庭園迷路のどこにもいないぞ?」
「がうッ? なんか変だぞ、おいらにはまだ、あいつらの気配が近いように感じられるぞ?」
「グシィ!? なんだと! 悪い子になって、クリスマスの宮殿から追放されたんじゃなかったのか!?」
悪い魔法使い人形クリスピス・シャーキーズと、ひねくれ小熊のぬいぐるみトッパラッタ・ラッタッターズは落ち着きなく、キョロキョロ辺りを見回した。
僕は、ホワイトツリーの後ろから、ゆっくりと歩み出た。もともと隠れているというほどの隠れ方でもなかったけどね。
「ふーん、やっぱりきみたちのしわざだったか。きみたちはどうしても、僕に意地悪をしたいようだね」
「グッシィ!」
「うが、きゃーッ!」
悪い魔法使い人形と、ひねくれ小熊のぬいぐるみは、ものすごくビックリして、飛び上がった!
「なんだ、どうして、そんなところにいるなんて、ずるいぞ!」
「がーうッ! この卑怯者! 盗み聞きするなんて、なんて悪い子なんだ、がうううッ!」
「あいにく僕は筋金入りの良い子なんでね。そこはニコラオさんのお墨付きだから自信もあるぞ」
「なな、なんで、ど、どうして、そこでサンタクロースの名前が出てくるんだ?」
「僕をここへ連れて来てくれたのが、ニコラオさん本人だからだよ」
「るっぷりいッ! ご主人さまはとても良い子なので、そのご褒美にここへ連れてきてもらったのです!」
「なんだと~? どうりで時季外れのおかしな訪問者だと思ったわい! ここへ来るのはたいがいクリスマスの前後の夜、悩んだ大人ばかりだからな。クリスマスの女王のおめがねにかなうほどの芸術を作り出せる者は、老境にさしかかった一流の芸術家か、逆に才能豊かで全盛期の青年で、おまえみたいなガキなんて来るわきゃないんだ!」
「がうッ! そうだ、そうだ! 大ウソつきの悪い子め! がーう! 罰が当たればいいのに!」
「おあいにくさま! 僕はニコラオさんにもほめてもらえる、とびっきりの良い子なんだ。きみたち程度に悪口を言われても、なんとも思わないね」
「グシィッ! なんて生意気なガキなんだ! こうなったら、魔法でロバに変身させて、こき使われる農家に売り飛ばしてやる! えいッ!」
悪い魔法使い人形は、魔法の杖を振った。
杖の先から、魔法の光が飛んだ。
こいつ、そんな魔法も使えるのか!?
ギョッとして身がまえたが、僕には弱々しい光の軌跡が、はっきり見えた!
「えい!」
虫でも取るかのように、バチンと手の平をはたき合わせた。
と、光は取れて、僕の手の中で、バチッ! と弾けて、うすい紫色のけむりになって、霧が消えるように消えてしまった。
よし! できると思って、やって良かった!
「グシィッ!? なぜだ!? この俺さまの魔法が効かないなんて!」
「へーんだ、僕だって魔法使いだぞ」
僕は、ここぞとばかりに、胸を張って、笑ってやった。
「グシ?」
「うが?」
人間のオモチャ職人じゃないのか、と首を傾げる悪い魔法使い人形とひねくれ小熊のぬいぐるみ。
「僕は魔法玩具師だ。シャーキスの創造者は僕なんだぞ。そこらの人形の魔法ていどに負けてたら、オモチャの人形なんか作れないからね!」
「グシシィッ!?」
「うが、うがああッ!?」
悪い魔法使い人形とひねくれ小熊のぬいぐるみは、ものすごく、うろたえはじめた!
「そういえば、ずっと気になっていたんだ。きみたちをよく見せてもらってもいいかな」
「なな、なんだ、いきなり!?」
「よく見せてくれたら、許してあげてもかまわないんだけどなあ。もちろん、女王さまにもいわないよ?」
「グシィッ! どうぞどうぞ、お客さま! ごゆっくりご鑑賞してやってくださいませ、グシィ……」
「はい、手を見せて。そっちも」
僕はクリスピス・シャーキーズの左手を取った。それから杖を持っている手も、帽子を取らせて顔を見て、服と靴を履いた足を、よくよく観察した。
「おー、お客さま。それで何を調べてるんですかい?」
「うん、やっぱりだ。きみはハンドメイドの一点物だね!」
「グシ? なんのことでがすか?」
「がうッ!? なんだと~?」
悪い魔法使い人形とひねくれ小熊のぬいぐるみはわけがわからず、僕の次の言葉を待っていた。





