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3/5

ナンシー


お城のキッチンは、ユズが思ってたよりずっと広かった。

イメージだけど、温泉宿の宴会場ぐらいありそうだ。


簡素な石畳の床に、大きなアイランド形式の木製調理台が3つ。


壁際には釜戸が5つ


使い込まれた食器棚が壁一面


人間が余裕で入れるような水瓶は20個以上ある。


ジョナサンが「ユズちゃんは、何が出来るんだっけ?」とニコニコしながら聞いてきた。


ユズ「な…ナニカナ⁈ごめんなさい、記憶がなくて…」

全然出来ない気はしないけど、具体的に思い出せない。


(何が出来たっけ…料理…してたような…カレーとか…カレー⁈ああカレー食べたい。

この世界にはないカレーの作り方も味も知ってるんだから、やっぱり私は転生してきたのかぁ…

元の世界に帰れるのかな…)

などと少ししんみりしつつも、秒で我に返り、


「でもっ、絶対頑張って仕事覚えますので働かせて下さい!」


と、ユズは大袈裟なくらい頭を下げた。

ここで働かないともうこの世界での行き先の当てがない。


ジョナサンは笑う「大丈夫大丈夫、簡単な仕事から始めようよ。まずはお掃除かな?」


そう言われて、ユズは張り切って掃除を始めた。


その頃には夕食の準備のために台所の人が増えて、ガヤガヤと騒がしくなってきた。


台所で働く人は男女比で言うと7体3ぐらいで、意外に男の人が多かった。

(後で知るのだが、大人数を賄う食事の用意というのは力仕事が多いのだ。)


みんな自分の仕事に取り掛かりつつ、若くて可愛い新入りのユズをチラチラ見てくる。


ジョナサンはまた笑いながら「そろそろみんな揃ったみたいだから紹介するね!

今日からここで働いてくれるユズちゃん!仲良くしてね」


みんなも「ユズちゃんか、よろしくね」とニコニコしてくれた。

ジョナサンはここでとても好かれているんだろうなぁとユズは思った。


「分からないことがあったら、ナンシーに聞いて」


と紹介されたのは、大きな塊のように見える女の子。ジャガイモを見ている。


なにかこう、見るからに暗い負のオーラが漂っていて…


モシャモシャの黒い髪は黒いリボンで無造作に結ばれて、灰色のドレスに灰色のエプロンがむしろ似合っていた。


女の子は長い前髪の奥からじっとりとユズを見る。


ナンシー「分からないこと、ある?」思った以上に重低音ボイス


ユズ「あ、バケツありますか?それとお水はどこのをいただいて、どこに捨てればいいですか?」

動揺を隠すように元気良く質問する。


ナンシーが丸まった腰を伸ばして立ち上がると、ユズの2倍はありそうな(雰囲気)高身長だった。


「こっち…アッチ…」ナンシーはボソボソと教えてくれる。


ユズ「ありがとうございます!じゃあ早速、お水をいただいてきます!」

そう言って木製の桶を持ち上げる。


最初にやる気を見せるのが肝心なのだ。


その時ユズはふと思い出した「昔も…元の世界でもこういうことがあったな…バイトか就職か分からないけど…」

失われた記憶は、日常のふとした仕草で断片的にポロポロと思い出す。


(きっといつか全部思い出すよね。その時を楽しみに生きていこう)



さて、水を入れた木の桶というものは、想像以上に重かった。

「くっ…力持ちになりそう」

ユズはヨロヨロしながら持ち上げる。


使っていいと指示された井戸は台所のお勝手口から20メートルぐらい先にあった。

遠くはないが、小さくて細っこいユズにはなかなかキツイ。


ちなみに使用済みの水は、台所にある用水路?に流せて、それは馬小屋を通り、お城を取り巻く川につながっていてそこにいくようになっていた。

なかなか考えられた設計で、それだけでも大助かりだ。


野菜のクズなんかはそのまま馬のご飯になる。


ナンシー「床の掃除が終わったら、コレを馬にあげてきて…」

ユズはナンシーからカゴに入った野菜クズを渡された。

「はーい」


「あ、でも1番奥にいる黒くて大きな馬には近寄っちゃうダメよ…

あいつは、王様と専属のお馬番にしか懐かない恐ろしい馬だからね…!」


さんざん脅されたユズは恐る恐る馬小屋に入っていった。





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