なぜかしらイラつくわ
「ねぇ、マリアちゃん、人族の国って他にもあるの?」
「はい、この国の南方に二つの国があります」
「その二つの国とは同盟とか結んでいないの?」
「はい。彼らは魔族の国とは国境を面していないので、私たちが盾となっているので、静観しています」
(この国が魔族に落とされれば、次は自分たちの番なのに本当に危機が目前に迫らないと目が覚めないのね……)
「マリアちゃん、私たちが二つの人族の国に交渉に行って、同盟を結んできてあげるわ!」
「しかし、以前より私も何度も援軍要請をしていますが、彼らは一回も約束を守ったことがありません……」
「そう。ならなおさら私たちが交渉した方がいいわ!」
真由美はマリアがまだ若い王女のため、二つの国は足許を見られて強く出られたことを察した。
「マリアちゃん、兵士を5千ほど引き連れていくけどいいかしら?」
「構いませんが、戦争をしに来たと勘違いされますよ」
「大丈夫、戦争はしないわ! ちょっと刺激するだけよ!」
マリアとアルフレッドは戦争にならないか不安になるが、カーラの軍勢を退けた真由美の采配を信じて、交渉も託すことにした。
「あの……。小次郎様も一緒に行かれるのでしょうか?」
「ああ、俺も一緒に行くよ。ここに残っていてもやることないしな!」
真由美たちと一緒に交渉に向かおうとする小次郎であったが、マリアが何かモジモジとしながら小次郎に何かを言いたげなそぶりを見せ、それを見ていた執事のアルフレッドが小次郎に近づき、耳元で小声で話しかける。
「姫様は貴殿がカーラを倒して以降、あなたを気にされております。この国も先代の王が討たれて実質姫さまが女王の立場となられました。まあ、端的に申し上げますと、姫様は貴殿との婚姻を望まれております!」
「いや、しかし、俺はマリアさんにあんな辱めを与えた最低の男だぞ!」
「いえいえ、あのハプニングがあって以来、あなたを意識されております!」
(え? 大丈夫なのか、あのお姫様……)
小次郎はとりあえずは他国との同盟が先だと誤魔化し、真由美たちに同行することにした。
「真由美さん、ところでこの間捕えたカーラはどうする? あれが檻から抜け出したりしたら留守中にこの国を乗っ取られるぞ!」
「そうね、彼女も連れて行くわ! 二国にこの国の力を見せつけるには彼女の敗北を見せつけるのが一番というのもあるし!」
「そうか、でもあまり手荒な真似はやめてあげたいな」
「あなた戦い方エグイのに、意外と優しいのね」
「ああ、俺は戦いに勝つことには手段は選ばないけど、負けた奴に更に屈辱的なことはしたくないからな」
(意外ね。あんな卑怯な戦いをする奴がこんなに優しいなんてね……)
小次郎はカーラを閉じ込めた地下牢に向かう。
「おい、カーラ、お前を連れて南方の人族の国に向かうことになった。見世物にするようなことはしないから一緒に来い!」
「どうせ相手の城の前で私を柱に括りつけて、脅しに使うんでしょ? あなたはともかく、あの女はそういうことするわ!」
カーラは戦意喪失しながらも、小次郎を睨みつける。
「真由美さんは戦略家だから、それを考えるかもしれなけど、俺はそれをやらせる気はない。俺の馬に一緒に乗ればいい。手枷は外してやれないけど、守ってやるよ」
「なんで自分が倒した相手に温情なんてかけるの? 私はあなたを殺そうとしたのよ……」
「なんでって、自分と一騎討ちした相手に敬意を持つのは当たり前だろ! お前を守ってやるというのは本当だから一緒に来いよ」
小次郎はカーラを地下牢から連れてくると、檻のある荷馬車ではなく、自らの馬に一緒に乗せた。
「真由美さん、小次郎さんアイツを一緒に馬に乗せてるけど大丈夫なの?」
もし逃げ出されたら大変なことになると静香と虎太郎は心配になる。
「わからないわ。でも、戦った者同士通ずる者があるのかもね……」
(でも、なぜかしら、イラつくわ……)
真由美は静香たちのような心配という感情ではなく、小次郎が自分の馬にカーラを一緒の乗せたことになぜだか少しイライラするのであった。