届くわけがないじゃない!
「真由美さん、小鳥たちの報告によると黒いドレスの女が城に入ってきたみたいだよ」
「虎太郎ちゃん報告ありがとう。では、王宮の間に男性騎士たちと静香さんと小次郎さんを呼んできて! 私はマリアちゃんと先に向かうわ」
真由美はマリアを連れて王宮の間に入ると、玉座に足を組んで座り、マリアは真由美の座る椅子の後ろに隠れて座る。
「真由美さん、男性騎士たちを連れてたよ! あと、静香さんと小次郎さんも!」
虎太郎は男性騎士たちとマリアのドレスを着た静香とスーツ姿に刀を持った小次郎を連れてくる。
「準備は万端ね。静香さん、お願いね!」
「は、はい……」
マリアの前で決意を固めた静香であったが、いざ、カーラが来ると思うと恐怖心が高まるのであった。
真由美たちが王宮の間でカーラを待っていると、短剣を持った黒いドレスの女が現れる。
「あら、マリアさん、逃げずにこんなところにいたのね! あなたの首をいただいて、この戦争を終わらせるわ!」
カーラは笑みを浮かべ、短剣を舐めると、マリアに扮した静香の首を狙っていきなり襲い掛かる。
「キャー、やっぱり無理!」
静香は襲ってくるカーラを見て全速力で逃げる。
「逃げても無駄よ! 苦しまないようにスパッと首を刎ねてあげるから大人しくしなさい」
カーラは逃げる静香の首を狙ってブンブンと剣をふるう。
「なかなか逃げ足が速いじゃない。逃げても無駄よ。この部屋の中で私の剣から逃れるなんて不可能」
カーラは再び静香を追いかけ、剣をふるうが捉えたと思うと、静香は遠ざかり、一向に剣が当たらない。
「ねぇ、カーラさん、この余興はいつまで続けるの? あなたの剣、さっきから一撃も当たってないみたいだけど」
真由美は玉座に座り、笑みを浮かべながらカーラを挑発する。
「苦労もしたことないお姫様が私の剣から逃げ切れるわけがない! 次で殺す!」
カーラは更にスピードを上げて、静香に斬りかかるが剣はかすりもしない。
(な、なぜ? なぜ剣が届かないの……)
「カーラさん、その子は24年間自分の人生から逃げ回ってきたの、あなたなんかの剣が届くわけないじゃない!」
「え? 24年間? この娘はマリアではないの……?」
カーラは騙されたことに気づき、玉座から笑いながら眺めている真由美に怒りが混みあがり、静香ではなく真由美に斬りかかる。
カーラは玉座への階段を一気に駆け上がり、真由美の首に剣を当てるが、真由美の首を刎ねることはできない。
「お花で私の首を刎ねることはムリよ! あと、あなたなんかが玉座に上ってくるなんて頭が高いわ!」
真由美は目の前のカーラにヒールを履いた足で前蹴りを喰らわせ、カーラは階段から転げ落ちる。
「な、なぜ私の剣が急に花に変わったのかしら……?」
真由美はカーラが斬りかかってきた瞬間に宴会芸スキルで剣を花に変えるというマジックを使っていた。
「真由美様、あなたも本来玉座に座るのは頭が高いのですぞ!」
「黙りなさいアルフレッド! 調子が狂うわ!」
真由美は執事のアルフレッドを睨みつけ、アルフレッドも真由美の視線に怯え、大人しく引き下がる。
「静香さんよくやったわ! あとは、うちの最強戦士がその無様な魔女を葬るから大丈夫よ!」
静香は真由美を見て、Vサインをしながら騎士団の中にさがっていき、今度は刀を持った小次郎がカーラの前に立ちはだかる。
「俺の武術をリアルファイトで見せられる時が来た……」
実戦ができる感動から涙を流す小次郎、カーラはドレスの中から二本目の剣を抜き、油断している小次郎に斬りかかる。
「カーラさん、やはり卑怯だな。いきなり斬りかかれば俺の首が斬れると思ったか?」
小次郎は持っていた刀で、カーラの剣を防いだかと思うと、左手に握っていた砂をカーラの目にかける。
「す、砂? なんなの?」
カーラが目を押さえると小次郎はズボンのベルトを外し、両サイドを持って輪のようにすると、鞭のようにしならせ、カーラが剣を握っている右手を叩く。
カーラはベルトで右手を叩かれた痛みで剣を落としてしまう。
「卑怯者はあなたじゃないの?」
「おいおい、甘ったれたこと言うなよ。これは命のやり取りだぞ!」
(さっきの逃げ足の速い女に玉座の高飛車な女、そしてこの卑怯な男、コイツらはイカレている……)
カーラは分が悪いことに気づき、逃げようとするが、小次郎が輪っかにしたベルトを首にかけ、逃げられないように引っ張る。
「カーラさん、あなた見られるという羞恥心には強い方かしら?」
「何を言っているの?」
カーラは真由美の言っている意味がわからなかったが、小次郎がカーラのドレスの襟をつかんで背負い投げをしようとすると、ドレスだけすっぽ抜け、大勢の男性騎士たちの前で下着姿になってしまう……。
「な、何をするの! 命を奪うだけでなく、こんな非道なことまでするの?」
「あ、これは違う! 俺は背負い投げをだな……」
弁明しようとカーラに近づく小次郎だが、カーラが落とした短剣に足がひっかかり、そのままカーラを押し倒し、胸に顔をうずめてしまう。
「え、なんなのこのエロ戦士は? 最低だわ!」
下着姿な上に小次郎に抱き着かれ、完全に戦意を喪失するカーラ。
カーラはそのまま騎士たちに取り押さえられ、縄で縛られ、大きな木に括りつけられる。