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友人がオレ/俺好みの美少女になってたんだが?  作者: 濃支あんこ


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気づきたくないことって結構多い その1

 風呂上がりにハ◯ゲンダッツ(クッキー&クリーム)をキメて、少しの非日常と共に、ゆったりとした贅沢な時間を過ごしながら、梅吉はふと呟く。


「オレらが入った後の湯船の湯、一茶に売れそうじゃね?」


 シンプルにカス発言であった。


「あいつなら言い値で買うって言いかねないからやめろ。知り合い相手に阿漕な商売しようとすんじゃねえよ」

「えー。お前はあいつが何円まで出すのか気にならねえの?」

「……めちゃくちゃ気になるな。あいつってどこまで即金で出せるんだろうな?……いやでも、この前俺らに向けて財布叩きつけてた時は小銭しか入ってなかっただろ。そんなに面白くなさそうだな」

「たしかに。あいつの財布に万札入ってる時って存在す、いやでも一回『物理赤スパ!』とか訳わかんねこと言いながら万札取り出してきたことあったわ。ある時はあるわ」


 ちなみに物理赤スパ、とやらの意味はよくわからなかったが、丁重にお断りさせていただいた。誰だって不気味だろう、梅吉が青仁と適当な話をしていただけで万札叩きつけてきたら。


「あーあれか、あれうちのクラスの裁判長、じゃなかった学級委員が一茶と固い握手を交わしてたやつだろ?もしかしてあいつって一茶と趣味合うのかもな」


 梅吉の隣でソファに埋まりながら青仁が言う。なお、奴はまた性懲りも無く男だった頃の部屋着を流用しているらしく、一瞬履いていないかのように見えるオーバーサイズなTシャツ姿である。ついでに言えばTシャツから覗く風呂上がりの生足と素足、普段とは違い降ろした髪も中々なものだ。


 ……加えて、自宅のソファに近めの距離感で女の子が座っている、という根本的なシチュエーション自体が梅吉を殺しにかかっている。もう少し距離を置いてくれたって良いのではないか。いや役得ではあるのだが。


「ていうかお前何食ってんの?なんかぱっと見オレと同じでクッキーアンドクリームっぽいけど。どうせ違うんだろ?」


 まあ、結局手にしているアイスのパッケージが明らかに英語ですらない謎の外国語な時点で不穏MAXであり、素直に拝むことはできないのだが。

 ついでに言えばギャップ的には満点だが、梅吉好みのお姉さんとしてはちょっとアレである。梅吉はネグリジェを着て欲しい派なので。まあ、流石にそんなものを青仁が着てくるとは全く思っていなかったので、ハナから期待はしていなかったのだが。


「サ〇ミアッキ入りアイスクリームだけど。お前も食う?」

「激マズ飴入りとか誰が食うかよ!つかなんでそんな冒涜的商品が存在してるんだ?!」


 まあ、期待していないからといって、別方面の予測を的中させたいとも思っていなかったのだが!


「そりゃ現地だと普通に定番お菓子らしいからじゃね?」

「は?!これが定番とか狂ってんだろ?!どこの国のおやつか知らねえけど絶対頭おかしいって!」

「多分腐った豆食ってんのも外国から見たら同じような扱い受けてると思うよ」

「納豆……薔薇……うっ頭が」

「いやあれ美味しかっただろ」

「どこが?!?!?!」


 こちとら青仁にあーんをしてもらえた天国と、最早食べ物分類すらしたくない、三歳児にもわかるレベルで地獄を体現したアレのせいで、しばらくたこ焼きも納豆も食べれないかもしれないのである。むしろ責任を取って欲しいのだが?


 と、本人は言いつつ二日後あたりには普通に食べているせいで、余計青仁に変な物を遠慮なく食わされている事を梅吉は知らない。


「マジで長年の謎なんだけど、お前なんでそんなに味覚イカれてんの?」

「そっくりそのままお返ししてやるよ、なんでお前そんなに胃袋イカれてんの?」

「……」

「……」

「アイス食い終わったら何する?」

「唐突にまともな方向に話戻すじゃん」


 不毛な問いかけを経て、極めて真っ当な会話の流れへと戻っていく。それが二人の日常である。というかこれぐらい対応できなくてはこの先やってけいないだろう。現代は何事も速さが命なのだから。


「何するっつってもなあ。何も考えてねえわ」

「んじゃ家探しか」

「あー、たしかマ〇オカートならあった気がするしやるか?」

「ナチュラルに無視すんじゃねえよ」


 家探しなんてさせるものか。いや何がとは言わないが梅吉は現代っ子らしく電子派なので、見られて困るものはほぼ確実にないのだが。ブツ以外の見られたくないものが出てくる可能性は普通に存在しているので、きっちりと阻止しておいた。


「いやオレん家なんて探しても特に面白いもの出てこねえから。むしろお前ん家のが出てきそうじゃね?エロ本とか」

「え、見る?オカンにエロ本平然と本棚に並べられた時泣きながら狂ったテンションで撮ったミステリー小説とエロ本がきちんと共存してる本棚。多分まだ画像残ってると思うけど」

「弄りづらい話題出すのやめろ。で、マジで何すんの?」

「……」


 沈黙が場を支配する。何故こうもわかりやすくぎくしゃくとしているのか、互いに理解してはいたものの。それを口に出すことはできなかった。というか、言った方が負けである。


 この状況を「恋人(仮)な女の子(中身はアレ)とのお泊まりデート」と確定してしまったら色々終わるのだ。具体的に言うと理性が。いや理性を失ったところでナニをヤるものがないけど。事故が起きない代わりに心に致命的なダメージを負うけど。なんでちんこすぐ死んでまうん?


「えー、女子会、お泊まり、やること、で検索っと」

「おい待て新手の自傷行為やめろォ!」


 などと煩悩に気を取られていたら、青仁が盛大に自爆しようとしていた。


「う、梅吉よ、よよよよよく考えてみみみみろよ、じょ、じょじょ女子が集まったらそ、それは女子会ってやつなんだろ?く、くくクラスの女子がそう言ってたの、お、俺盗み聞きしたことあるぜ?」

「そうかもしれねえけどオレらにはまだ早いって!難易度高ぇよ無理だわ!!!」


 盗み聞きって辺りに隠しようのない童貞臭が漂っている所が、余計に哀愁を誘う。しかし続けられた青仁の発言のせいで、梅吉は全力で奴の自爆に乗る事を余儀なくされてしまった。



「じゃ、じゃあこれを女子会ってことにしないと本格的にお泊まりデートに言い逃れできなくなるけど良」

「わぁい女子会!わたし女子会大好き!」



 双方やけくそ気味に叫ぶという、悲しみしか産まない光景が繰り広げられてしまったので。


「だ、だろ?ほ、ほら俺もさ?だ、大好きってことになってるからさ?」

「設定貫き通すならもうちょっと頑張れよ」

「うるせえ。……お、検索結果出てきたぞ」


 互いに挙動が不安定なまま、女子会という名目にさせた現状は進んでいく。


「いっぱい飯食う」

「もうやっただろ」

「映画」

「さっき見た。つか誰が最初にサメ飛ばそうとか思ったんだろうな。思いついた時最低でも酒は入ってただろ」

「イ〇スタ映え」

「オレらのイン〇タって実質DM専用じゃん」

「メイク」

「さてはお前面倒になってきてるな?」


 まあ、だからといって女子会を真っ当に遂行できるとは限らないのだが。なにせ二人は女子歴半年未満のルーキー選手である、このような高等技術が問われる催しの開催が行えるほど、女子力レベルは足りていない。


「当たり前だろ。俺ばっか調べさせられてるし。お前だって調べてみろよ、ろくなもん出てこないから」

「何胸を張って言ってんだか。ま、ちょっとぐらいは調べてや……うっわ」

「は?謎の上から目線やめろ、って爆速でフリーズし……マジで言ってる?」


 ぶつくさ言いながらも、即座にスマホを手にし、現代高校生の必須技能の一つ高速フリック入力により即座に検索ワードを打ち込んだ梅吉はうめき声を上げた。隣でスマホを覗き込んだ青仁も真顔で声を上げる。何せ、検索ワードの都合か一番上に出てきたリンクは、大雑把にまとめると以下のようなものだったので。


『女子会といえばガールズトーク!つまり恋バナ!』


 それはもうファンシーにピンク色な、、二人のような別の意味で頭がピンク色な野郎とは意味合いも色味もまるで違う方向性だ。


「恋バナなあ……恋バナって猥談と何が違うんだ?」


 この通り、梅吉の隣にいるのは恋バナのこの字も語る資格を持たない童貞の怪物なので。


「お前……それ女子に言ったら殺されるぞ」

「なんで?恋愛=セックスじゃん。セックス=エロじゃん。つまりエロ=猥談じゃん。よってガールズトーク=猥談という図式は成立する。Q.E.D」

「青仁のくせになんか頭良さそうな理屈捏ねて頭悪いこと言わないでくれるか?オレそういう数学臭がするやつ地雷なんだよね」


 どうせ青仁のことだし、大したことは言っていないのだろうと決めつけて否定する。梅吉は数学に対する理解力がマイナスを下回っており、=という記号を見聞きするだけで拒絶反応が出る為理解していなかったが、判断自体は特に間違っていなかった。


「お前マジで数学だめだよなあ。まあとにかく、俺が言いたいのは恋バナと猥談は同じじゃねーのって話だから。これだったら俺らでもガールズトークとやらを遂行できるんじゃねえのって」

「だからこれをガールズトーク判定したら……まあ、百歩譲ってお前の言う通りだとしたらよ」

「?」


 アイスを片手に語らう風呂上がりの美少女達。それだけ切り取ったら百二十点満点シチュエーションだが、残念ながら実態が終わっている。


「オレら年中無休で猥談してるし、常にガールズトークしてることにならねえか?女子力鰻登りでは?」

「た、たしかに……?!つまり俺らの女子力は53万……!」


 何せ、こんなどこからどう考えてもクソの一言で片付けられる結論がさらっと出て来てしまうのだから。


「俺ら、女子力がちゃんとあったんだな!もう女子っぽく振る舞うことに全力かけなくても自然体で女子に見えてるのでは?!」

「おーい青仁、オレ冗談言ったつもりだったんだけど。聞いてっか?」

「あーでもだめだな、自然体で女子っぽいとか普通にキモいわ。アイデンティティの崩壊案件だわ。やっぱこの世に救いとかないのか?」

「自己完結型ボケツッコミやめろや。知ってっか青仁、人はそう言うのコミュニケーションの放棄って言うんだぜ」


 勝手に希望を見出して勝手に絶望し始めた青仁を白い目で見やる。一通りやって気が済んだのか、こほん、と青仁が咳払いをした。


「まあ、そういうことだから猥談でもするか?」

「何がそういうことだよ。会話のハンドリング技術磨いてから出直して来い」


 もしやこいつ、梅吉という美少女とのお泊まり会でテンションがおかしくなっているのかもしれない。まあそれは自分も同じかもしれないが、積極提供してくれた話題だ。なんか低俗な気もするが、男子高校生にとって猥談はルーチンワークみたいなものである。ここは大人しく応じるべきだろう。


「俺は将来ハンドルを握ったら鮮やかなハンドル捌きで魅せて助手席の女子を惚れさせるタイプの男だが?何言ってんだお前。まあいいや、んじゃジャブってことでひとまず、クラスで一番ヤりたい女子とか」

「オレの隣にいるけど」

「奇遇だな、俺も隣にいるわ」


 秒で会話が終わった。完全に話題のセレクトミスだった。

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