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友人がオレ/俺好みの美少女になってたんだが?  作者: 濃支あんこ


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フラグを見逃した結果 その2

 この後の展開は大方予想通りのものだろう。


「ひどいめに あった」

「そうだな ほっとけーきは うまかったけど」

「おまえの ほっとけーき あますぎ」

「なんでお前ら全部ひらがな表記なの?」


 無事梅吉と緑は死亡し、青仁だけが機嫌良くたこ焼きを食べていた。テーブルの上では、大量に並べられていた材料がすっからかんになっている。

 無論まともなたこ焼きもちゃんと食べることができたのだが、それ以上に青仁が強すぎた。緑という生贄を用意しても、こうして瀕死になってしまう程度には。流石青仁、おのれ青仁。もう絶対こいつとタコパしない。


「いやー食った食った!流石に満腹だな!」

「……え、お前風呂上がりのアイス食わないの?」

「食うに決まってるだろ別腹って概念を知らねえのか。ていうかアイスなんか用意してたのか」

「用意したっていうか夏場だから備蓄があるってだけだっつーの。洗い物終わったら風呂入っちまうか?その方が楽だろ」


 面倒なことは後回しにすると余計面倒になると相場が決まっている。どうせ放っておいたら満腹感のまま血糖値スパイクで寝落ちしかねないのだ、動く気力がある時に動いておくべきだろう。若干げっそりとした表情のまま、梅吉は起き上がる。


「だな。誰から入る?」

「適当にじゃんけんで良いだろ……ん、緑どうしたんだ?アホみたいなツラしてっけど」


 梅吉と青仁は至って普通にこれからの流れについて話し合っていたのだが。どうにか復活した緑がポカン、と間抜けな顔で固まっていた。


「……あ、あんたら。今風呂入る順番がどうとか言わなかったか?」

「言ったな」

「なんで、そんな話してんだ?」

「なんでって……」


 一体こいつは何を言っているのだろう、と青仁と顔を見合わせ首を捻る。




「お前一日に一回風呂に入らないタイプの人種?オレ流石にそんなやつ家に泊めたくないんだけど」

「俺らで風呂にぶち込めばよくね?」

「たしかに。流石に二人がかりでかかればなんとかなるだろ」

「よっしゃ任せろ」

「ちょっと待て俺泊まりなんて聞いてねえんだけど?!」




 お泊まり会が現在進行形で敢行されているという事実に、この場で唯一気づいていなかった緑の絶叫が響いた。


「言ってなかったっけ」

「でも親いなくてタコパ開催夜遅くまで可!とか言ったら最早泊まり以外の選択肢ないだろ。緑、お前察し悪くね?」

「そ……うかもしれねえけど!そういうことじゃねえだろ言われてねえんだから察するもクソもねえよ!」

「だからお前やけに荷物の量少なかったのか」


 大丈夫なのかこいつ、と駅で会った段階で思ってはいたがまさかこんなオチとは思わなかった。確かにこれはよろしくないかもしれない。


「あー、言ってなかったオレらが悪いし、着替えはオレが男だった頃のやつ貸すわ。身長ほぼ同じだったから着れるだろ。下着は……流石に新品があるかちょっとわかんねえからコンビニとかで買わなきゃだけど」

「それぐらいは俺らで買いに行くか?」

「だな。追加でおやつ買いた」

「いやなんでさらっと俺が泊まるの前提で話進んでんだよおかしいだろ?!」


 せっかく緑の宿泊準備について考えていたというのに、またもや緑から随分と根本的な抗議が飛んでくる。機嫌が悪いのだろうか。いや梅吉も緑も青仁に散々な目に遭わされたので、特別機嫌が良いということはないだろうけど。


「え、泊まんないの?」

「もしかして緑ってこういうの嫌なタイプ?」


 流石にそこまで露骨に拒絶されると、ちょっと傷つくし寂しいのだが。と、二人揃って少し落ち込んでいたのだが。


「……あのなあ!俺はそういうことを言ってるんじゃないんだよ!俺は!ただ!今のあんたらとお泊まり会的なの開催するのはよろしくないんじゃないかって言ってるだけで!ちょっと鏡見て来いよ色々アウトだろうが!JK二人と野郎一人で一夜を明かすのは!」


 緑は、緑らしからぬ真っ当な社会通念に迎合した理屈を捏ねた。


「そういえばそうだった気がしないでもない」

「誰も風呂入らないならオレ風呂入ってきていい?」

「無視しないでもらえるか???」


 だがしかし、言葉というものは発言者によってその意味と説得力を変えるものである。いくら内容が真っ当に真っ当なものだったとしても、目の前で騒いでいる男は残念ながらその真っ当には含まれないので。


「いやだってさ、そういうこと言うならお前が妹と一つ屋根の下で暮らしてる方が普通に不健全だし危険だろ」

「俺らに緑が手を出すのは太陽が西から昇ってくるレベルでありえないけど、緑が妹に手を出す可能性はそれなりにあるだろ」

「全く否定できないからやめてくれるか?????」


 奴の言葉に、説得力は欠片もなかった。


「だとしても、だとしてもな?世間ってものはおっそろしくてだな?」

「わかるわかる。お前って世間体が無けりゃ速攻妹に襲いかかってそうだもんな」

「それプラス法律と拒絶が無けりゃ襲いかからないっての!あーもう、そういうことじゃなくってだな」

「一般人はまず襲うってところから否定すんだよ!前提の追加から入る時点でお前に言い訳する権利はないっての!」


 世間を語るには、奴は世間に対し無力すぎた。伊達に学年内性癖ヤバさランキング堂々第一を飾った男ではないのである。この手の場面で奴は非常に不利なのだ。

 この手の大騒ぎは人数が多い方が楽しいからな、その辺をアピールしつつこのまま押せば行けるだろう、と梅吉は踏んだのだが。


「……なら、ちょっと考えてみて欲しいんだけど。もし俺が赤山の家に空島と一緒に泊まったってのが木村にバレたら、俺らはどうなると思う?」

「……」

「……」


 緑が切った切り札によって、二人は無事黙らされる羽目になった。


「……緑。洗い物手伝ったら帰っていいぜ」

「よくよく考えたら突然の外泊とかちょっときっついもんな、うん。俺らまだ高校生だし。親が心配するかもだよな」

「手のひら返しの速度だけ一丁前なのやめてくれるか?」


 流石に梅吉も青仁も暴走した一茶なんて相手にしたくないし、それによって緑が瀕死になるのも望んではいない。故に二人は大人しく緑を帰す方向へとシフトして行ったのだ。ただ手のひら返しの速度については緑に言われたくない。そのあたりは皆同類であろう。


 以上の通り一悶着を経た後、三人がかりでたこ焼き器やらなんやらの面倒な洗い物を終え。緑が帰宅する時間になった為、奴が荷物を纏めて玄関へと向かう。その後ろを二人もついて行った。


「駅まで送っていかなくて大丈夫か?」

「大丈夫だって。つか、送ってもらった後、いくら二人いるからって女子高生だけで夜道歩かれる方が怖い」

「……これぐらいなら問題ないと思うけどなー。まあいいや、お前がそう言うなら甘えさせてもらうぜ。じゃあな緑」

「またなー」


 先程の発言に加え、さらりと女子扱いされたことにちょっと複雑な心地になるものの、残念ながら緑の言葉は真実である。素直に受けとっておくべきだろう。

 ……問題は、この後だった。奴は去り際に、なんてことないように緑が爆弾を落として行ったのだから。


「おう。またなー。ああそれと、二人きりだからって、ハメ外して間違い犯すなよー」


 きっと本人は冗談を言ったつもりだったのだろう。が、笑いながら発された、ともすれば茶化すようなそれが、二人を急速に現実へと連れ戻す。




 もしかして今、オレ/俺達は自分好みの美少女と二人っきりで一夜を明かす展開になっているのか?と。




「……」

「……」


 揃って無言で、顔を見合わせる。目の前にいるのは、中身がよく見知った相手であろうと、外見だけなら完璧に美少女である。股ぐらに相棒()が標準搭載の時代だったら、即座に物理的な大事故を起こしていただろうと断言出来る程度には。

 おそらくここで大人しく解散、という選択肢を取れれば良かったのだろう。だが二人にも風前の灯火レベルに壊れかけとはいえプライドはある、なんか負けた気分になるような選択は取れやしない。それに純粋に美少女と一晩二人きりというシチュを堪能したい煩悩と、シンプルにお泊まり会ヤッター!の気持ちもある。


 ……要は、事故らず、相手に悟らせず、何事もなくお泊まり会を完遂すれば良いのだ。


「……とりあえず風呂入ろうぜー」

「そうだなー」


 若干棒読み気味ながらも、平静を装って二人は室内へと戻る。これから何が起きるのか、何も起こさずにいられるだろうかと恐怖と煩悩をまぜこぜにしながら、風呂掃除したっけ、と梅吉は現実逃避に別種の現実に思いを馳せた。


 こうして、梅吉と青仁の長い長い夜は始まったのだった。

2024/11/04追記

11月現在リアルタスクが大変なことになっている関係で、今月分の更新の存在自体が大分怪しくなっています。そして終わり方がこれなので、話の整合性の都合上一段落するまで一気に書く関係で少ない話数で更新、ということにはなりません。その為月末ギリギリに更新になるか、諦めて12月に統合して更新話数を増やすかのどちらかになります。のんびりお待ちください。

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― 新着の感想 ―
wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww 読み終わって直ぐに大森林を作り上げてしまった。 押しっぱなしではなく連打で。 もしもシスコンを泊めることになっていたら百合豚と同じくらいか、それ以…
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