表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
友人がオレ/俺好みの美少女になってたんだが?  作者: 濃支あんこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/130

盛大に揉めてる(当事者談) その3

「にしても空島も珍しく強情だよな。あいつ、普段ならこんな忍耐力ないだろうし。何がそんな引っ掛かってんだろうな?」

「そんなのオレが知りたい……」


 放課後、コンビニに売っていたスポンジ本体と同程度の厚みの生クリームが上にのっている、限定商品らしいロールケーキで懐柔された緑は、生クリームの塊に舌鼓を打ちつつ、適当に感想を述べていた。


 ちなみに、青仁は梅吉が声をかけるまでもなく爆速で消えている。追いかけようとは思ったが、実のところ単純な足の速さでは青仁の方に分がある、なりふり構わず全力疾走をされてしまうと、流石に追いつけないのだ。


「でも、あんたがわかんねえならもう誰にもわかんねえだろ。あんたが一番、空島と仲良いんだから」

「……改めてそう口に出されるの、なんかキショいからやめてくんない?」

「正直俺も自分で言っててキモってなった」

「じゃあ言うなよ」


 こちとらそんなに性根が真っ直ぐではないので、口に出されると否定したくなるのである。というか、その手の機微は大抵緑も似たようなものだろうに。


「もうちょっとなんかこう、ないのか?何かしら見落としてたりとか」

「ある訳ないだろ。もう何回もああだこうだ考えてるってのに」

「それでもさあ、こう、すぽーんって捻り出せたりとか」

「しねえよそんなに現実は都合良くできてねえわ」


 適当なことを言いながら、改めて記憶をひっくり返し、自問自答を繰り返してみる。とはいえ、やはり何十回も繰り返した行為だ、今更大した意味なんてな──


「だよなあ。じゃあ地道に考えるしか」

「……いや、確かあいつさっき『だからこっちは困ってんだよ』って言ってた」


 そうだ、先ほど梅吉が雑に煽ったら、青仁はそう言って途端に黙りこくってしまったのだ。


「困ってる……か。一歩前進、で良いのかそれ」

「わかんねえけど、ないよりマシ。でもあいつが何に困ってるかはさっぱりなんだよなあ」

「うーん、その困ってる発言の前後の話を聞いても良いか?もう少し分析できるかもだろ」

「あー、たしかに」


 言葉は基本的に前後の会話と合わせることで、その意味を大きく変じさせる。説明するならば、そこまで話さなくてはならないだろう、と梅吉は先ほどのやり取りについて大まかに話したのだが。


「……足の生えた折り鶴のセックスのくだり、本当に必要だったか?」

「いやそこはオレ渾身のネタだからさ?そこ抜かしたらもう肉入ってないカレーも同然だから。むしろ一番重要まである」

「カレーの肉ポジションはそんなに安くねえんだよ黙れ」


 何故か、足の生えた折り鶴と足の生えた折り鶴のセックスは不評だった。悔しいので後で一茶のL○NEに一連の動画を送りつけておこうと思う。今頃『チキチキ⭐︎赤点とったらぶっ殺す♡ 補習で部活来れなくなったらほんま許さねえからなマジで勉強会〜in柔道部〜』に軟禁されているだろうから、限界状態すぎて笑いの沸点も良い感じに下がっているだろうし。


「……まあでも、これで空島が『お前とのくだらないやり取りが楽しい』からこそ何かしらに困ってるっぽいことが判明した訳だが」

「明確に言語化されると鳥肌立つからやめてくんない?」

「わかるけど耐えろ。そんなんじゃこんな小っ恥ずかしいこと話してらんないぞ」


 嬉しい気持ちもなくはないが、それ以上に妙にくすぐったい気持ちになるので嫌なのだ。というか、それが判明したところで、結局奴が何に困っているのか、はっきりとしないのだが。


「つか、この様子だとお前が心当たりないだけで、絶対何かしらはあっただろ。もう一回何かこう、イベント的なものがなかったか思い出してみろよ」

「だからお前を二股クソ野郎に仕立て上げてナンパ回避ぐらいしか」

「マジでああいう時だけ息合わせて来るのやめろ。ってかそれ絶対関係ないだろ」

「オレもそう思う」


 一応、青仁の水着が波のプールに攫われるという事件が発生していたりはしたが、そんな美味しいイベントを他人に教えてやるつもりはないので、梅吉はなかったことにした。


「じゃあ最初っから言わなくて良かっただろ……つか、空島の挙動はたしかに意味わかんないけどさ。俺からすればあんたも大分意味わかんないんだけど」

「え、オレ?」


 突然話題に自分が挙げられて、間抜けな声をあげる。梅吉としてはいつも通りのつもりだったのだが。緑から見ると、梅吉に無自覚的な何かがあるらしい。


「いや、あんたなんでかわかんねえけど、やけに弱ってるというか、ヘタれてるだろ。赤山って別に、メンタル弱い方じゃないくせに。むしろ鋼の部類だろ」

「あー……?」


 言われてみれば、確かにその通りかもしれなかった。むしろ何故、今まで気が付いていなかったのだろうと、他人事みたいに思ってしまうぐらいには。


 たかが青仁がよくわからない意地を張っている程度で、ここまで自分が調子を崩していることはひどく不可解なのだ。そんなこと、今までだってあったはずなのに。何故今になってこじれているのだろうか。

 確かによくつるんでいる相手とはいえ、梅吉には青仁以外にも友達が普通にいる。それこそクラスメイトとだって話すし、目の前に緑だっている。寂しいとは思わない、はずなのに。


「……なんでだ?っていうか今お前に言われて初めて気づいたわ、自分で自分が意味わからん」


 とりあえず、今梅吉が言えることは素直な感想だけだった。しかし本当に、我ながら何故ここまで必死に解決を目指して奔走しているのか謎である。放っておいたら青仁のことだし、そのうちなあなあになって、なんか適当に元通りになるだろうから、極論動く必要なんて全くないのに。そう、梅吉は呑気に首をひねっていたのだが。


「あー、そういうことか。うん。ちょっとわかったかも。これ両方似たような状態なのか。マジで面倒臭いな」


 何故か緑は少しだけ、納得したような顔をしていた。


「い、今のでわかったのか?!何が?!」

「いや全部がわかった訳じゃねえよ。ただ、あんたも空島も、それぞれ自分が何考えてんのかわかんねえから、解決策がわかんねえからこうなってるだけなんじゃないのかって。わかったっつーより、予測だ予測」


 緑自身は随分と投げやりに、予防線を張るようにそう語るが。梅吉からすれば、緑の言葉は納得のいくもので、驚くほどすとんと腑に落ちた。

 だって、正体不明の己の感情の機微に振り回されるなんて事象を、性転換病とかいうイカれた病のせいで、何度も何度も二人は体験してきたのだから。


「緑、グッジョブ。確実にそれだ。直接的な原因はやっぱりわかんねえけど、それなら起こってもおかしくねえわ。性転換病って、そういうのに振り回されまくるのが一番ストレスまであるし」


 とりあえずこれでまた一歩、前進することができた。相変わらず解決策はまるで分からないものの、それに繋がりうる事を掴めただけ、またマシである。


「そうか。……改めて聞くと、性転換病って大分悪質な病気だな。体は至って健康です!とか言うけど、心が全然健康じゃないだろそれ。むしろ精神やる方が本体じゃねえの?」

「多分そうだと思う」

「正直そこは普通に否定して欲しかった。大丈夫なのかお前」

「大丈夫じゃないからこうなってるんだよなあ!っていうかお前今初めてオレの事心配してね?マジ?」

「まあそんな細かいことは気にすんなって。それよりも解決法を考えようぜ」

「おい今露骨に話逸らしただろ」


 何も細かくはないのだが。どいつもこいつも、人を案じる心的な物を搭載して欲しいものだ。


「まぁでも正直、解決法つったって、お互い何が原因でそう思ってるのか、素直に話すしかなくないか?どう考えても発生してるの、単なるコミュニケーション不全だし」

「お前バッサリ行ったな……?!まあ、身も蓋もないこと言うとそうだよな。それができないからこうなってんだけど」


 素直に話す。口で言うだけならば簡単だが、絶賛思春期真っ只中、素直にお喋りできないお年頃な二人には中々に難しいものがある。そうでなくても、現状の逃走に全力を注いでいる青仁を捕獲するのは骨が折れる。

 結局堂々巡りじゃないか、と梅吉がやさぐれていると。


「だよなあ。ま、でも場を整えるぐらいは俺にもできると思うぜ?それ以降はあんたが頑張るしかないけど」

「えっ」


 緑がにたりと笑って、解決策を提示した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ