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第一話

都市ランジャハ・郊外の山林地帯にあるゴブリンの棲家


「ハァハァ!もう少しだ!!」


 地中にある、ゴブリンの棲家を一人で駆け抜けているのは、B級冒険者チーム『銅羅』のリーダー、役職 戦士のライド。


「ギギギギッッーーーーー!!!」


 三十匹程のゴブリンがライドを追いかける。

 前方の二十匹は、冒険者から奪ったであろう様々な種類の盾と短剣を装備している。

 後方の十匹は弓を装備しており、絶え間なく放って来る。


 ヒュッ!!!ヒュッッ!!!!!


 矢がライドの太ももを掠る。


「クソッッ!」


 ゴブリンには知性など無く、戦闘力も低い。

 他のモンスターに捕食されるため、群れの規模は最大でも十匹程度にしかならない。

 D級の新米冒険者でも難なく倒せるレベルだ。


 では何故奴らが、百匹を超える大所帯まで成長でき、しかも連携できているのか。

 ゴブリンの変異種が指揮しているのか?しかしそんな物聞いたことがない。


「皆んな聞こえるか!作戦通り死に物狂いで脱出しろ!間違っても応戦するなよ!!!」


「応戦しようにも、この数じゃ無理〜〜〜」


 別の場所を泣きながら一人で走るのは『銅羅』のアーチャー、紅一点のリン。

 少しでも荷物を軽くして走りやすくするように、弓と矢を捨てている。完全に戦意喪失しているようだ。


「戦う必要は無いぜ!俺らは囮なんだからよっっ」


 そう冷静に言い放つのは、『銅羅』の盗賊、カイ。


「その通りであるな、我々は自分の身だけを守ればいいのだな」


 恰幅が良い男は『銅羅』のドルイド、アンドレ。


 各々、道の先に光が見えて来る。出口だ。


「「「「逃げろーーーー!!!」」」」


 四人全員無事脱出するも、防具の損傷が激しく全身傷だらけで満身創痍だ。


「ギギッッ!!!!ギッーーーー!!!!」


 冒険者に続けて、ゴブリン126匹が勢いよく穴から湧き出て来て追って来る。


「ヒェ〜〜〜〜!!!無理無理〜〜〜!!!!!」


 リン、手を大きく突き出し拒否する。


「ジャックさんお願いしまーーーーーーす!!!!」


 ライドが叫んだと共に、乾いた何かが爆発する音が聞こえる。


 バン!!!!


 リンに触れ掛けたゴブリンの眉間が撃ち抜かれる。


 バンバンバンバンバン!!!!!!!!!!!


「始まった!狙撃の邪魔にならないように体を小さく縮めろ!」


 『銅羅』のメンバー全員、膝を抱えて丸まる。


 バンバンバンバンバンバンバン!!!!!!!!!!!


 シーーーーン


 伏せていた顔を上げるとそこにはゴブリン126匹の死骸が転がっていた。


「流石異世界転生者だ、レベルが違う」


 呆気にとられるライド。


「まるで神の所業であるな。我らと同じC級なのが信じられないのだな」


「おいリン、弓と矢はどうした?」


「重くて邪魔だから捨てて来た〜」


「アーチャーの命だろ...」





「大丈夫か?」


 自身の身の丈程の大きな狙撃銃を持って近寄って来るジャック。

 迷彩服を着ており、まるで敵意を剥き出しにした狼の様な風貌をしている。顔じゅう傷だらけで右目は閉じたままだ。

 強面という言葉が彼ほど似合う人間はいないだろう。


「はい!お陰様で大丈夫です!ジャックさんが来てくれなかったら間違いなく全滅していました。銅鑼を代表して感謝申し上げます!」


「ちゃんと報酬を前払いでもらってんだ、当たり前の仕事をしただけさ。おい...傷だらけじゃないか!?この月見草をすり潰して塗れ、痒くなって来たら効いてる証拠だ」


「何から何までありがとうございます!」


「一応、矢に毒が塗られてないか確認しろよ。それより変異種らしき者はいたか?」


「いえ私の所には居ませんでした。どうだカイ?盗賊の気配察知スキルで気づいたか?」


「いや、いなかったぜっっ」


「やはりか、俺の透視スキルでも確認出来なかった。死んだか何処かに去ったのだろう」


「そうですね・・・では後片付けは私達がやりますので、ジャックさんは帰って頂いて構いません。お疲れ様でした!本当にありがとうございました!」


「ありがと、兄貴〜〜〜」


 手を振るリン。


「あぁ、また呼んでくれ。力になるよ」


 手を振り替えして、帰ろうとするジャックをカイが止める。


「ちょっと待ってくれよ!ジャックさん!こんだけデカイ山を片付けたんだ、お祝いにパーッと朝まで飲み明かそうぜ!奢るからよっっ!」


「今日は予定があってな悪いな」


「そう言わずにさ!楽しくや」


 ゴン!!!


 アンドレから言葉を遮られ、拳骨をくらうカイ。


「イッテェ!何すんだよ!アンドレ!」


「ジャックさん困らせて申し訳ないのだな。このバカを無視して帰って欲しいのだな」


「あぁ」


 森林に消えていくジャック。


「別に飲みに誘うぐらい良いだろ〜何で怒るんだよっっ!」


 不貞腐れるカイ。


「カイは知らないのだな。ジャックさんは沢山の孤児を引き取って、この都市で一番大きな孤児院を経営しているのでだな」


「そうだったのかっ・・・」


「で、その孤児達は魔人達との戦争やモンスターの襲撃で親を失って傷を負った子供達でね。ジャックさんは傷が少しでも癒えるように、仕事以外可能な限り子供達のそばに居るんだよ」


「俺悪い事したなっ」


「懐の深い方だ、許してくれるさ」


「兄貴、ウチのギルドに入ってくれれば良いのに〜」


「まだ活動はしてないけど、もう組んでるみたいだよ」


「マジかよっっ」


「ジャックさんより強い二人だって言ってたな」


「まさか〜ありえないよ〜」







都市・ランジャハ  孤児院ローズマリー


 大きなテーブルの上に料理が置いており、それを60人程の子供達が囲んで座っている。


 カチャとドアが開く。


「ただいま」


「パパおかえりなさーい!ご飯食べるの待ってたの一緒に食べよ」


 ジャックの手を引く子供。


「ありがとな、っておい!マルコ怪我してるじゃないか!?」


「このぐらいの傷大丈夫だよパパ」


「いや!感染症を引き起こすかも知れない!一応病院に連れて行こう!」


「子供は怪我してなんぼです。過保護すぎますよ」


 白髪混じりの老婆、スーザンが答える。

 ジャックと二人で孤児院を経営しており、子供達から母親のように慕われている。


「スーザン、今度から即病院だからな」


「はいはい...」


 食卓を囲みながら、楽しく談笑する。


「よし、ご飯食べ終わったら、パパが寝巻きに猫さん縫ってあげるからな」


「やったーー!!!」


 ジャックは夕食を食べながら、思考する。


 私は元の世界では傭兵で戦死した。

 別に悔いは無いし、覚悟は出来ていた。

 が、まさか異世界転生なんぞをやるとは思っても見なかった。

 しかも、どうやらオーソドックスな異世界転生とは違うらしい。普通の異世界転生でも着いて行く自信が無いのにだ。


 我々の行動は全て小説を読め!という日本の投稿型小説サイトにリアルタイムで、掲載されており。それの上位300位から溢れた瞬間、即リタイアになるらしい。


 そして異世界が平和になった時、その時点でランキング300位以内のサバイバーは元の世界で生き返る事が出来るとの事だ。


 とりあえず今はあまり目立たず、愛する子供達の成長を見届けたい。




➖➖ランキング3位・ジャック➖➖


「最強傭兵、戦死後まさかの異世界転生⁉︎強面なのに子供が大好きなので国一番の孤児院を作ります!!!!!!

(小声)母性が溢れ出ているのは皆んなには内緒です。」

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