第84話 交流大使ってなんですか篇2㉘ とある兄妹の終焉
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『今日は約二年ぶりに、あの街からホットな話題です! 復活、十王寺町・異世界商店街〜!』
『え、ちょっと待ってください、ここでその名前が出てくるなんて懐かしいですけど……ということは、まさか……!?』
『そうなんです! なんと十王寺町に新たな交流大使が生まれたんです! こちらの映像を御覧ください!』
『おお、これは……なにかのアイドルのライブ映像ですか?』
『はい、実はこちら、魔法世界出身の少女たちだけを集めて結成されたマクマティカーズというアイドルユニットで、十王寺町の二代目交流大使でもあるんです!』
『そうなんですか! いやあ、初代の交流大使たちもすごかったけど、二代目も可愛いですねえ』
『こちら、簡単なプロフィールを紹介しておきますと、銀色の髪をしているのがエウローラ・エンペドクレスちゃん。そして金色の髪の子がアレスティア・エンペドクレスちゃんです』
『あれ、名字が同じってことは……?』
『ええ、お二人は姉妹ということで、年齢も14歳なんです』
『えっと、でも……あんまり似てない、よね? 本当に姉妹?』
『実はお二人はお父様が同じ、そしてお母様が別々の方ということで……』
『ああ、そういう。さすが異世界ですねえ』
『お二人は地球の文化が大好きとのことで、地球でアイドルになれるなんて夢のようです、とのコメントをいただいてます』
『うーん、それは嬉しくなっちゃいますねえ』
『そしてこちら、獣人種赤猫族のルイス・ヴァレリアちゃん!』
『おお、かつてのメリア・メリオンさんを彷彿とさせる赤毛、そして猫耳!』
『ですが悲しいお知らせが……彼女、なんと異世界難民の方なんです』
『えええッ……それじゃあ彼女、リサ・グレンデルさんみたいな……?』
『詳しいことはわかりませんがその可能性も……ですが、ルイスさんからコメントをいただいています。――私は、異世界の血を引いていますが、自分のことは日本人だと思っています。辛いこともありましたが、地球の方たちにはとてもよくしていただいたので、交流大使を通じて恩返しができればと考えています……とのことです』
『私ルイスちゃん推しに決まりました! なんていい子なんでしょう!』
『新たな交流大使、これからも注目ですね!』
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「仔う李ゅう……TAい、死……」
灯りの消えた室内。
テレビの光だけが、煌々と周囲を照らしている。
一人の人物が、部屋の真ん中にポツンと座っていた。
服装からしておそらく女性。
だがイマイチ判別ができない。
全体のシルエットが歪に歪んでいるからだ。
加えて部屋の中はびしょ濡れだった。
フローリングもカーテンも壁紙も天井も。
まるでバケツで水をひっくり返したようだった。
いや、水ではない。
水よりももっとドロドロの粘液がぶち撒けられている。
粘液は三つのズタ袋から漏れ出しており、今なお止めどなく溢れ出ていた。
『今回のマクマティカーズの仕掛け人はなんとこのヒト、カーミラ・カーネーションさんなのです!』
『――ッ!?』
画面に一人の女性が写った瞬間、歪な人影が強く反応した。
かじりつくようにテレビに近づく。
『ライブの最後に、カーミラさんは異世界へのカーネーション進出を発表しました。それを受けて翌日のカーネーション関連株価は急上昇。海外の投資家もこれを好感し、一時ストップ高となって――』
「化ーねー処ん、可ぁーMi羅」
歪な人影が、歪な声を出す。
ヒトがしゃべっているとはとても思えないガラガラの濁声だった。
『なるほど、いやしかしまさか、カーミラさんがアイドルのプロデュースをするだなんて、多彩な方ですねえ。会社の仕事もして、学生もして、さらにアイドルまで作ってしまうだなんて』
『番組では、新たな交流大使発足ということで、再び十王寺町にスポットを当てるコーナーをやっていきたいと思います。マクマティカーズにこんな質問をして欲しいなど、番組公式SNSなどにお寄せください――』
再び画面はマクマティカーズたちのライブ映像が流される。
そこに映る銀髪、金髪、赤髪の美少女たちを見つめ、歪な人型は口を開けた。
乱杭歯が生えたヒトとも獣とも言えない口だった。
ガジン、とテレビ画面が削り取られる。
バヂヂッ! っと火花を上げながら破壊されるテレビ。
あむあむ、と口を動かしていた人影は、ペッと液晶画面の欠片を吐き出す。
「お奈か……へっ田ぁ」
床に座り込んでいた人影は後ろを振り返る。
そこには、食い荒らされた三人分の遺体があった。
タカシ、レンタ、コウジ……。
年の離れた妹を可愛がり、立派に育てた兄たち――その変わり果てた姿だった。




