表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/339

第73話 交流大使ってなんですか篇2⑰ アマァーカス家の兄妹たちと

 *



「おかえりー、アリスさん!」


「スノウもおかえりー!」


 玄関を開けた途端、同じ顔の子供が二人、出迎えてくれて、私はそれだけで面食らってしまった。


「あれー?」


「お客さん?」


 私が固まっていると、双子の男の子と女の子が不思議そうな顔をする。アリスさんは私の背中を肩で押しながら「どうぞ、上がってください」と言う。アリスさんはスノウちゃんを抱っこしているため、私が鍵を預かって玄関を開けたのだった。


「はい、スノウちゃん、お家につきましたよ」


「……ぐすッ」


 可哀想に。

 小さなスノウちゃんにあの光景はトラウマものだろう。


 例え言葉の意味はわからなくても、ヒトの悪意は幼子にも伝わるものだ。

 だというのに――


「あーあ、またスノウがベソかいてる」


「まさかずっとアリスさんに抱っこされながら帰ってきたのか?」


 この子たちがスノウちゃんの兄姉だということはわかる。

 何故ならこの子たちの頭の両サイドにも、羊角が生えているからだ。


 え、それなのにこの子たち、小さな妹のスノウちゃんに何を言ってるの。

 スノウちゃんが泣き出した理由を考えれば気遣うのが普通なのに。

 それなのにこんな――


「むう……スノウ泣いてないもん!」


「ホントかあ?」


「ホントかなあ?」


 双子のお兄さんとお姉さんがしゃがみ込み、スノウちゃんに目線を合わせながらニヤニヤと挑発する。床に降り立ったスノウちゃんは、ダンダンっとヒステリックに足踏みした。


「ホントだもん! 泣いてないもん!」


「あはは、スノウ怒った!」


「スノウ、ほら鼻が出てるからチーンしよ」


「チーンするもん!」


「鼻をかむのになんで怒るんだよ」


「むーッ!」


「いたッ、叩くなよ、悪かったって」


 双子のお姉ちゃんに手を引かれ、双子のお兄ちゃんを叩きながら、スノウちゃんは家の奥に行ってしまった。


 私はポカーンとしていた。

 スノウちゃん、絶対トラウマになってると思ったのに、意外と平気そう……いや、平気になったのか。お兄ちゃんとお姉ちゃんのおかげで。


「さすがですね」


「え、あ、はい……」


 アリスさんは脱いだ靴を揃えると、玄関の端っこに並べる。

 そのまましゃがみ込んだまま「ん?」みたいな顔でこちらを見上げてくる。

 あ、私も靴を脱いで上がれってことね。


「あ、ありがとうございます……」


「……いえ。他人の家の兄妹を見るのは初めてですか?」


「え、ええ……そう、ですね」


 言うのも自慢みたいで嫌だが、我がエンペドクレス家は王族だ。

 かしずかれることばかりで、同年代の友人なんて出来たことがない。


 私の遊び相手といえば、もっぱらアレスちゃん……あるいはアウラ姉さん、アレスティア姉さんで、あとはピピやルル、ペットの飛竜(ワイバーン)やメイドたちくらいだった。


「私もです。こちらのアマァーカスさんの家にいると、普通の家族や兄妹はこんな感じなのかと驚きばかりです」


 そうだ。アリスさんも元は貴族のお姫様。

 私ととてもよく似た境遇にあるはずだった。


「さ、リビングに行きましょう」


 アリスさんは私の手を引いて、廊下の奥。

 一際大きな声がするリビングへと導いた。

 ドアを開けると――


「ちょっとー、宿題でタブレット使うんだから早く返しなさいよー!」


「待って、あと少しだけ! このステージクリアしたら終わりにするから!」


「あ、お尻拭きがもうない!」


「予備が戸棚にあるでしょ! 私手が離せないから。ねー、織人くん」


「ぎゃーッ!」


 一番身体の大きい女の子が、タブレットでゲームをする同い年くらいの男の子の視界を手で塞いで邪魔をし、私と同い年くらいの男の子が、乳幼児のおしめを替えている。それをこれまた同い年くらいの女の子――アリスさんの息子である織人くんを抱いた――が、細々と指示をしながらこき使っている。そしておしめを替えられている赤ちゃんはギャン泣きをして……もうカオスな状態だった。


「あ、アリスさん、おかえり――えッ!?」


 タブレットゲームをしていた男の子が、私を見た瞬間固まった。彼を邪魔していた女の子が「何だこいつ?」と、彼の眼前で手をひらひらさせる。それでも彼は私を見つめたまま無反応だった。


「皆さんに紹介しますね、こちらはエウローラ・エンペドクレス様です。私が今お使えしてる主人の妹さんになります」


「あ、あの、初めまして――」


「エンペドクレスッ!?」


 一番年長と思わしき女の子が真っ先に反応する。

 固まっていた男の子も驚愕の表情で私を見ている。


 おしめを替えていた子も、織人くんを抱いていた子も、双子の二人も同様である。

 ポカンとしているのはスノウちゃんくらいで、あとは相変わらず赤ちゃんが泣いていた。


「今日から暫くの間、エウローラ様はこちらでお世話になりますので、皆さんよろしくお願いしますね」


「えッ!?」


 驚きの声を発したのは私だ。

 ここでお世話になる?

 そんなの聞いてないんですけど……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ