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第44話 交流大使ってなんですか篇⑤ 嵐の前の朝食会

 *



「それでは、いただきます」


 ――いただきます。


 我が家の食事は俺の掛け声から始まる。

 今日は日曜日。それでも我が家には朝早くからアリスさんが来てくれて、美味しい朝食を作ってくれる。


 本日はほうれん草の胡麻和えに納豆、そしてホカホカご飯に味噌汁、さらにはハムエッグでござい。


 しかもアリスさんは俺がローファットダイエットをしていると知って、一人だけ低脂質なメニューにしてくれている。


 胡麻和えは減塩出汁をかけたほうれん草のおひたしに、ハムエッグはハムなし、卵黄なし、白身多めにしてくれている。なんて出来たメイドさんなんだろう。


 ちなみに余った俺の分の卵黄は瑠依のハムエッグの上に乗っている。「はわわ、なんて豪華なハムエッグ!」と瑠依はヨダレを垂らしていた。


「うえー、こ、これなにっ!?」


「く、臭い、臭いよこれっ!」


 おお、早速と言うかなんというか。

 異世界妹二人が和食の洗礼を受けていた。


「なんなのこのネバネバ! ありえない!」


「酷い匂いなんですけど、食べ物なんですか!?」


 アレスティアとエウローラだった。

 意外なことに、地球通な二人でも納豆初体験だったらしい。


 どうやら地球での生活に慣れてもらうため、今までアリスさんは優しめの和食にしていたようだ。これからは少しずつ、独特な食材を増やしていくようである。


 ちなみに昨日の朝飯はくさやだった。

 大ぶりで脂の乗ったその身は絶品。ローファットの俺でも美味しく食べられた。

 当然、アレスティアとエウローラには不評だったが。


「食べ物だよ、決まってるでしょ! 納豆は美味しいんだよ!」


 こちらは瑠依である。

 さすが、産湯を地球で浸かった異世界難民。


 瑠依は本当に生まれたての頃、地球に転移してしまったため、中身はほとんど地球人である。それ故に納豆もくさやも全然平気らしい。


「そうです、これを通らずして日本食は語れません。毛嫌いせずお食べなさい」


 こちらは愛理である。

 日曜の朝からどうして彼女がいるのかというと……ほとんど毎日荘厳荘に入り浸っているからだ。


 昼間は給食が出るからいいとして、朝と晩は必ず荘厳荘で食べていく。

 どうやらベゴニア経由でアリスさんに愛理の分の食事も面倒見るようお願いされているようである。


 ちなみに、今俺たちが座っているのは六人がけの広々としたテーブルだ。

 奥側には綺麗なシステムキッチン――セラミックトップ製で、二台のIHコンロと、大鍋用の強火力ガスコンロがあり、さらにはオーブンレンジに自動食器洗い機、大容量収納まで完備した、奥様垂涎の超豪華仕様となっている。


「主人が私のために作ってくれたんです」


 そう嬉しそうに話すのはアリスさんだ。

 旦那さんが元々のアパートを建て替えるとき、特にこだわった点が3つ。

 そのうちの一つがこのキッチンなのだという。


 アリスさんは元々は異世界出身の貴族のお姫様(!)で、料理などしたことがなかったそうだ。だが、旦那さんや家族のために一生懸命料理を覚えていくうちに、料理を作ることの楽しさにハマり、今ではプロ級の腕前を身に着けてしまった。


 そんなアリスさんがもっと料理が楽しくなるようにと、このキッチンを作ってくれたのだという。いい話だ。


「キッチン以外にはどんなところにこだわったんです?」


「それは……その、お風呂と寝室です」


 アリスさんは顔を赤らめながら俯き、消え入りそうな声で言った。


 お風呂は……確かに。

 一切まったく不満はないのだが、正直言ってやりすぎではないかと思う。


 個人宅に、突如として旅館並みの大浴場があるのだ。この家は。

 一階のスペースの約1/3を占めるお風呂は、シャワーブースにカランスペースがずらりと並び、そして足を伸ばして……どころか泳ぐことさえ可能な大きな湯船が存在する。


 月々の水道代とガス代がとんでもないことになりそう……などという心配は無用。実はその風呂には地球初となる最先端の魔法技術が使われているからだ。


「間違いないわ。ここのお風呂には魔法芸術家アマァーカス・シェロウの技術が使われてる」


 アレスティアが言うには、そのアマァーカス氏は異世界の芸術分野に革命を起こした偉人なのだそうだ。


 多くの弟子を育て、異世界の芸術分野を一人で50年分とも100年分とも言われるほど発展させ、多くの貴族や列強氏族たちにファンを持つという。


 そんな彼の描く絵画には精霊が宿ると言われている。

 ものの例えではなく、水をイメージした絵画には本当に水の魔素が宿り、風をイメージした絵画には風の魔素が宿るのだという。


「え、それじゃあ、風呂にある壁画って――!?」


 俺は驚愕した。

 荘厳荘の風呂――大きな湯船が面する壁には、大きな絵が描かれている。


 それはどこかの海岸の絵であり、海辺には風に髪を遊ばせる褐色に銀髪の少女と、金髪の少女が小さく描かれている。


 俺はてっきり、銭湯にある富士山の絵のようなものだと思っていた。

 だがそんなすごいヒトの芸術作品だったとは……。


「間違いなくアマァーカスの絵ね」


「ちなみに描かれているのは私たちのお姉ちゃんです」


 エウローラが言う姉たちというのは、彼女たちの母親の実の子――のことではない。


 風の精霊魔法使いであるエアリスと、水の精霊魔法使いであるセーレスが具現化させることに成功した、異世界の歴史上でも初となる風の精霊と水の精霊の化身――それがアウラとセレスティアなのだという。


「精霊獣であるルルやピピのもっとすごいバージョンって言えばわかる?」


「私たちの世界の四大精霊信仰では、ヒトは元々神を模して作られたと言われていて、精霊神はヒトの形をしているとされています。なのでお姉ちゃんたちは現代に現れた神様そのものなんです」


 ちなみにこれが写真です、とエウローラがスマホを見せてくれる。

 そこに写っていたのは4〜5歳くらいの女の子を抱いた褐色のとんでも美女だった。


 銀髪のロングヘアに褐色の肌。

 月の光を閉じ込めたような瞳に口元には優しげな笑み。


「私の母のエアリスです。で、抱いてるのが精霊のアウラお姉ちゃんですね」


 浅葱色の髪をツインテールにした褐色の女の子が眠たそうに目をこすっている。

 まるで母親の腕の中こそが安寧のゆりかごであるように、眠気に襲われているようだ。


「こっちは私のお母様のセーレス。で、セレスティア姉様」


 アレスティアのスマホには金髪をショートヘアをした見た目だけなら中学生くらいの超美少女が、これまた幼い金髪の超美少女――5歳くらいを抱いている。どちらもすごく元気な笑顔を浮かべている。


 エアリスさんとセーレスさん。

 まるで対極のようなふたりだ、と俺は思った。


 エアリスさんの笑顔は闇夜に浮かぶ月のような静かな光を湛え、見るもの全てを癒すような優しい波動を放っている。


 対するセーレスさんは太陽のような輝きと元気に満ち溢れ、見るもの全てに活力を与えるような――そんな女性だと思った。


「…………」


「兄さん?」


「どうしたのよ、黙っちゃって」


 いや、なんていうか、お前たちを前にこんなこと言うのはすごく失礼かもしれないのだが……。


「エウローラって、将来こうなるのか……?」


 写っていたエアリスさん――エウローラの母親は…………メチャクチャ俺の好みだった。THE大人の女性と言った感じで、慈愛と母性に満ちた表情がとってもとっても魅力的だ。


 俺の一言にキョトンとしたエウローラは、次の瞬間ニンマリとした笑みを浮かべ、対してアレスティアは「ムッ」とした顔になった。


「うふふ。そうですよ、私はお母さんにそっくりって言われてますので、あと20年も経ったらきっと兄さん好みの女になっちゃいますよ。あはっ、今からキープしておきますか? 私は構いませんよ」


 エウローラは自分が褒められたわけでもないのに実に嬉しそうだった。

 いや、普通同年代の男子に母親が綺麗と言われて喜ぶ女の子はいないだろうに。


「そんなことありません。お母さんがキレイなのは自他共に認めるところですから。将来の自分自身が褒められているみたいでとっても嬉しいですよ」


 エウローラはそう言いながらウィンクをしてきた。

 うわ、実に可愛らしい仕草だな。しかも褐色の肌に薄っすらと赤みが差していて、自分でやってて照れてるのがまた可愛い……。


「ちょっと待ちなさいよタケオ。この写真を見てもまだ同じことが言える?」


「うん? なっ――こ、これはっ!?」


 アレスティアが見せてきたスマホの画面に俺は釘付けになった。

 そこに写っていたのはハイパーユニバース級の金髪美女だったからだ。


 こ、このスタイル、えげつなさすぎる!

 零れ落ちそうなほどのバストなのにハリを維持していて、しかも腰のクビレ方が半端ではない。


 俺の頭の中には、カーネーションで専属契約をしているトップモデル達の顔と身体データが入ってはいるが、間違いなくナンバーワンと言えるだろう。


「あー、ずるいアレスちゃん、大っきいバージョンのセレスティア姉さんは反則だよ!」


 大きいバージョン? どういうことなのか。

 聞いてみると、セーレスお母さんはエルフの血を引いているので、見た目は子供のままだが、年齢はもう80歳近いという。


 そしてセレスティア姉さんはセーレスさんの年齢の分だけ大人の姿になることが可能なんだとか。


 どんな理屈でそれができるのか、到底科学では説明できないが、精霊魔法使いと精霊の間でのみ可能な奇跡なのだという。


「私はお母様よりお姉様の方に成長具合が似ているの。どこの成長かは言わなくてもわかるでしょ?」


 アレスティアは前かがみになりながら、グッと両手を胸の前で組んだ。

 彼女の同年代に比べて大きめのバストがモニュんと強調された。


「はしたないよアレスちゃん!」


「ふん、悔しかったらあんたも同じことしてみなさいよ」


「で、できるもん!」


 モニュん、スル、モニュん、スル……。

 エウローラは涙目になった。


 いやしかし、エウローラにしろアレスティアにしろ、将来はとんでもない美人になることが約束された女の子たちだっていうことがわかった。


 こんな子たちと俺って許嫁同士なんだなあ。

 いや、もちろん俺は妹と結婚なんてするつもりはないが。


 でももしその事実がバレたりしたら、俺って学校中の男子から袋叩きにされてしまうだろう……。

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