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第31話 異世界シスターズ篇⑧ あれ、アレスティアが可愛いぞ……?

 *



「アレスティアー、入るぞー」


 コンコンとノックし、ドアを開ける。

 するとそこは、なんとも女の子らしい部屋が広がっていた。


 オシャレなデスクにサイドチェスト。

 部屋の隅には大きな観葉植物。

 壁紙に合わせた水色のカーテンがなんとも爽やかだった。


「入ってくるなスケベ!」


 ボフっと枕が投げられる。

 だが本気で嫌がっている投げ方ではない。

 俺は難なく受け止め、ベッドにうつ伏せになっているアレスティアに近づいた。


「いや、先程は申し訳なかった。とっさにお前を受け止めようとしたんだよ」


「ふん、どうだか。本当はわざと触ったんでしょ」


「いや、それはない。信じてくれ」


 俺が枕を差し出すと、ジロっと睨んだアレスティアは、奪うように引ったくった。

 そしてそれを抱きしめ、再びうつ伏せになる。


 ちなみに今の彼女は食事中と同じく部屋着姿だ。

 グリーンと白のストライプ柄のタンクトップに、同じくグリーンのパンツを着用している。


 部屋のフローリングの上にはカーペットが敷いてあって、アレスティアはスリッパなどは履かない。制服のときはだいたい靴下か、それ以外のときは素足である。


 故に彼女は今素足だった。

 うつ伏せに枕を抱いたまま、何故かせわしなく脚の指が動いている。

 ギューっとつま先で拳を作ったかと思いきや、パッと開いて、でもモゾモゾ動かしたあと、再びギューっとしていて落ち着きがない。


 それにしても……。こいつ、男が部屋に入ってきたというのに、ちょっと無防備すぎやしないか。


 そう、俺はお兄ちゃんだからそんな気持ちにはならないが、例えば普通の男だったらこの姿を見てどう思うだろうか。


 ちょっとそのパンツ、タイトじゃありませんか?

 パンティラインが透けていましてよ?

 意外とお尻大きいのねキミ。


 あとそのタンクトップ、背中が半分くらい丸見えじゃないですか。

 シミひとつ、ほくろ一つない真っ白いお肌で羨ましい。


 それにつけても脇ですよ脇。

 タンクトップだからざっくり胸の近くまで見えてましてよ。


 以上の点を曝け出しているアレスティアは無防備だという他ない

 証明終わり。俺が兄でよかったなお前……。


 さて。

 俺は、立っているのもなんなので、ベッドの脇に腰を下ろした。

 途端、アレスティアが慌てて抗議してきた。


「な、なんで座るのよ!」


「え、いや……ほら、お前の大事なものを持ってきたんだよ」


 そう言ってルルを差し出す。

 ルルは一度俺を振り向いたあと、シュルルっとベッドに降り、アレスティアの首に巻き付いた。


「るる……」


「うん、別に怒ってないわよ……」


「るー……」


「だから違う、嬉しくなんてないんだから」


「るるる……」


「うん、そういうこと」


 いや、どういうことだよ。

 お兄ちゃんを仲間外れにして精霊様とお話しないでほしい。


「で、あんたはいつまでそこでボーッとしてるわけ?」


「うん、アレスティア、俺と――」


「わかった、言いたいことはわかったから!」


 言わせないよ、とばかりに、アレスティアはベッドの上で怒鳴った。

 両腕を俺に突き出し、パタパタっとせわしなく振り回している。


「じゃあオーケーなんだな?」


「う……まあ、別に、どうしてもあんたがしたいっていうなら、その、してあげなくもないけど、その……」


 デート……と蚊の鳴くような声で言った。


「ああ、したい。俺は絶対アレスティアとデートをする」


「うう……」


 アレスティアは横になったまま手足を縮め、赤ちゃんみたいに丸くなった。

 再び枕を抱き寄せ、顔を埋め、でも半分だけ出し、俺を見つめてくる。


 しばしの沈黙。

 だがアレスティアは「わかった」と囁くように言った。


「そっか。よかった」


 俺はホッと胸をなでおろす。

 これで第一条件がクリアされたからだ。


「で、でもどうして急に……?」


 枕から半分顔を出し、アレスティアが聞いてくる。

 俺は迷うこと無く言い放った。


「お前とどうしても二人きりの時間が欲しかったからだ」


「――ッ!?」


 ギュウっと枕が締め付けられる。

 アレスティアは何かを堪えるように枕に顔を埋め、足をパタパタさせた。


「じゃあ、詳細はメールする。あと、下に降りてご飯食べちゃいな。アリスさん怒ると怖いぞ」


「わ、わかった」


 くぐもった声だった。

 枕から顔を上げる気はないらしい。


「じゃあな」


「あ、ちょっと待って!」


 俺が立ち上がり、背を向けると、性急に呼び止められた。

 振り返るとアレスティアもベッドから身を起こしていた。


「デ、デートはしてあげる。でもいっこ条件があるの」


「なんだ?」


「エウローラともデートしてあげて」


「いいのか?」


 普通他の女とデートはしないで、じゃないのかこういう場合は。


「私たちは姉妹だから。条件が一緒じゃないと不公平でしょ」


 不公平とは俺と結婚する云々の話か。

 つまり姉妹でえこひいきは無しにして、フェアでいたいという意味か。


「わかった」


「あとはまあ、私とエウローラの後なら愛理と瑠依ともデートしていいわよ」


「なんでその二人が出てくる?」


「…………」


 アレスティアはギョッとしたあと、俺をマジマジと見てきた。

 言外に「本気?」と言われているみたいだった。


「はあ、まあいいわ」


 ため息を一つ、アレスティアは俺の脇を通って部屋の外に出ていく。

 どうやら夕飯の残りを片付けに行ったようだ。


 俺もその後を追いながら、決意を新たにする。

 アレスティア……お前に本当の俺を見せてやるぜ、と。

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