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第103話 ライバルと嫉妬と初恋篇⑬ 異世界難民救出に従事する現代の聖女

 *



「ほう……ここが噂の荘厳荘か。かなり古い建物だと聞いていたが、そうでもないようだな」


「そうね、手狭だけどかなり綺麗な感じだわ」


 夕方。私たちはようやく荘厳荘へと帰還していた。


 私は――お父さんとお母さんに熱烈なハグをされ、剣道場で気を失ってしまった。

 間もなく目覚めたのだが、すっかり肋を痛めてしまっていた。


 すぐにアレスティアちゃんが簡易治癒魔法をかけてくれたおかげで事なきを得たが、お父さんとお母さんはエウローラちゃんにきっちりお叱りを受けていた。


 さすが、異世界に於いては絶対の知名度と尊敬を(ほしいまま)にする精霊魔法使い……の卵である。でもどちらかというと、エウローラちゃんの肩に留まったピピに平伏しているように見えたが……。


「まあまあ、ようこそいらっしゃいました。この荘厳荘でメイドをしております、衣笠アリスと申します」


「――ああッ!?」


 キッチンからやってきたアリスさんが、玄関まで私たちを出迎えてくれる。

 そこで私は大声で驚いてしまった。衣笠アリス。衣笠って――


「やほー、ただいまアリス」


「はい、芽依さんもおかえりなさい」


 そうだ。衣笠アリスさんと衣笠芽依さん。

 最初芽依さんの名字を聞いたとき、どこかで聞いた覚えがあったのはこれだったのだ。


「アリス、今日はね、もうひとり特別ゲストがいるのよ」


「まあ、どなたでしょうか?」


「じゃーん、入ってきて」


「もう、芽依姉さんったら、勿体つけすぎですよ」


「まあ、リサさん! お久しぶりですね!」


「アリス姉様もお元気そうですね」


 私たちはいつの間にか大所帯になっていた。

 私こと瑠依と、お父さんであるタキオンとお母さんのエルダ。


 そしてタケオくんとアレスティアちゃんとエウローラちゃん。

 芽依さんにキールさん、そしてなんとあの(・・)リサさんだった。


 リサさんはあの異世界難民で有名なリサ・グレンデルさんで、現在世界各地で公演をしながら、異世界難民の捜索活動に従事しているため、現代に現れた本物の『聖女』と言われているヒトだ。


 地球転移後の彼女の半生を綴ったエッセイは大ベストセラーとなり、地獄のような過去を乗り越え、幸せを掴んだ壮大なストーリーは、涙なしでは語れない。


 なので、私が気絶したあと道場内にリサさんが姿を現したときは、大変な騒ぎになったそうだ。



 *



「ルイス、しっかりしろルイス! 傷は浅いぞ!」


「ルイスー! ノル! ドゥナダッ!」


 父と母、しかも両方とも武家の出とあって、そんな二人から熱烈な抱擁をされたルイスは、完全に白目を剥いてた。


 ようやく再会できた愛娘を揺さぶっているヴァレリア夫妻と、その傍らでオタオタするキールと……。


 神橋・浦賀高等学校女子剣道部道場内は、混乱の極みに達しようとしていた。

 だがそこに、追い打ちをかけるように一人の美少女が降り立つ。


「大変! ダメです、そんなに激しく揺さぶってはいけません!」


 入り口から新たな獣人種が登場したのだ。

 濃い、まるで群青の空のような髪色。

 青い体毛に包まれた大きな猫耳。

 獣人種青猫族の特徴だった。


 慌てた様子ながらも、道場に入る際に一礼するあたり、真面目な性格が垣間見える。


「いけません、完全に気を失っています。どなたかお医者様はいらっしゃいませんか!?」


 状況についていけず、誰もが混乱する中、冷静な判断力を持った紛うことなき美少女。しかも猫耳も愛らしく、それでいてどこか儚げな雰囲気を醸し出している。


 その美少女こそ、日本人では知らないものはいない超有名人。

 おそらく、地球に転移してきた異世界人の中で、最も過酷で数奇な運命をたどったものであり、その果てに大きな幸せを手に入れた。つまりは――


「あ、あああ……! リサ・グレンデルさんだ!」


 一人の女子剣道部員が叫んだ。

 そして次々と「リサさんだ!」「うわ、本物!?」「うそでしょッ!」と悲鳴が上がった。


「あ、あの……私治癒魔法が使えるので……」


「よかった、ぜひお願いします。肋を痛めているようですので、そこを重点的に――」


「リサさん! ファンなんです! 握手してください!」


「わ、私はサインを!」


「お写真いいですか!?」


「エッセイ、買って読みました!」


「母と一緒に読んでもうボロ泣きで……!」


「今度の映画も絶対見に行きます!」


 リサは女子部員たちに取り囲まれ、その勢いに目を見開くも、いつもテレビに出ているときと同じ温和な笑みを浮かべると「ありがとうございます」と頭を下げた。それだけで女子部員たちは「はあああん!」と歓喜の嬌声を上げた。


「すみません、あとはお願いします」


 リサはアレスティアにそう言い残すと、スッと立ち上がり、女子たちを誘導するように離れていく。どうやら自分が居ては治療の邪魔になる……と判断したようだ。


 その後、道場内ではリサのサイン&写真撮影イベントと、母エルダに膝枕されながら、アレスティアの治療を受ける瑠依という、傍から見たら「なんじゃこのカオス?」という状況になったという。




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