51 砂漠にて、潮騒
「んでもって、僕ァここで足止めってわけですよ」
たまったもんじゃないですよねー、と両のハサミを振り回して、カラッパは息を巻いた。
なんでも話によると、ここから少し先に行くとオアシスがあり、悪魔達の格好の休み場となっているのだが、そこを蛇の悪魔とやらが占拠しているらしい。
近づく者に見境なく襲いかかってくる上に、どうも装甲貫通の攻撃をしてくるらしく、防御特価のカラッパさんはオアシスに近づけなくて困っているようだ。
「別に水飲まなくても行けるけどさぁ····、やっぱり気持ちって大事じゃん?」
トロトロとした口調で何か言っているカラッパを横目に、兄弟に耳打ちする。
「蛇の悪魔って知ってたりする?」
「あー、蛇系は結構種類が多いんだよな。でも、上位世界が近いここで、そこまで大きな顔するとなると·····」
「名のあるヤツの子供説とか?」
「有り得る。上位世界の有力者で蛇というと《輪輪蛇》辺りか·····」
「勇気凛々みたいな名前だな」
とはいえ、カラッパの言うことにも一理ある。
悪魔は食事や給水を必ずしも必要としないが、喉の渇きはうっすらとあるし、食事をとると体の調子も良くなる。パフォーマンスに影響するというやつだ。
「はぁー、悪魔海方面から慣れない砂漠を長々と歩いてきて、せっかくここまで来たって言うのにー·····誰か蛇の悪魔を追い払ってくれないかなぁー、チラッチラッ。」
これみよがしに呟くカラッパ。長い棒状の目をひょこひょこ動かしているのがかなり腹が立つ。
「ちょまって!行かないで!助けて下さいお願いしますー」
「「·····」」
なんと惨めなナマコだろうか。
デカイのは図体だけらしい。
「いや、ナマコじゃなくてカラッp·····」
「お前などナマコで充分だ。」
毅然とした態度の兄弟(ナマコを知らない)にピシャリと言われて、ナマコへと転職したカラッパが少し落ち込む。
「僕だってねェ、一応戦いはしたんですよ?でもォ·····」
うじうじとハサミをこねくり回すナマコ。このままでは「もう疲れちゃって、動けなくてェ」とか言い出しかねない。
·····どうやら協力するしかないようだ。
◇◇◇
「あれか·····」
ナマコの背に乗って三千里。
俺達はオアシスに生える複数のヤシの木(推定)を目視できる距離に来た。
ナマコに協力してやろうと思ったのに、特に大きな理由はない。正直なところ、その蛇の悪魔とやらがとんでもなく強い奴なら逃走も視野に入れている。
だが、なんなんだろうか。
ロウワー大森林の彼らが、どうにもチラつくのだ。
旅は道連れと言うやつだろうか。俺も甘くなったものだ。卵の頃ならば、このナマコも問答無用で経験値にしようとしたはずだ。
「情熱の希薄かねぇ·····」
「ん?どうした兄弟」
「いや、なんとも運のいいナマコだと思ってな。命拾いしたな。」
「ナマココラ、良かったなコラ」
「この虫兄弟に頼って良かったのだろうか·····」
いまさら遅せぇよ。オアシスは目前だ。




