48 突入、熱砂爆
「·····なんか暑くね?」
丸三日程走って大森林を抜け出したあと、そこから更に三日、俺と兄弟は再び何も無い荒野を進んでいた。
景色に別段変わった所はない。
相も変わらず真っ黒な太陽と、所々に赤茶けた草の生えた荒野だ····。
だがただ一つある違和感は·····
「あちぃってやっぱ」
なんかちょっと暑い。
暑すぎるって訳じゃないけど、なんか嫌に暑い。
しかもだんだん暑くなってる。
「そりゃ暑いだろ、熱砂爆が近ずいてんだから」
「?なんだそれ」
「砂漠だよ。それも上位世界に繋がってるほどクソでかい」
·····かつてこの地には、超巨大な悪魔がいたらしい。しかし、その山をも軽く跨ぐようなその悪魔も他の悪魔との闘争に敗れ、死んだ。
その巨大な死骸は何百年もかけて腐り、莫大な熱を発し続けた。その地の奥深くには、悪魔の死骸から流れ出た体液が地脈となり、渦を巻く。
そして今もなお、その頃の熱が残り続け、砂漠地帯を形成した·····。地下から魔力が湧き出るので、生息する悪魔も多い危険地帯だ。
「ここを抜ければ上位世界か·····」
「まぁそう言えばそうだが、この砂漠はお前の思ってる十倍はでかい」
「そう言われてもなぁ」
「まぁ進めばわかるさ」
◇◇◇
さらに走り続けて一週間───、
「これか·····」
ついに俺たち二人の前方に、巨大な砂漠が姿を現した。
黄色と赤の混じった砂の地面が、地平線まで続いている。一枚の壮大な絵のような景色が、黒い太陽の熱気に揺れる。
ぼやける陽炎に包まれた世界をしばし無言で眺めた後、俺は口を開いた。
「別の道行かね?」
「ダメです。」
いやだよ、これ。溶けるじゃんどう見ても。
お前は大丈夫なの?····逆に?
「本能が叫んでんだよ·····。〝こっちへ来い〟って」
「まぁそうだけどさ」
ブラザーの言う通り、道を一歩進むごとに悪魔の本能は強まっている。どうしようもなく、この砂漠を超えて行きたい。·····上位世界へ!
「行くぞ」
しょうがねぇか·····。
到着前から暑くて溶けそうだけど···、《熱砂漠》突入だ!!
◇◇◇
「あっっっっつ!!」
クソあちぃじゃねぇかよ!!ふざけんな!
案の定と言うかなんというか、ブラザーもなんかへなへなになってきてる。·····ふやけてない、君?
「大丈夫大丈夫·····なんか、すっごいいい気分なんだぁ」
「ぉぉお!?おいおいおいブラザー!?」
死ぬぞ!?死んじまうぞ!?こんな所で死ぬなよ!?
「あれ···?何で砂漠にお花畑が??」
だめだ·····手遅れだ·····。
「まぁ冗談だ」
「ふざけんな」
蜘蛛の柔らかい腹の部分に、サソリの尖った足を突き刺しながら、辺りを見回す。
····まだ入って数時間なので、当然といえば当然だが、景色は先程から1ミリも変わっていない。
「まさに〝砂の海〟·····って訳か」
「ぁの、足、退けてくんない?ねぇ」
しかしここに来て気温が上がるとは·····。
今までの移動ルートでは、だんだん涼しくなっていた感じがしていたのだが·····。
大森林で集めた情報によると、悪魔界は巨大な円形をしているらしい。中心部分が上位世界で、その周りを下位世界が広がっている。
端は断崖絶壁で、ただひたすらに闇が広がっているらしい。
·····なんとも不思議な世界だ。
「ちょ、体重かけんなし!破ける、腹が破ける!」
世界の神秘に思考を巡らせていた俺は、砂漠の前方に何かを見つけた。
「·····ん?なんだあれ」
「ん?」
影めく砂漠上に、何か透明な·····黄色がかった、幽霊??
進行先の空を覆っている。




