47 別れと旅路へ
正義は勝つ·····。そういう言い方は少し違うかもしれないが、やはり物事は落ち着く場所に収まるという事を、今日、俺は強く実感した。
木々に囲まれた、森の開けた空き地には、大小様々な悪魔達がひしめいている。
その多くは傷つき、血を流し、ボロボロになった体をしていた。
····だが、誰も悲惨な顔はしなかった。
「皆で勝ち取った勝利だ。」
腕に、木の葉から作った荒い繊維の包帯を巻きながら、ゴリラはそう言った。
「戦いは終わりだ。」
勝利宣言はなかった。
·····勿論、みんな知っていたが。
「勝ったことを祝う必要は無い。元の状態に戻すのは、森の守り手であれば当然の務めだ。」
「まぁそんなこと言わずにさ、ちょっとくらい喜んでもいいんじゃねぇか??」
巨大な木の枝から糸を垂らして、俺達の前に降りてきたブラザーが、ピエロの様なふざけた帽子をかぶって言う。
「お前浮かれ過ぎだろ···」
「ぱーりないぱーりない」
「ダメだこりゃ」
無数の足をくねくねさせてヘドバンしている兄弟は置いておいて、辺りを見回す。終戦を聞きに広場に集まった悪魔達も、今はまばらだ。
戦争の終わりをそれぞれ受け止めて、その後の生活へと戻ったのだろう。
「サソリは、これからどうするんだ?」
ゴリラの言葉に答える。
「じきに出発するよ。」
仲間がいるっていうのも悪くなかったが、やっぱり俺は気楽な方がいいみたいだ。
周りに他の奴らが居るとステータスを見てニヤけられないし·····。
「どこを目指しているんだ?」
「うーん·····」
確かに····今更だが、俺はどこに向かっているんだろうか?
だが、今この瞬間も、悪魔の本能は向かうべき道を指している。
「分かんね、大体あっち側」
「·····。上位世界か」
ゴリラが、顎に手をやって呟く。
「ここまで一直線上に来たか?」
「いや·····多分違う」
方角はたまに変化したはずだ。
·····ほんの少しだけど。
「あるいは、その目的地は場所じゃなくて〝悪魔〟·····そのものかもな。」
「···?どういう事だ?」
「·····。いや、いいんだ」
〝悪魔〟を目指している?
·····なんの?
いや、一つだけ心当たりがある。
《毒虫姫の系譜》──────。
「····。」
考え込む俺の思考に割り込んで、ブラザーが殻を叩く。
「おいブラザー、俺もお前の旅路に一緒させてもらうぜ」
「あ、そっか」
「んじゃ、行きますか!」
「ちょまっ!?」
あっさりとそうゴリラに告げて、兄弟が八本の足で駆け出す。
その、冒険への期待が止められない背中に、口角が上がるが、あまりにあっさりしすぎていて心配にもなる。
「じゃぁな、ゴリラ·····。世話になった」
「こちらこそだ。」
ゴリラのもふもふの大きな手を、ハサミで軽く挟んで、別れを告げる。
「リス様も」
「これで静かになりますね」
「···まぁそうか」
言葉の割には、しっかりと握手を返してくれたリス様に背を向けて、俺は兄弟の背中を追った───。
向かう先は分からんが·····まぁ精一杯楽しませてもらうとしますか!




