46 ゴリラの凱旋
有り得ん·····
この俺が、こんな奴らに押されている····?
目前で、ゴリラの悪魔が拳を打ち出す。
その攻撃を躱し、その喉元に食らいつこうとするも、鼻の頭に鋭い痛みが走る。
宙で一回転して着地したリスの悪魔が、小さな剣を構えてこちらを見据えている。
毛皮の薄い鼻を攻撃され、思わずよろめくも、虎の悪魔は咆哮を上げた。
なにをしているんだ俺は····!
〝獣の王〟になるのではなかったのかッ!!
たかだか少し力が強いだけの草食動物と小動物共に押されることなどあってはならない!
虎の悪魔の目に、兄弟達の姿が映る。
末の弟である自分を見下し、嘲笑い、先に上位世界へと駆けて行った兄達·····。
殺してやりたいほど·····いや、出会えば確実に殺し合いになるのだが、その憎き奴らを思い出して、虎の悪魔は力を引き出した。
そうだ。奴らに比べれば、こいつらは虫けらのようなもの。
一撃で葬ってやる。
「グッ·····?」
振り上げた腕が、空中で固定される。
『やっちまえ!』
蜘蛛の悪魔が、木の上で手を叩いている。
クソ·····クソが!
ゴリラは思いっきり拳を振りかぶり、全体重を乗せたパンチを、虎の悪魔の顔面にぶちかました。
◇◇◇
=========
[レベルが上がりました]
Lv23→Lv32
========
おっしゃぁぁ!!
『ステータスオープン!』
============
ステータス
パルスコピオン♂
名前【なし】
Lv32【進化可能】(MAXLv50)
HP 860→1060
MP 940→1250
素早さ820→990
攻撃力780→920
防御力1300→1560
魔攻撃650→890
魔防御890→1200
スキル
軟化Lv4
斬撃Lv4
毒針発射Lv3
硬化Lv3
土遁Lv2
パッシブスキル
・地獄の住人
・永遠の高校生
・経験値1.5倍
・[毒]無効
・ランナーLv2→3
・熱帯夜Lv2
称号
・転生者
・中毒者
・毒虫姫の系譜
===============
うーん·····結構強くはなったけど、レベルアップの上がり幅が微妙な気がする。
一回はレベルMAXまで上げてみたいが·····やっぱ進化した方がいいか。
強くならないと死ぬからな、この世界。
いやぁー、次の進化先はなんだろうなぁ〜!
へっへっへ
『サソリはん』
ん?
『ボス達に助太刀しに行かんと』
あ、そっか。
進化可能の喜びで忘れてた。
そんじゃホッパー達を·····
ステータスから目を離して向き直った先では、大量のバッタ達が、キリギリスの悪魔の巨大な死骸に群がっていた。
バリバリと音を立てて、虫が虫を捕食している。
『『おえーー』』
■■■
煌めく宝石の原石達が、薄暗い洞窟の天井に光る。
獣が吠えた──────
その低く太い咆哮が、上位世界に響き渡る。
獣の王はイラついていた。
つい先程、自分の末の子が命を落とした事を感じ取ったからだ。
この王たる自分の子がなんとも軟弱な。
刀剣を凌ぐほどの斬れ味を誇る牙を見せて、王は思案する。
····いっそこの手で殺してしまえばよかった。
よりによって今とは·····。
これから俺が戦いに臨むというこの時に·····。
この親不孝者がァァァァ!!
なんたる屈辱。
獣の王の魔力感知には、以前としてゆっくりと·····しかし確実に、罠の張り巡らされた道を突破してくる一体の悪魔····
────〝毒虫姫〟が、こちら目掛けて真っ直ぐに近づいていた。
望む所だ、虫けら。
この勝負に勝てば、また大きく一歩、〝最強〟へと近づける。
どちらにせよ、最強の俺には逃げる理由などない。
しかしまぁ、〝毒虫姫〟は何故今、喧嘩を売ってきたのだろうか。慎重な性格で、勝てる勝負しかしないような奴だ。
だが今、悪魔界でも有数の実力者である、この獣の王に挑まんとしている。
それが不気味であり、常に自信と飢えに満ちている獣の王の心に引っかかり、苛立たせていた。
·····いや、もうよい。
毒虫姫がどんな策を張り巡らせようが関係ない。
全て蹴散らして勝つだけだ。
この獣の王の前では、罠も、策も、数の力も、全て食い散らかされて死を待つだけだ。
獣の王は咆哮した。
それは先程とは違い、自信と、戦いの前の高揚感が混じったものだった。
その力を誇示する遠吠えに、悪魔達は震え、怯え、恐怖した。




