44 決着
森林の奥地、地面にポッカリと空いた洞窟の入り口に、リスの悪魔が立っている。
その目の前の地面は大きく抉られている。
洞窟と対をなすように空いた落とし穴を見下ろして、リスは自分の腕をナイフで少し切る。
腕を振って血を飛ばす。
『準備完了、虎の悪魔·····いつでも来なさい』
◇◇◇
リンドウは空を飛ぶ。
翼はボロボロで、左目は潰れてひしゃげている。
···だがこんな怪我は治る。
何としてでも····コイツを!
「オォォオ····」
森林から離れた荒野を下に、虎の悪魔が宙を舞う。
「グッ·····!」
疲労で鉛のように重い体に引っ張られ、回避行動が小さくなる。
虎の悪魔の爪の先に触れ、リンドウの足がちぎれ飛ぶ。
痛みに空を向いた一瞬、リンドウのカラスの右眼は、森林の奥で上る狼煙を認めた。
····役目は終わった。
空中でくるりと旋回する。
───かつて、兄がそうであったように。
美しく、強く翔ぶ。
森林に向かって翼を翻したリンドウを追って、獣の悪魔が地を蹴る。
湧き上がる恐怖を抑え、自分の翼を信じる。
死ぬならば、あの勇敢な兄と同じように····。
食われる瞬間まで、戦士として生きる。
足音が、すぐ耳の裏に聴こえる。
『兄、今そっちへ向かう·····』
獣の悪魔は、飛び上がる。
牙がズラリと並んだ口を大きく開けて····
『あなたと同じ方法で』
だが違う、お前は残した。次に繋げた。
お前のお陰で。
『そうだな····』
声が聞こえた気がして、カラスは空を見上げた。
産まれた時から変わらない、真っ黒な太陽が、両目に映る。
『なら本────』
トラバサミがバチンと閉じて、カラスは虎に食べられた·····。
◇◇◇
「リンドウ·····」
体を、丸めて伸ばして····それを高速で繰り返し、こちらに猛然と向かってくる虎の悪魔を睨みながら、リィンカーネーションはそう呟いた。
もう帰って来ない仲間は、多くいるだろう。
だからこそ。
味方の一人、蛞蝓の悪魔が、ゴリラに魔法をかける。
みるみる巨大化していく自分の体を見下ろした後、リィンカーネーションは静かに拳を握った。
虎の悪魔との距離が縮む。
両者目前、地を蹴ったはずの虎の悪魔の足が、空回る。
「齧歯・虎罠!」
リスの悪魔の唱えに反応して、落とし穴の地面に仕掛けられた、無数のトラバサミが口を閉じる。
「ガァァァ────ッッ!!」
腹に噛み付く大量のトラバサミに、叫び声を上げた虎の悪魔の頭上に、影がさす。
『さぁ、立てよ』
青い焔を纏った、ゴリラの巨大な拳が、虎の悪魔の頭蓋骨を殴り潰す────。
『焼き尽くしてやるから』
唸り声を上げて立ち上がった虎の悪魔と睨み合い、ゴリラは静かに拳を構えた。




