38 IIR
うまい!うまい!
『どうしたお前、急に·····』
水が美味い!!
·····。
一旦戦場を引いた俺達は、最寄りの隠れ家で体を休めていた──。
たらいに頭全体を突っ込んで、清らかな水を吸引する。うまい·····。
悪魔に飢餓や渇きの概念は無いと思っていたが、どうやら間違っていたらしい。
『どんだけ水飲んでなかったんだよお前·····』
呆れ半分で、6本の足のうちの二本を上に挙げている蜘蛛が言うに悪魔の体は、生物と根本的に異なっていて、体を動かす時に体内のエネルギーを使う生物と違い、悪魔は魔力を消費する。
なので、運動のためのエネルギーを食事から得る必要が無い。水もまた然り。
ただ、運動以外。体の成長等には魔力以外のエネルギーが必要なので、全く取らなくていい訳では無いようだ。食った方が強くなれるらしいし····。
要は体の維持を魔力で済ませているという事だ。
つまり·····
〝もし太ってしまったら、運動しても痩せられない····。〟
『気づいてしまったか·····ブラザー·····』
なんと恐ろしい·····。
『貴方達·····。準備は?』
恐ろしい未来に、思わず自分の体を抱きしめて震える俺達の後ろから、本格的な戦いの装備を整えたリス様が入ってくる。
体は俺より一回り小さい程度だが、その強さは先程の前哨戦で証明済みである。
『準備できたなら、出発しましょう』
『そうでげすネ·····。よし行くぞ、ブラザー!』
お前口調変わってんぞ。
まぁ確かに、今のリス様はなんていうか·····。威圧感がすごい。
水晶でできてる様な、半透明な紫のヘルメットを装着し、腰周りには、小さいながらも見ただけでわかるぐらい斬れ味のよさそうなナイフを何本も提げている。
そんな、古代中国の刺客みたいな格好をしたリス様に続いて外に出る──、
相変わらず真っ黒な太陽は、もうじき真上に登る頃だ。
死ぬつもりは無い。死にたくも、ない。····だが、戦いたい。リスク回避のためにちまちまレベルを上げるのも悪くは無いが、やはり一気にレベルを上げるのがレベリングの醍醐味だ。
虎の悪魔がなんぼのもんじゃい!俺以外みんな経験値。
こっちにはリス様もゴリラ将軍もいる。この戦争の主役は彼等なので、俺はサポートに回った方がいいかもしれない。
·····まぁ、敵を見る前にあれこれ考えてもしょうがない。
ここは一つ、蜘蛛としりとりでもするか。
『お?やんのか?いいぜ、《二枚舌の言語主》と呼ばれた俺が相手してやるぜ』
お前、絶対同じ言葉を二回ぐらい誤魔化して使うだろ·····。ズルだろそれ。
『騙される奴が食われるのは自然の摂理だぜ?』
それじゃゲームになんねぇよ·····。
何でそんなすました顔できるんだよ····。すまし顔で生計でも立ててるん?
『もっと落ち着いて歩けませんかね?すでに敵陣ですよ?』
『『誠に、失礼致しました·····。反省しております。』』
なので、空間をナイフで切り刻むのをやめてください···怖いので。




