37 悪魔戦争
各地を放浪してきた蜘蛛によると、この規模の戦争は度々起きているらしい。
領土の奪い合いの小競り合いだったり、純粋に殺戮の為だったり·····やはり悪魔は自由思想らしい。·····自由が一番だよね。
『悪魔界は広いぜ、兄弟!』
そう念を送って寄こしたブラザーが、シュッシュッと周囲に糸を飛ばす。飛ばされた糸に捕まったりそれを避けていくうちに、俺達二人を囲む悪魔達は、張り巡らされた糸に誘導されていく。
糸に捕まって身動き取れなくなった小動物を、斬撃でサクッとキルしていく。
ラクな軽作業、おしゃべりしながらできるアットホームなバイトです·····。
いやしかし、蜘蛛強いな。
実戦慣れしてやがる。
『やはり二人だと効率がいいな、兄弟』
そうだな、雑魚悪魔達が面白いぐらいに罠に誘導されていく。
『この戦争が終わったら·····俺達組まねぇか?』
お、おい、お前それっ!フラグ!フラグだから!
死んじゃうよ!?気ぃつけろよ!?
そう言って狩り続けること暫く───、
ん?なんだあれ?
『ん?やべ、引くぞ兄弟!』
土煙が、高速で近づいてくる。
ドドドと、蹄の音が聞こえた時には、もう遅く·····。
目の前に、ギラつく赤眼が近づいた。
·····牛の悪魔だ。
咄嗟に横に飛び、躱す。
太い角に掠っただけで、右のハサミに割れ目が走る。
この悪魔·····確か、あの魚の悪魔に食われてた奴と同じ種類か?それならば、魚に勝った俺なら勝てる·····と言いたい所だが·····。
毛皮越しに分かる、弾けそうな程の筋肉。殺傷性の高い二本の紫色の角·····。どうみても勝てそうにない。
まずレベルから違いそうだし·····
ん?レベル?·····レベリング?よし、やるか。
おいブラザー、糸出せるか?
『ハァ!?とち狂ったか!?』
いいからやるぞ!
再び、Uターンで加速した牛が、並ぶ蜘蛛と蠍に近づく。
今、足に絡ませろ!
『っ·····よ、よし!』
避ける間際、太い糸が牛の前足の一本に巻き付く。
もう一度だ·····
『おう····わかってるぜ』
きた·····
避けた二人の隙間を、牛が瞬く間に走り抜ける。
そして一瞬の空白の後、もんどり打って転げた。
──、斬撃ッ!!
「グォォォォォォ!!!」
首筋に斬撃を叩き込まれ、血と叫びを上げて牛がのたうつ。立ち上がって暴れようとするも、その僅かな時間に、手足は蜘蛛の糸にぐるぐる巻きにされていた。
拘束されていることを悟った牛が、一瞬落ち着き、大きく息を吸う───
「オオオォォォォオオオオオォォォ!!!!!」
うるせぇっ!?体が!
トドメを刺そうと近づいていた蜘蛛と、俺の体が、空気を叩く咆哮を直に浴びて硬直する。
不味い·····!
その瞬間を見計らったかのように、周囲の悪魔達が糸を振りほどいて、一斉に飛びかかってくる。
あ、やべぇ·····
死を覚悟した瞬間、頭上から大量の血飛沫が舞った───。
『思ったより数が多いですね』
目を凝らすと、小屋を案内した小さなリスの悪魔が───いや、リス様が周囲の悪魔を細切れにしていた····。
〝『り、リス様ぁぁ〜〜〜〜!』〟
『二人だけで突撃するなんて····バカなんですカ?』
『ウゲ』
うぐ·····
居た堪れなさに思わず立ち止まる俺達の目の前で、目に見えぬ程の速度でリス様が爪を振るう、爪を振った数だけ、周りの獲物が切り裂かれていく。
悪魔は見た目によらないんだな·····
『絶対怒らせねぇようにしねぇとな·····』
舞い散る血と肉片の中、俺と兄弟は、アクロバティックに踊るリス様を見ながら、しみじみと思った····。
『あの、ボケっと突っ立ってないで戦ってもらっていいですかね?』
〝『はい·····』〟




