10 引きずり込まれる池の底·····
うおぉぉぉぉぉぉ!?
急いで池から離れる
こっわぁぁ!?目ェ合っちゃったよォォォ!?
鳥肌やばい·····。
なんかほら···よくあんじゃん、海洋恐怖症。
あれだよアレ·····まさに·····。
丸い形のオアシスは底が無く、どこまでも黒い水が広がっていた。
····それだけでも怖いのに····。
ゾッと体を震わせる
見てしまったのだ、丸いオアシスの縁いっぱいに収まり、口を開けるデカい魚を·····。
土の穴がオアシスならあの魚は大根だ。
蓮コラと海洋恐怖症のタッグだ。
池の淵にピッタリフィットしてやがる·····。
よし、さっさと逃げるか···。
サイズといい水の中といい、とても勝てそうな相手では無い·····と言うより餌として食われるのがオチだ。
自分の体を見下ろす
細い腕に、小さな体。
子犬に似てはいるが、決して可愛くはない。
勝てる筈が無い·····命は大切にしないとな。
再び荒野を歩こうと足を踏み出した俺に、ある事実が頭をよぎる。
·····経験値。
ケイ···ケン··チ?
経験値····レベル·····レベリング·····。
振り返りオアシスを見る
よっしゃ倒すか!
命?クソ喰らえそんなもん!
サッとレベル上げるんだよ俺は。
だがどうやって勝つか·····。
近くの岩影に身を潜めて考える
軟化で地面を掘って水抜きするか?
·····いや、見た感じ池はかなり深い、そこまで掘れるとは思えないし·····。
恐らくオアシスはあの魚が作ったものだ。
獲物を誘い込むトラップ···罠だ。
多分池を作ったり水を出したりするスキルを持っているのだろう。
·····ってことは陸でも動けるって事?
浮かんだ不安を押し込めて思考を進める
まずは向こうがどう動くのかを知るか。
適当なサイズの石を拾い、池に投げ込む
·····。
よし、次だ。
今度は少し大きめ、30センチだ。
石を投げる·····
ドボンという音が聞こえる前に、魚が飛び出した
宙に舞う大きな魚
びっしりとはえた青白い鱗がギラギラと光を反射する·····。
飛び跳ねた魚が池に落ちる瞬間、丸い目で辺りを見回す。
俺と目が合う
矮小な悪魔との一瞬の睨み合いで相手の強い決意を察したのか·····
魚は牙をひしめかせた口を歪ませて、ニヤけた。