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異世界実況、始めました  作者: 六狗
2/2

 二、初めに加わる助っ人キャラはめっちゃ強い法則は現実でも適用されますか?

どうも、連投です。

が、書き貯めていた部分はここまでなので明日は無理です。

人に読んでいただけているようで嬉しいです。


2021.3.14:話が飛んでいた部分の書き足し

(支部長との戦いの後ですね。違和感がないように繋げました。元々、書いてたと思ったんだけどな…)

「…見当たらねー」

「あー、どこー」

「…ほんとに街あるの?」


 俺達三人は意気揚々と出発したのは良いものの、最初の街となる何かが全く見つからずにダレていた。

 まず人の交通があるなら絶対的に道が整備されてるはずなんだが、全くもってそんなことは無く、伸び伸びと成長した芝生しか見当たらない。後、所々に点在してる廃墟の壁位だろうか。廃墟の壁は規模からして国レベルかな?


「もしかしてこの辺は未開地なのか?それともこの世界の全体的に交易とかが行われてないのか?」

「…でも未開地というには、あの辺の廃墟の壁があるのがおかしい。未開地と言われたらこの壁がある事だけが違和感ある…」

「んー。昔は発展してたけどここの文明は滅んだパターンがあるかもー。ほら、トロイヤ遺跡みたいなー?」

「あー…それもあるか。だとしたら魔術がある世界みたいだし、そういう呪いがあると思われて、隔離とか立入禁止になってても不思議じゃないな。…ここより発展してた現実世界でも『曰く付き』があったしな」


 そんな事を話しながらこの辺の廃墟について考察していると、不意に吹雪が足を止めて、少し明るい声で言った。


「…ちょっと待って。この辺の領域に人っぽい反応がある。場所は私からみて四時の方向で距離は二百二十一メートル先」

「流石領域の女王。じゃあ俺が影伝いで接触してくるよ。一応影の糸を道標に張っとくから、後で追いかけてきてくれ」

「りょーかーい」

「…気を付けてね」


 二人の声を背に受けて自分の影に潜り、その生命が作り出している影の方へ目算をつけながら伝っていく。

 伝って行った先には一人の少女が廃墟の壁にもたれながら、安らかに眠っていた。本当に安全だと思っている表情である。寝ている相手を起こすのはしのびないが、此方としても少しは手掛かりが欲しいので起こさせてもらおう。


「あのー、ここが何処かご存知ないですかね?」

「……ハッ!べ、別に寝てないからね!」

「いや寝てましたよ」

「いやだから寝てないもん。あと、誰よあんた!」

「あぁ、いや、あの。特に妖しいものでは無いんですけど…」


 まさか、寝てた事を否定する方が俺の存在の確かめよりも大事なんだろうか…。単純に寝惚けてるだけかもしれないが。そんなふうに考えていると、目の前の少女が不意に、俺の方へ近付いてくる。


「ちょちょちょ、近い!」


 そんな抗議の声もお構い無しに少女は、あと数センチというところまで近付いてから鼻をスンスンならす。え、いきなりなにしてんの、この子。


「…なんか不思議な匂いがする。私に対する悪意は感じないし、この世界の人の匂いもしないや。あんた誰?」


 少女が暫く匂いをかいだ後、幾らか警戒を引き下げながら、寧ろ親しみをもって俺に話し掛けてくる。もしかしたら匂いでそういうのが分かるスキルでも持ってるのかも。


「俺は雪音。さっきこの世界に飛ばされてきたばかりなんだ」

「…飛ばされてきた?」


 あ、やっべ。何も考えずにバカ正直に言い過ぎた。流石に変人扱いされるか。


「あー、じゃあ、貴女は放浪者なんだ」

「…まぁ、みたいだな」


 少女は納得してくれたようだ。あー、良かった。これで話が拗れずに済む…。という訳で色々聞かせてもらうか。あの二人ももうじき此処に来るだろうし。


「そっかぁ。初めて見た!こんな普通の女の子でもそうなんだね!」

「いや、申し訳ないけど俺は男だぞ…」

「…えぇ!?でもでも、何処からどう見ても女の子じゃん!」

「…雪にぃは嘘言ってない。生物学的には男で実質的には女の子」

「ふぇっ!?」


 いきなり虚空から現れたのは小雪と吹雪。

 まさか自分だけが透明になるんじゃなくて周りも透明化出来るとは…。流石に強すぎなんじゃ…。あと、異世界でいきなり生物学とか言っても通じないだろ…。


「あー、驚かせて悪かった。こっちが小雪で、こっちが吹雪。二人共、俺の妹で一緒にこっちに来たんだよ。後、俺は実質的にも男だっての!」

「えっ、あ、そうなんだ。いきなり出てきたから敵かと思ったよ…」


 二人共丁寧にお辞儀を少女にする。ほんとにどこに出しても恥ずかしくない妹達だわ…。お兄ちゃんビックリ。


「…で貴女の名前は?」

「あ、まだ言ってなかったかな。私はポメラ。気軽にポメラって呼び捨てして欲しいし、敬語もいらないからね」

「ポメラか。宜しくな」


 という訳で話が通じそうな第一村人こと、ポメラと知り合えたのだった。ポメラは親切そうで親しみやすそうだから、此方としては凄い助かったのは間違いない。


「で、近くの街に行きたいんだっけ?」

「あぁ」

「えっと、ここからだから…。ウドの街が一番近いかな。ここから十二時の方向にずっと行くと街道が見えてくるから、後はそれに沿って道なりかな」

「意外と近くまで来てたんだな…。因みにこの遺跡って何なんだ?後、ポメラは何でここに?」

「えーっと、ちょっと長くなるけど-」


 ポメラの話を纏めると、どうやらポメラは王立魔術学園から派遣された生徒のようで、ここに廃墟の調査を言い渡されて来たそうだ。

 この廃墟は予想通り、遥か数千年前に興った魔術文明、テカートの国があった場所らしい。テカート文明は今の魔術よりも高度な魔術文明を持っていて、魔術の中心地みたいな所だったらしいけど、内乱で滅んだんだとか。

 滅亡した時に消滅してしまった魔術体系があるらしいと噂されていて、それを見つけようとして、持ち回り制で人員が派遣される。

 今回はたまたまポメラだったらしい。


「あ、意外と凄いやつなんだな」

「し、失礼な!これでも私のいる学園の中で上から二番目なんだからね!しかも大体の魔法適性もあるし!スキルも『上級魔術師』まで取得してるもん!」

「うわ、めっちゃ優秀そう…。因みになんだけどさ」

「ん?どうしたの?」

「『魔術を極めし者』ってどれだけ凄いんだ?」

「そりゃあもう!伝説級だし、どんな退廃的な生活が待ってるか分かんないくらい!」

「…良かったな、吹雪。何がとは言わないけど」

「…うん、良かった。何がとは言わないけど」


 俺らの話を聞いてポメラは首を傾げていたが、まぁ言う必要は無いだろう。

 スキルの話は自分の武器だからあまり話さない方が良さそうだし、吹雪がそれを持ってた時のたられば話に意味は無いからな。


「よし、ありがと。んじゃあ、そこに向かって行くか」

「…うん、ポメラ、またね」

「ばいばーい、ポメラ」

「ええっ、まさかの放置!?」


 なんか凄いポメラが驚いてるんだけど…。いやいや、ポメラは調査があるんじゃ…。


「え?あー、今日で終わりなんだよね。だから今日は帰還日なんだよ」

「あ、そうなのか。…でも王立魔術学園なんだから道は違うんじゃ?」

「ウドの街に私が所属する王立魔術学園があるんだよね。だから帰り道は一緒なんだよ」

「…あ、そうなんだ。じゃあ一緒に行くか。道中危険かもしれないし、俺たちだけだったら迷うかもしれないしな」

「臨時パーティメンバーって奴だねー。しかも大体後でパーティに加わるフラグがー」

「お、優秀な魔術師要因か!俺ら、特殊系スキルだけで構成されてるから良いかもな」

「あ、持ってるスキルについて教えてくれない?勿論私のも教えるし、秘密は絶対に守るからさ」


 うーん、迷う。さっきも考えたが、あんまりスキルについては話したくないのはある。でも、信用を得る事を考えたら話した方が得かもな。


「よし、じゃあちょっとスキルの情報交換するか。あと、それを踏まえて陣形も考えよう。どれだけ遠くて危険なのか俺達には分かんないからな」

「…雪にぃの言うことに異議なし」

「右に同じー」

「ん!分かった!じゃあ-」


 という訳で色々と教えあった。俺ら三人の取得スキルは割愛して、ポメラのスキルはこんな感じだった。


 〈ポメラのスキル〉

 ・猟犬

 ・上級魔術師

 ・聖魔術師

 ・黒魔術師


 これは本当に優秀な魔術師だと、何も知らない俺でも思う。相反する聖属性と黒属性を扱える上に、基本属性は上級。また、索敵と追撃に関する事が出来るらしい『猟犬』もある。単独行動が出来るタイプの魔術師のようだ。何この子強い。


「うわー…。私も中々だと思ってたけど三人とも強すぎじゃない?」

「三人とも汎用がきくけど特化型にはちょっと手こずる…と思ってる。戦った事ないからなんともな」

「確かに、実際に戦わないと分かんないもんね。さて、陣形はどうするの?」

「前衛は俺と小雪が。中衛に吹雪。後衛にポメラ…かなぁ。他にあるか?」


 これは俺と小雪がタゲを引いて、吹雪がそれぞれにバフやらデバフやらをかけて、最後にポメラの魔術で決めるのが理想。正直言えば、ポメラ以外は前衛から後衛まで何処でもこなせるせいで逆に迷ってしまう。


「…うーん、私が前衛に入る代わりに小雪をポメラの護衛にするのは?」

「時間稼ぎだけならありかなー。でも決定力に欠ける吹雪が前に出ても本当に時間稼ぎしか出来ないと思うなー」

「寧ろ雪音だけ前衛で後は後衛で良いんじゃない?」

「一人で全部抑えろと申すか…。出来ると思うけどさ、そしたら小雪と吹雪のどっちかが遊ぶ事になるんだよな。それは勿体ない」

「なら一番フットワークが軽い小雪が場合に応じてカバーに回る…のは?私がポメラを守るから」

「さんせーい!」

「まぁ妥当かな?私も異議はないかな」

「じゃあそういう事で」


 という訳で、前衛が俺。中衛に小雪。吹雪とポメラの二人は後衛だけど、主に吹雪がポメラを守る感じだな。意外とバランスは悪くなさそうだ。


「よし、じゃあ行くか。ってか、街までの所になんか魔物的な奴はいるのか?」

「うん。この付近だったらレッドウルフぐらいかな」

「…割と普通の名前だね」

「そりゃね。奇抜すぎたら分かんなくなるし」

「うーん。こういう話してたらそれに襲われるのが世の常だよねー」

「ないない。だって行き道は襲われなかったもん」

「…吹雪。反応、あるよな?」

「うん。お約束は逃れられない運命みたい。私達を囲むように十六匹。囲まれてるから陣形は意味を成さないね」

「ええっ!?私、もしかして何か余計な事を…?」


 余計な事を言ってしまった自覚があるポメラを小雪が頭を撫でて慰めてるのを横目に、吹雪と作戦を立てる。


「吹雪のスキルで来る方向を制限できるだろ?それで無理やり一方向にするのはどうだ?」

「ありかも。でも、雪にぃの負担が大っきいよ?」

「問題ないっての。寧ろ初めての実戦でワクワクしてるまであるからな」

「…ふふ、雪にぃ子供っぽい」

「うるせー。ってことで頼んだぞ」


 吹雪が小さく頷き、スキルを発動させる。んじゃ、俺も覚悟を決めときますかね。後は会敵する前にじゃれてる二人にも作戦を話しておく。


「二人共、陣形はさっき話した通りだからその通りに頼む」

「んー…。あ、りょーかーい」

「えっ、あ、うん!」


 小雪はどうしてそれで成立するのか理解したみたいだが、ポメラは言われるがままって感じだな。大丈夫かな、この子。

 なんて話してる内に俺の前から血塗れたみたいな色合いをした真っ赤な狼が十六匹、俺の真正面から向かってくる。狼の大きさは軽く全長三メートル、高さ二メートルって感じか。…めっちゃデカいですがな。


「こんなにデカいとか聞いてないけど?」

「…うん。私もこんなにデカい個体が勢揃いしてると思ってなかったかな」

「あ、これが普通サイズじゃないんだな」

「多分、この辺の残存魔力を元に成長した個体達なんじゃないかな?だとしたら結構な大発見だよ!!」

「ま、いいや。魔術の準備よろしく。とにかくでかい奴な」

「わ、分かった」


 ポメラが魔術を編んでいく。時間が経てば経つほどそれが周りを震わせるほどのナニカを発していく。

 その気配に気付き、一番対処するべきだと本能が理解したのだろう。狼はポメラに殺到しようと俺や小雪を無視して間を抜けようと駆けた。

 その速度は人の目で追えるようなものではなく、まさに神速と呼ぶべき他の追随を許さぬ速度。だが、影が存在する限り、俺の横を通り抜けることは出来ないし、させない。


「悪いな。その脚、留めさせてもらうぜ」

「それに加えて…。『女王の名において命ず これより先の立ち入りを禁ず』」


 俺は狼の脚元にある影をその場に固定してそのまま行動不能にする。影と物体は表裏一体。どちらかが欠けてはどちらも動く事は出来ない、という真理に基づいた『影踏』という使い方。

 脚を留めた後、吹雪が念の為にスキルを使う。これは単純に立ち入りを禁止する法則を領域内に設定して、狼達が俺達に近付く事を不可能にした。…あれ、俺って必要ないんじゃ?なんて考えている内にポメラの魔術が発動する。


「我は焔。昏きを払いて、障害を焼く!第三階級火炎魔術、フレア!」


 ポメラの手から炎の波と形容すべき業火が放たれる。狼はそれらを見て回避しようと試みるが脚は動かないままで、棒立ちするしかなかった。そして数瞬もしない内に業火が全ての狼を呑み込んで焼き尽くした。暫くして炎が消えるが、その後には消し炭さえも残らなかった。なのに、周囲に生えていた草には何の影響もないという摩訶不思議な現象が起こっていた。

 …もうちょっと自然の摂理に則ってくれませんかね。幾ら異世界でも常識は守ってくれないと。


「あー良かった。周りの草を燃やさずに済んで」

「まさか…わざわざ調整して火を放ったのか?」

「うん。この辺は重要な遺跡だからあんまり戦闘痕とか残したくないんだよね」

「…最初の助っ人キャラは強いね」

「だねー。私何もしてないや」

「竜依頼・五のお父さんは強かったのに!どうしてあんなゲス顔ブルーベリーに負けてしまったんだ!」

「あれは…哀しい事件だったね」

「何の話してるか全くわかんないけどさ、早く行こうよ。また襲われても面倒だしさ」


 という訳で初めての異世界での戦闘は、優秀な攻撃要員のポメラと時間稼ぎが優秀な吹雪によって難なく終わったのであった。


「っていうか、巨大な魔物の証拠となるアイツら全部焼き切ったけど良かったのか?」

「あっ…。あたしのバカぁ!」

「忘れてたんだな…。これでこそポメラクオリティだ、うん」

「何その安心!?ってそんな事よりもどうしよう!注意を促す説得力に欠けちゃう…」

「ま、問題ないけどな?」

「ふぇ?」


 俺は影からさっきの狼の一匹を、丁度顔の部分だけが見えるように出す。狼には影で作った拘束具をこれでもかってくらい着けてるから問題は無い。でもなんかあんまり抵抗してこないんだよな。諦めの境地にでも入ってんのかな。


「ええ!?何時捕まえたの?」

「ポメラの魔術が当たる直前かな。そのまま影の中に引き摺りこんで捕獲したけど」

(姫!姫!)

「…雪にぃ。その影空間って何処まで入るの?」

「さぁな。取り敢えず大体は入るんじゃないか?流石に街一個規模とかは無理だろうけどさ。後、生きるのには問題ないっぽい」

(姫!無視しないで下さい!姫!)

「゛あ?誰が姫じゃゴラ…って、今の誰が言ったんだ?」

「…幻聴?」

「あ、その子かなー?私にも姫姫聞こえてるからー」


 小雪の言葉で脚元から顔だけ出てる狼を見る。すると、なんか凄い俺が喋ってるんですよ!みたいなオーラ出しながらこっちを見てた。まさか、俺と小雪ってそんなスキルがある…って事なのか?


「おい、お前。どっちを姫って呼んでるんだよ」

(それは貴女様ですよ!影使いの!)

「俺は女じゃねぇ!って、このくだりを魔物ともすんのかよ!」

「あははー。取り敢えず、私達に敵意はなさそうかな?雪にぃ、放してあげれば?」

「はぁ…。暴れんじゃねぇぞ」

(勿論ですよ!姫!)


 コイツ、姫じゃないって言ってんの分かんないのかな…。取り敢えず敵意は無さそうなので影から出して、拘束具も全部外してやった。すると目の前の狼は犬のように大きく伸びをしてから、こっちの方を向いておすわりした。何この子、めっちゃ犬っぽい。

 因みに声が聞こえてないポメラと吹雪は何が何だか分かってないような感じだが、適宜内容を伝えながら話す事としよう。


「で、お前何?なんか用でもあんの?」

(私をどうぞ貴方様の下僕にして下さい!お願いします!)

「なんでいきなりそんな話になった!?」

(それは深い訳が…)


 話を聞いてみるとこんな感じだった。

 どうやら普通サイズのブラッドウルフだったこいつらだが、ここの廃墟で暫く生活してる内に、気が付いたらここまで大きくなっていたらしい。当然の事ながら大きい魔物はそのサイズだけでも脅威となり直ぐに人などから討伐されてしまうため、それを防ぐ為に仲間と群れていたのは良かったが、今の戦闘で生き残ったのは自分一匹だけで、自分は人に対抗出来ない。だからより強い俺の庇護下に入れてもらおうという事だった。

 これらの話を聞いたポメラは凄い事だよ!なーんて興奮していたが、流石に魔物を下僕にする方法は知らないし、俺のスキルにもそんな効果を持つスキルは存在しない。


「いや悪いけど、そんな下僕を増やすスキルとか持ってないから無理だ」

(な、なんと…。初めて貴女様を見た時、絶対にそういうスキルがあると思ったのですが…。あと、だとしたらなぜ会話が出来るのでしょうか)

「ん…何でだろうな?」

「…まさか赤雪姫の効果?」

「んなまさかぁ…」

「…たしか白雪姫は魔女に毒を盛られた後、十二人の小人が助けてくれたよね?その小人的なポジションなのかも」

「うわ、めっちゃありそう…。でもなんだろうな。もっと悪ふざけした理由な気がするんだが···?」


 一応筋は通ってると思う。でも何だろう。もっとふざけた様な理由な気がする。

 そもそも赤雪姫の由来が俺に求婚してくる男共の手を握り潰して血塗れにするから…ってたしかブラッドウルフって血塗れの狼だよな。いや、俺やだよ。そんな、血塗れの魔物とだけ意思疎通が出来て、下僕にできるスキルとか。


「…分かった。お前を俺の下僕…もとい俺の家来にする。名前はウルだ」


 俺がそう言った瞬間、俺の手首に光が灯り、次第にその光がレイの身体の中へと入っていく。全ての光が入った後、レイが一つ大きな遠吠えを上げる。

 その遠吠えが止んだ頃には、レイの首に赤が元地で、所々に雪や雪の結晶がぽつりぽつりと刺繍された首輪が付いていた。

 …これが『赤雪姫』のスキル。血塗れの魔物を家来にするスキルだったのか。気が付いたら血染めの魔物集団が出来てそうなんですけどあの。流石にそれは困るんですけど…。


「ウル!これより、貴女様のお役に立てるように頑張りたいと思います!」

「…あ、声が聞こえる。私は吹雪。貴方の主、雪音の妹の内の一人。宜しくね」

「同じく、妹の内の一人、小雪だよー。わーい、モフモフキャラだー!」

「えっと私はポメラ。宜しくね、ウル」

「おおぅ。俺の家来になった奴は周りに声が聞こえるようになるのか…。俺が雪音。宜しくな、ウル」


 こうして新たな仲間であるウルが増えたのであった。一気に仲間増えすぎなんだよな。居てくれれば頼もしいし、旅が楽しくなるのは確かだろうけどさ。


「よし、今度こそウドの街に行こう!」

「あ、では姫!私の背中にお乗り下さい!」

「姫じゃねぇ!…俺は良いから、ほかの三人を乗せてやってくれ」

「承知!では皆様、お乗り下さい」


 ウルに促されておっかなビックリしつつも、三人が乗る。…三人乗ってもまだ大丈夫そうだな。って待て。なんか少しでかくなってね?


「なぁレイ。お前、でかくなってないか?」

「自由に大きさを変えることが出来るようになりました!仔犬サイズからこの姿までの間だけですけどね」

「いやいや、それでも十分だわ」


 全長三メートルで高さ二メートルだったのが、全長は三・五メートルで高さ二・五メートルになってる。勿論目算だから合ってるかは知らないが。


「という訳で後は落下防止の為に影で柵を作って、と。ウドの街まで、三人が疲れない程度の速さで行け!」

「姫はどうするので?」

「俺は影伝いで着いていくから置いていく事は考えなくていいぞ」

「承知!ではまた後で!」

「頼んだぞ、ウル」


 という訳でレイと三人を送り出して、その後から直ぐに影伝いで追いかける。

 すると体感十分も掛からないうちにウドの街が見える所まで来る事ができた。流石にここまで来れば十分だし、このまま街まで乗り付けるのは不味いから、そろそろレイを止めよう。


「レイ。街が見えてきたからそろそろストップだ」


 レイの足元に出来た影から無理やり身体を出してレイを止める。どうやら、ほんの小さな影でも身体を出す為の出入口に変えられる様だ。極端に言えばその辺で蚊の様な小さな生物の影でも可能だろう。…逃げる時とかに使えそうだなぁ、このスキル。

 そんな事はさておいて。


「そういえば乗り心地はどんなもんなんだ?」


 目を未だ輝かせたままの三人に問いかける。レイは久々に駆け抜けられたからなのか満足気だし、楽しかったなら良かった。


「なんか凄いもふもふしてた。触ってて気持ちよかった」

「ほわー…わんわんさいこー」

「うーん!貴重な経験させて貰った!まさかブラッドウルフに乗れるなんて!」

「ふふふ、こんなに喜んでいただけて幸せです」

「ま、さっさと街の中に入っちゃおうぜ」


 という訳で信用のあるポメラを先頭に、その後ろで俺と小雪と吹雪、俺の隣にレイが並んだ状態で街の方へ近付いていく。そういえば、このウドの街について何も聞いてなかったな。


「なぁポメラ。ウドの街ってどんな所なんだ?住んでる人とか重要な施設とか、名物のお菓子とかご飯とかデザートとか」

「なんか半分が食べる関連じゃない?別にいいけどさ。えーっとね…」


 このウドの街は人口一万人前後で成り立っていて、中央にとても大きなウドの木があるのが特徴のそこそこ広い街なの。

 今いる国、あ、レートリアって言うんだけど、そのレートリアの五つある主要都市の内の一つ。雪音達みたいな放浪者を結構手厚く扱ってくれるらしいけど、詳しくは分かんないや。

 で!私が通う王立魔術学園もウドの街にあるんだけど、あと王立魔術学園は五つあるんだよね。残りの主要都市の四つに一つずつと、後は王都に一つあるの。

 重要な施設といえばその王立魔術学園と冒険者ギルド位かなぁ。そのギルドはウドエリアっていう地域の地域本部だから、他の小さな街にあるギルドより備えと設備は抜群にいいよ!食堂のご飯も美味しいしね。

 食べ物関連は後で一緒に回ろうよ。調査に当たった人は暫く休暇が貰えるからさ。その休暇を使って色々と案内してあげるね!

 との事だった。意外とポメラの喋る内容が多かったから、ウドの街の門はすぐ目の前まで迫っていた。

 門は木で出来ており、中々丈夫そうな作りをしているみたいだった。木が腐った部分も見当たらないし、しっかりと維持・管理が出来ているということなんだろう。


「お前ら止まれ!街まで魔物を連れてくるとはどういう事だ!」

「あー…まぁ、そうなるよね。仕方ない」


 俺らが門の前までたどり着いた時、既に遠くから見てウルの事を確認していたのだろう。手際よく、俺ら四人(と一匹)を多くの槍を持った衛兵が囲む。大体数にして二十人前後といった所。

 ポメラにアイコンタクトを送ると、俺が説明するしかない、みたいなジェスチャーを返された。結局説明しないと駄目なのか…。


「俺は雪音といって、こいつは俺のスキルの支配下にある魔物です」

「ええ、私は姫…雪音様に仕えるウルと申します。貴方達に対して危害を加える意思はありません」

「なっ、喋ったぞ!」

「まさかこいつ、第五階級に値するのではないか!?」


 あー、喋っちゃったか。やっぱり単に思考力のない魔物なら特に警戒されることもないが、思考力があるって分かると警戒されるよなぁ…。あと、第五階級ってなんぞ?たしか、ポメラの放ったフレアとかいう魔術が第三階級だったな。それと関係あるのか?

 つか、どうやって切り抜けようか…。


「はっはっは!何だ何だ、何の騒ぎだ?」

「ギルド長!お下がり下さい!危険です!相手は五階級ですよ!?」

「たかが第五階級に俺が殺される訳ねぇだろうが。…で?それを従えてるのがお前みたいな小娘か。くくく…。面白いなぁ?」


 いきなり門の奥から筋肉のナイスガイが出てきたかと思えば、衛兵の輪を無理やり押しのけて、俺達との距離を十分に取りながら、輪の中に入ってきた。しかも話を聞けばギルド長らしいし、偉い人なんだろうな。

 あと俺は男なんだけど…。油断も誘えるから否定はしないでおこう。肯定もしないけどな!


「何が面白いのか分かんないけどな。俺達は特に危害を加えるつもりは無い。ただこの街に入って実況したいだけだ」

「はっはっは!俺と相対して平然としていられるとはな!こいつは面白そうだ。どうだ小娘、俺と一発ヤってかないかい?」

「…どういう意味で?」

「ここで殺りあった後、ベッドの上で夜戦と洒落んでヤるに決まってんだろ?」


 あ、ただの変態だ。

 俺は確信した。あいつの身体からなんか、凄い本気のオーラを感じる。あれ、もしかして貞操の危機なんじゃ。


「…そのヤるは許容できない。襲いかかってくるなら。勿論私達も抵抗するよ、拳で」

「まー、そういうことだねー」

「姫をお守り致します!」

「乗りかかった船だからね。私も参戦するよ!」


 駄目だわ。完全にあのおっさんの言葉のせいでウチの妹達がプッツンしてますわ。いいながらそれぞれ戦闘態勢に入ってるし。こういうお約束はフィクションの中だけにしておいて欲しい。

 戦闘する意志を見せたからか、目の前のおっさんが背中に提げてる剣を抜いて、青眼に構える。構えた瞬間、おっさんを中心にナニカが走り抜ける。その走り抜けたナニカの後、周りからカランカランと何かを取り落とす音が一斉に鳴った。何事かと周りに目を向けてみれば、衛兵達がさっきまでこちらに対して油断なく槍を向けていたのに対して、それを地面に取り落とし顔色を青くしながら地面に座り込んでいた。

 …おっさんが剣を構えただけでこうなるのかよ。スキルの効果か、それとも歴戦の風格か。どちらにしても厄介だな。そして、影響を受けたのは衛兵だけじゃなかった。


「あっ…。ごめん、雪音。私も殺気にあてられちゃった…。はは、脚に力が入んないやごめんね」


 ポメラも大量の冷や汗をかきながら地面に座り込んでしまっていた。衛兵達とは違ってまだ多少の余裕はあるようだが、それでも戦える状況ではなかった。だから、せめて巻き込んでしまった謝罪の意味で護らせよう。


「ウル、ポメラを戦いの余波から守れ!彼女に傷一つすら付けることを許さん!」

「承知!…ですが宜しいのですか?相手は強大なようですが…」

「どうにかなる!…というか、どうにかする!俺の貞操がかかってるんだからな!」


 よし。これでポメラは大丈夫だ。安心して目の前のおっさんを叩き潰す事が出来るだろう。というか、妹達はなんでこの殺気に耐えられてるんだろうか…。


「はっは!面白いなぁ、お前ら!鍛えられた兵士ですら恐慌に陥るのに、お前らは平然としてやがる!」

「…当然。雪にぃが戦うのに私達が後ろでビビってられないの」

「そーそー。雪にぃを想えば恐怖なんて、全部安心感に変わるしね?」

「このどさくさに紛れて凄い嬉しいこと言わないで、顔がニヤけるから…!」

「ふーん…。果たして肝が強いのか、それともただの能天気なのか。今から確かめさせてもらうぜ!」


 まさかの俺の事を想ってくれながら、耐えているという。何それめっちゃ嬉しいんだけど。お兄ちゃん、幸せ者だわ。

 こうして三対一の戦いの幕が切って落とされるのであった…。




 目の前の三人の女を見て俺、ロメルは相手に対する評価を上げていく。


(こいつら、互いを想いあって俺の殺気を乗り越えるか!今まで色んな対策方法を練られてきたが、ここまで呆れるような方法で乗り越えられるとはな!)


 戦闘時に陥る恐慌に対しては、何らかの魔術をかけておくとか、そういう薬草や薬を服用しておくとかの様々な対策を立てておくのが普通。一部の変わり者は気合いでどうにかするかもしれないが、だとしても一度でも陥ってしまえば抜け出すのも困難な恐慌は対策するものだ。

 しかし、目の前の三人は恐怖を鼻で笑うようになんともならなかった。寧ろ俺に対する戦意を高めていく。

 正直に言えば俺の殺気に耐えきれるのはあの一番小さな少女だけだと思っていた。他の少女達は直ぐに恐慌を通り越して気絶すると思っていた。今までがそうだったから。しかし、後ろの少女は腰を抜かすだけで済んだ上に、他の二人の少女は殺気に臆することなく寧ろ俺に対して殺気を放つ位だ。


(あー、ギルドに欲しいな。こんな度胸のある少女達を是非ともギルドに加入させたいもんだが)


 最初はただの好奇心だった。

 どうやら大きなブラッドウルフを従えながらこちらに向かってくる奴らが居るため、俺らギルドに増援を願いたいと、慌ただしく衛兵達がギルドに伝えに来たのを副ギルド長から聞いた。


「どうするんだ、ロメル。デカいブラッドウルフを従えてるぐらいだし、お前が行くか俺が行くしかないだろうが…」

「ふーむ、アメルはどうするべきだと思う?」

「正直、俺は守りの方がスキル的にやりやすい。って訳で、お前が行ってこい」

「おいおい強制かよ。俺の意思とかどうなってんだよ」

「うるせぇ。早く行ってスカウト出来そうならスカウトしてこい。俺はここでお茶でも飲みながら待ってるからよ」

「ったく、俺の方が立場が上なんだが。その事忘れてんのか?」


 なんて言い合いながら、王より賜った宝剣と最低限の防具を着けて、門へ向かった。

 そしてその向かった門では、既に四人の少女達と一匹のブラッドウルフが沢山の衛兵達に囲まれていたが、全く臆した様子はなく、聞けばあの一番小さい少女が従えてる様だった。その後、ブラッドウルフが自分で名乗ったのは俺もビックリしたが、益々ギルドに欲しくなった。理性的で話も通じそうだし、後は実力さえ伴っていればギルドに加入させようと考えた。そんな訳で周りの制止も振り切って、少女達の実力も確かめる為に軽く少女達を煽って、今に至るのであった。


「まずは小手調べからだな!」

「アホか。小手調べもくそもねぇよ」

「なっ!」


 驚いた。脚を動かそうとしても、全く動かない。そのタネを見ようとして顔を下に向けると、まるで俺の脚を縛るように俺の影から真っ黒な鎖が出てきていた。

 まさか俺に察せさせずに束縛魔術第五階級、ダークネスチェインを使ったというのか!?魔力の揺らぎも詠唱もなしに!

 驚く俺がソレに対応出来たのはまさしく奇跡だった。直感が告げるままに正面へ宝剣、レイアーノを振るう。するといつの間に接近していたのか、間延びしたした喋り方をする方の少女が振るった剣を弾いていた。

 少女は隙だらけだったが依然として脚は拘束されたままで追撃が遅くなる。が、恐らく初心者であろう少女には十分な速さだ。少女にこれを防ぐ術はない。

 まさに剣が当たろうとした時、少女と俺の剣の間に一枚の厚い水色の板が出現する。突然現れたそれごと少女を両断しようとする。が、その思惑は叶わなかった。

 

「なっ!?斬れないだとっ」


 その水色の板が尋常ではない硬さで、俺の剣を弾き返した。

 少女はその板越しで笑いながら、ありえない速さで魔術師の少女の所まで下がっていく。


「あははー。びっくりしたー」

「ちっ、面妖な魔術よ」

「…ちょっと心臓に悪かったぞ、小雪」

「行けると思ったんだけどなー。駄目だったよー」

 

 未だに余裕があるのか。二人の少女は軽く笑いながら戦っていた。

 この化け物どもめ…。さっき死にかけたのだぞ!?確かに多少は死なないように加減をしたが、その事を彼女らが知る訳がないし、さっきの一撃を手加減された一撃だと見抜ける訳もない。化け物め…。


「ま、実はもうあんたは負けてるんだけどな」

「はっはっは!確かに脚は縛られたままであるが、それだけで勝ちだと思わぬ事だな」


 束縛魔術は動きを止められるメリットが大きい。しかしデメリットも大きい。術者はその発動した場から動けないし、縛っている間も魔力を消費し続ける。だから、このまま時間をかけて魔力を使い尽くさせた所を叩く。これしかない。


「はぁ、仕方ねぇけどさ…。妹、影貸してくれ」

「はーい」

「影を貸すだと…?」

「ま、その辺はお前が負けた後でな」


 魔術師の少女は近くにいるさっきの少女の影に手を伸ばす。すると影から幾つもの槍を模した黒いナニカが伸びる。

 そして少女が指揮をするように手を真っ直ぐ振り下ろすと、その黒い槍は俺の真正面に殺到した。


「ぐぬぅ!」


 黒い槍を次々と弾いていく。しかしいくら弾いても、その弾いた槍が再び俺の所へ向かってくる。幾ら弾いても終わりがない。タチの悪い悪夢だ。そんな無限を捌ききれるはずもなく、次第に体力も無くなってきて遂に。


「ガハッ!」


 一つ捌き損ねる。それが俺の脚を貫く。その痛みを感じてるうちに次々と俺の体に貫いていく。腕、脚、腹部。

 全てが貫き終わった時、俺の体は穴だらけだった。


「…み、見事だ」


 それだけ言い終わると、激しい痛みの中で俺は気を失った。




「あー…やり過ぎたかも」

「…問題ない。その場に居るだけで身体が全快する領域の中に入れておいたから。なお、痛みは消えないように調整済み」

「殺意高くねぇ!?あと万能だなおい!」

「いやー、あの人凄いねー。脚縛ってるのに危うく斬られる所だったよ」


 戦いに勝てた事で俺達三人は嬉しかったが、周りは未だ恐慌状態の衛兵達が地面で腰を抜かしていた。

 それを見てポメラの方を見ると、ポメラはさっきの恐怖に捕らわれた状態ではなく、既に普段の状態まで戻って、ウルに支えられながらも気丈に立っていた。


「いやーまさかあのロメルさんに三人がかりでも勝つなんて…。本当に強いんだね」

「やっぱり只者じゃなかったんだな、あの変態」

「それこそ英雄って感じかな。この辺の地域って結構治安悪かったんだけど、ロメルさんが全部力でねじ伏せて治安を良くしたんだよ」

「…因みに何年間で?」

「三日間で」

「わーお、頭おかしい…」


 このまま話し続けてもよかったが、周りの衛兵は巻き込まれただけなのに、恐慌状態のまま放置されてるのは流石に可哀想に思ったので、仕方ないから恐慌から回復させてやることにする。


「…この場の畏れを喰らえ、闇喰の姫」


 俺の影から手が伸びる。衛兵がその手に触られると、衛兵達の冷や汗や震えが止まり、顔色も段々と戻っていく。

 このスキルの真価はこれだ。味方の精神的な恐怖や傷を取り除いてやる事が出来る。だから、ポメラを癒してやる事も出来たんだが、それをすると一緒に戦おうとするに決まっていたので、放置させて貰った。相手はこの街の偉い人だし、流石にポメラを戦わせるのは気が引けたからだ。

 結果論ではあるものの特にさしたる問題は無かったし。まぁ、結果オーライって事で…いいよな?


「ぐぅ……。…ハッハッハ!まさか、この俺様がお前らのような若いもの達に一杯食わされることになるとはな!世の中は広く、俺は修行が足らんらしい!ではまた会おう!」

 

 あれだけ影の槍に滅多刺しにされた痛みからもう復帰して、目の前の男はしっかりとした足取りでこの場を去っていく。

 …まじかよ。あれ、普通の槍に穿たれたのと変わらないはずなんだが。なんで怪我が治ってるからってあんなにしっかり歩けるんだよ、化け物か?

 

「あー…。ひとつ言い忘れていたな。お前ら、後でこの街のギルドに来い。んで、ギルドに所属しろ。悪いようにはしないし、寧ろ優遇してやるからよ。じゃあな。

 …ほら!お前らだらしないぞ!そんな体たらくじゃあこの街は守れないぞ!また訓練し直してやる!」

 

 ロメルは周りで未だに地面にへたりこんでしまっている衛兵たちに一喝を入れた後、今度こそこの場所から去っていった。

 …後に残された衛兵たちは皆青ざめているし、すっげぇ愚痴りつつ、詰所の方へと戻って行った。

 

「なんだろうな…。あのなんとも言えない悲壮感が溢れた背中は…」

「…地獄で裁かれた後の罪人みたい」

「んー、吹雪の言った通りにしか見えないねー。あーあー、可哀想だねー」

「うわ、流石小雪。カラカラ笑いながらそんなん言えるわ…。全然思ってないだろお前な」

 

 なんて雑談しつつ門をくぐり、取り敢えず真っ直ぐ歩き出す。…見物人が多くなってきたしな。こういう時は足早に去るのが一番だ。

 俺から遅れて着いてきたポメラがふと思い出したかのように大きな声を上げる。それに少し驚きつつも足は止めずにポメラも会話に入れる。

 

「あ!ひとつ聞きたいことあるんだけど!」

「ん?どうした、ポメラ?」

「小雪の持ってるあの剣ってなに!?あんなの持ってたっけ?」

「あー、あれな。あれは闇喰の姫の能力で変形させた影をその状態で固定して、誰でも持てるように、そんで何でも切れるようにした、言うなれば『影剣』ってやつかな。割と存在強度はあるみたいで、最悪盾としても使えるぜ」

「うわぁ…。刃こぼれしない武器に、貫かれ辛い盾かぁ…。もう滅茶苦茶だね…」

 

 ポメラは呆れたように溜息を吐く。

 が、そんな事は俺にとってはどうでもいい事で、俺からすれば可愛い妹に傷が付く方が嫌。だから、身を守ることに関しては遠慮とかバランスブレイクには配慮しない。それは妹達と話し合って決めてあったことだった。

 何があっても死なない事は無いだろうし、命が無かったら実況なんかしてる場合でもないからだ。…まぁ、吹雪の近くで怪我してもすぐに治して貰えそうではある。あの子の領域内じゃあ好き放題できるしね…。

 でも、ま。怪我しないことに越したことはないって事で。視聴者もきっと納得してくれるはず。

 

「で、この後ギルドに行かないと行けないんだよな?」

「そーだねー。さっきのオジサンには気に入られてるみたいだしー。自由に動ける身分証明書もついでに貰えそーだしねー」

「…うん、私も小雪に同意見。私達は充分に力を示したから、ああいうタイプはきっと私達を悪く扱わないと思う」

「それはそうだね。間違ってないよ。ロメルさんは豪傑で役人なんだけど、腕っ節だけで上がってきた人だから、純粋に腕の立つ人は好きなんだよ。自分と重ねちゃうんだろうね」

「んじゃあ、これからギルドに向かうってことで。ポメラ、案内頼んでいいか?」

「おっけー!任せてよ!」

 

 という訳で、俺たちはギルドに向かうのであった。

ありがとうございました。

割とよくある展開を持ち込んでしまい、申し訳ありませんでした。が、狼は出したかったんです…。

良ければ、マイリスにだけ入れて、たまに見に来ていただければ更新されているかもしれませんので、どうぞお願いします。

六狗でした。

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