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第086話 護衛

「リッツ、そりゃなんとも奇遇だな。俺達はそのミゴールを……ぶっ殺すのが目的の一つなんだ」


 そしてグレインはリッツに、ミゴールの能力やギルド強襲の顛末を話す。


「なるほど……憑依して人心を操るってか……。自分は表に出ないで、他人を武器のように使う、そのやり方は……許せねぇな」


 リッツはグレインの話を聞いて、憤懣やる方ない、といった様子だ。


「俺達も、ニビリムの住民全員から命を狙われた時は焦ったよ……。まぁその後、ここにいるナタリアが本当に殺されたんだがな……。だから、俺達は闇ギルドの計画を全部ぶっ潰すつもりだ。もし闇ギルドに敵わなかったとしても……少なくとも俺は、ミゴールの奴だけは絶対に許さない」


 グレインは静かにそう話すが、言葉の端々には抑えきれない怒りの感情がこもっており、周囲の者達はその迫力に気圧されている。


「分かった。じゃあ、貴様等が王都に行ってる間、俺達がギルドを護衛する……ってのはどうだい?」


 リッツはそうグレインに提案するが、ミスティが横槍を入れる。


「ん? ちょっと待って魔族さん。それだとミスティちゃんの、依頼で楽してお金稼ぐ計画が出来ないんじゃないの?」


「それはそうなんだけどな……。そこはほら、依頼に行けない分、ボディガード料として報酬をいただくのはどうだろう?」


「あ~っ、それ、名案だね! 」


 ミスティとリッツの会話は、聞いているだけなら普通の相談なのだが、実際はミスティが鏡に映っている自分の姿と喋っているようにしか見えないので、些か奇妙な光景である。


「一つだけいいか?」


 相談している二人に対して質問したのは、グレインである。


「少なくとも命を狙われるのは、アウロラとナタリアぐらいだろうと思っている。たとえばここの職員のミレーヌは、襲撃を受けた時に、操られていたナタリアと会話している筈だが何も危害を与えられなかっただろう? そうすると、護衛対象は二人なんだ。でも、ミスティの身体は一つしかない。だから、せめてもう一人協力者が必要だと思うんだ」


「それじゃあ魔族さん、鏡から出ておいでよ! ……『虚像投影(プロジェクション)』」


 すると、鏡の中にいたミスティが、鏡の外に出てくる。


「ミスティが二人になった……。鏡面魔法って何でもありかよ」


「ううん、そんなことないよ~? 魔族さんのミスティちゃんはあくまで鏡の中の虚像。つまり……、こういうこと!」


 ミスティはリッツに対して殴りかかるが、その拳がリッツに当たることはなく、そのままリッツの身体をすり抜けていく。

 リッツも思わず防御姿勢を取るが、自らに当たることなくすり抜けていったパンチを見て、目を丸くして驚いていた。


「でもさ、魔族さんは魔法使えるでしょ? 魔力は魔族さんの魂から供給されるものだから、その身体でも魔法なら現実世界に作用できるはずだよ~」


「つまり……物理攻撃は全部通り抜けるけど、魔法なら攻撃できるってことか?」


「そういうこと〜」


 グレインの問い掛けに胸を張って答えるミスティ。


「なるほど……。それなら襲われても、最悪物音を立てるとかで助けを呼ぶぐらいの事はできそうだな。なら大丈夫か……な。リッツ、ミスティ、それじゃあアウロラとナタリアの護衛をお願いできるか?」


「ちょいと待ってくれ。一つ問題があるんだけどよ」


 リッツが口を挟む。


「俺は魔族きっての武闘派なんだ。むしろ身体のぶつけ合いで、サブリナ様の侍従という立場までのし上がってきたと言っても過言じゃない。つまり……身体が敵にすり抜けられると戦えねぇんだ」


「「相性悪過ぎだろ」」


「お主……身体強化の魔法ぐらいは使えぬのか?」


 見かねたサブリナがリッツに声を掛ける。


「サブリナ様! 自分は身体強化魔法が得意であります!」


「ふむ……。ではそれで拳を最大限に強化すれば、その拳は魔力を帯びるので、すり抜けなくなる可能性があるのではないのか?」


「流石はサブリナ様! 自分にはそこまでの考えは思いつかなかったのであります!」


「では実験してみようかの。誰か実験台は……あぁ、ダーリン、ちょいと殴られてみるかの?」


 サブリナはキョロキョロとあたりを見回すものの、傍らのグレインに目が合うと、でれっとした顔になり、うわ言のようにとんでもない事を言う。


「嫌だよ! だってリッツの攻撃の威力分からないんだぞ!? 一撃で死ぬかも知れないじゃないか! ……訓練場に木人あっただろ。あれで頼む」


 グレインの予想は見事に当たっており、その後、ギルド裏の訓練場にあった木人は、跡形もなく吹き飛んだのであった。


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