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第117話 王家の交友

ちょっと指を怪我してしまって、執筆速度が落ちています……。

そのため、少しだけ更新ペースが落ちるかもです。

 グレイン達は、今後の行先について、再び洞窟前で相談を重ねていた。


「僕とダラスは同じ意見なんだ。この国と接している三国のうち、軍事力なら北の帝国が一番だから、まずはそこに駆け込んでみたらいいと思うんだ。……戦後の処理がどうなるかは……分からないけどね。闇ギルドとこの国を潰すのが目的なら、それが一番手っ取り早いと思うな」


 トーラスはヘルディム王国の北にある、広大な領地を持つカゼート帝国に行くべきだと主張する。


「西に接しているサボラ王国は、王家同士で代々交友があり、いわば同盟国のような存在なのです。なので、一旦はそこに逃げれば間違いなく保護してもらえると思います」


 ティアは西にある小さな王国、サボラ王国に最初に行くべきだと言う。


「俺は東にある国……ローム公国だっけ? そこがいいかと思ったけどな」


 グレインは東の空を見ながらぼんやりとした様子でそう言った。


「……理由を聞いても?」


 トーラスがグレインに尋ねる。


「あぁ、東の国は……少しだけだが、サランが近いだろ? あの町には……まだ助け出したいやつがいるからな」


 トーラスの問いに答えながらも、いまだに東の空に意識を飛ばしているグレインを見て、サブリナは胸を痛める。


「第一夫人……無事だとよいのじゃが……」


「それなら……今、転移魔法でサランに行ってお姉ちゃんを連れてきたらいいと思いますっ!」


 ハルナが元気いっぱいに声を張る。


「そう……だな……。ただ、サランギルドはアウロラの本拠地だから、既に何らかの対策が施されている可能性が考えられる。つまり……最悪の場合はサランに転移して、向こうでまた闇魔術を封じられて、ここへ二度と戻って来られなくなるかも知れないぞ?」


「でも、アウロラさんはまだ王都にいるはずですよね? 今なら大丈夫なんじゃないですか?」


「そうだな……。まぁ、アウロラが転移魔法を使えないという保証はないが、今はその可能性に……賭けるしかないか……」


 不安そうな様子で立っているグレインの右手を、不意にサブリナが握る。


「ダーリン……第一夫人はきっと大丈夫じゃ。だから……焦ってはいかんぞ? ……そうじゃ、いっそのこと、ここにいる全員でサランに飛んで、第一夫人を救出後、そのまま陸路で東の国に駆け込むというのはどうじゃ? 遅かれ早かれ周囲の国々は全部回るのじゃから、順番など細かい事はどうでも良かろう」


 グレインにはサブリナが一番焦っているように見えているのだが、「全員でサランに転移する」という案自体は悪くないため、あえて何も言わない。


「えぇぇ……。東は……ローム公国……ですよね……。む、昔からの付き合いというものが王家にはありますので……やはり西のサボラ王国に最初に報告して助力を求めるのが筋かと」


 やはりティアは西の国を推してくる。


「確かこの国の北西側は新ヘルディム共和国だったか? とにかく闇ギルドの領地だったよな? 西へ抜けるには、そこの近くを通って行く必要があるから、危険じゃないのか?」


 素朴な疑問を口にするグレイン。


「う……わ、分かりました。では北へ! 北へ向かいましょう!」


 西をあっさりと諦めるも、必死に食い下がるティア。


「北も同じく、奴らの領地の脇を通り抜けることになるよな……」


「いえ、でも……うう……。ひ、東……行きましょうか……? 東のローム公国は私には合わないので、正直な話、東以外ならどこでも良かったのですが……」


 グレインの言葉に、がっくりと肩を落とすティア。


「「「あれだけ言ってた王家の交友は……」」」


「そんなの、ひいひいお祖父様の世代の話ですから、今のサボラ王家は赤の他人ですね……。顔もあまり知らないほどです」


 ティアをジト目で見る一同。


「あぁもう! 分かりました! 大丈夫です! 我慢して東のローム公国に行きます!」


 ティアは自分に向けられる視線に気付き、やけっぱち気味に承諾する。


「じゃあ、念のため、サランの街の外に転移するよ」


 トーラスはそう言うと転移魔法を発動し、グレイン達も次々と転移渦の中へと入っていく。

 転移渦にほぼ全員が入り、残るはセシルとトーラスだけになる。


「「あの……っ!」」


 二人は同時に声を出して驚き、言いかけた言葉を飲み込むところまでも一緒であった。


「と、トーラスさま、お先にどうぞ」


「い、いや、セシルちゃん、レディファーストだよ」


 そして暫し訪れる静寂。


「「あの……っ!」」


 二人はこの後何度かこれを繰り返すのであった。



********************


 一同は、サランの街の東側に広がる林の中に居る。


「ナタリアを連れて来るのは少人数で……できれば俺だけで行って来ようかと思う」


 グレインがそう告げる。


「……それはちょっと危険すぎないかい?」


「何が待ち受けているか分からないんだ。複数人で行って、意思疎通をしている間にやられる可能性だってある。……こういう時は、単独行動が一番なんだよ」


 グレインはニヤリと笑ってそう言った。


「俺が二時間以内に戻って来なかったら、皆は俺を置いて速やかに東の国目指して進んでくれ」


 グレインはそう言って、サランの街へと駆け出していこうとするが、サブリナが引き止める。


「妾も……妾も行くのじゃ。……必ずそなたの役に立つぞ」


「……分かった。じゃあ俺とサブリナで行こう」



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