第1話 自転車に乗る時は、音楽に注意しろ
プロローグ的な感じです。
1998年の夏、就職浪人の私「今村 京子」は、22歳になった。
実家暮らしの為、なんとか生きている。
アルバイトと家事手伝いの二足のわらじで頑張る私は、私の為にプレゼントを買った。
それは、おもちゃだ。
SAGAのスーパードライブ用ソフト「神様のまちつくり2」
街をつくって発展させてくタイプのゲーム。
最初の「神つく」をやり込んだ私は、2が出る事を知ってから、この日をどれだけ待った事か!
「いってきまーす」
ジャージ姿で、化粧もしない!
今日は「神つく2」を朝まで遊び倒す! ……為です、はい。
私は玄関先に置いてある、中学の時に通学の為に買ってもらった自転車に颯爽とまたがる。
今日、明日とバイトが休み! 誰も私を止める事など出来ない!
ポータブルMDプレイヤーを装備した私は、無敵!
イヤホンを耳につけた。
「スイッチ、オーーン!」
カチッ
大音量の音の波に私は包まれ、自転車を漕ぎだした。
意気揚々ゲームショップへ向かった。
今村 京子は、通りなれた道を自転車で走る。
ウッキウキで走る京子の後ろから、居眠り運転のトラックが近づいてきていた。
そして、今村 京子は、家をでて数百メートルのとこで、居眠り運転のトラックにはねられた。
体が動かない。
自転車があんな遠くに……タイヤがカラカラまわってる。
トラック? 交通事故?
買ってもらった自転車こわれちゃった……
自転車に乗る際は、音楽注意……今更だけどね。
こうして、今村 京子は、交通事故により死んだ。
「……ここは?」
死んだはずの今村 京子が目覚めると真っ白なところで特殊な椅子に両手、両足を拘束された状態でいた。
目の前にモニターが沢山並んでいる。
画面が一斉に点灯した。
・人体の再構築を開始します。
再構築 現在 0%
音声が流れ意味不明の文字が画面に流れる。
「何? 声が」
・声の再構築を開始します。
音声が流れ意味不明の文字が画面に流れる。
「え?さいこ? ……何て?」
・最高値を更新します。
音声が流れ意味不明の文字が画面に流れる。
「何の? 意味が分からない」
・脳処理の高速化を開始します。
・続けて、理解力・判断力の強化を開始します。
再構築 60%
・現在の能力数値が足りない為、最高値の更新項目より、不足分の数値を補填、追加を行います。
再構築 68%
「何よこれ? 怖いんだけど……」
拘束された手足を動かすが、外れる様子はない。
・恐怖及び肉体・感情コントロール値の変更
アップデート 完了
再構築 85%
音声が流れ意味不明の文字が画面に流れ続けた。
「お母さん! お父さん!」
今村 京子は、半狂乱になって叫ぶ!
音声が流れ意味不明の文字が画面に流れ続けた。
音声が流れ意味不明の文字が画面に流れ続けた。
音声が流れ意味不明の文字が画面に流れ続けた。
音声が流れ意味不明の文字が画面に流れ続けた。
どれくらいの時間がたっただろうか、音声が流れ、画面に文字や数字が現れ消え、また音声が流れ、画面に文字や数字が現れる……私は、考えるのをやめた。
再構築 100%
・再構築が完了しました。
「お疲れさん、京子ちゃん、それじゃ、ゲーム始めよっか?」
若い男の声がした。
もうどうでもいい。
真っ暗になった。
次の瞬間。
風?
風切り音がする。
私は、ゆっくりと目をあけた。
「って、え? えーー!!」
私は、私は、空を飛んで、って、落ちてる!
「し、死ぬ! 死んだけど、死ぬ! ややこしいな!」
落ちる私
「とにかく、死ぬ!」
とにかく落ちる私。
「なんで? なんで?」
(人体の再構築が終了した為、プレイエリアに転送されました)
頭に声が聞こえた。
あの、椅子に拘束されていた時に聞いた機械的な声だった。
「なんだ、プレイエリアって? なんでもいいから、このままだと死ぬだろボケが!」
(ゲームの説明を開始します、この世界を発展させ、敵に勝てば解放されます)
「ざっくり! 何、その説明!」
地面が近くなってきた、死ぬ。
(次に、シナリオの選択をお願いします。制限時間は、20秒です)
私の目の前に半透明の板が現れ、
シナリオ選択
・A ゴブリンの英雄 勝利条件 勇者を倒し、ゴブリンが生き残る
・B 異世界 勇者の大冒険 勝利条件 ゴブリンを全滅させる
と、表示された。
これって……
(残り10秒 9 8 7)
「カウントダウンをやめろ~!」
勇者一択!
私は、Aを選択した。
って、押し間違い!
戻るボタン、戻るボタンは?
って、目の前に、地面が……死んだわ!
(転送を開始します)
ビシュン!
(神様、起きてください。 神様?)
「………」
(神様? 起きてください)
「………」
(おい、ボケがさっさと起きろ!)
「ひっ!」
何か大きな声がした。
私の部屋にいた、今までのは、夢だったの……?
(起きましたか、神様)
あの、音声だった。
夢じゃなかったー
最悪の気分だった。
「助かったの私?」
(生命、身体に異常はありません)
「そっか、さっき、ボケって言わなかった?」
(言っていません。 今村 京子様は、これより、神様として、シナリオクリアを目指していただきます。それでは最初に、サポートをさせていただく私の名前をつけてください)
……こいつ
「私が神様? よくわかんないけど、あんたがサポートしてくれんのね。 A 嘘つき と、 B 性格悪子 のどっちがいい?」
(では、Cの、セーラ でお願いします)
なんじゃ、こいつ!
「おい、選択外の選択してんぞ!」
(………)
む、無視?!
「あんたは、誰? それと、ここは? 帰ってこれたの? なんで私?」
(質問ですね、私は、セーラ。 貴方の意識から生まれし者、ここは、地球と異なる剣と魔法の世界、この部屋は記憶から作成しました。 貴女が選ばれたのは、わかりません)
私は、窓の外をみると、見知らぬ風景が広がっていた。
ブン
部屋のテレビがついた。
「京子ちゃん元気?」
テレビに高校生くらいの若い男が映っている。
「誰?」
「僕? 管理者。 神って言われたりもしてるかな? 死んだ京子ちゃんを生き返らせて、この世界に呼んだのも僕だよ」
男は、ニタニタ笑っていた。
「なんで呼んだ?」
私は、テレビを睨み付けて言った。
「怖い顔しないでよ~、せっかく生き返らせてあげたのに。ゲームだよ、ゲーム。言ったろ?」
思い出した、この声はあの真っ白なところで聞いた声だ。
「なんで、私なの? ゲームなら、もっと上手い奴なんて、沢山いるでしょ?」
「たまたまだけど、京子ちゃんが言うのも……そうだな、もっと強そうなの連れてくるか。 じゃ、事故の時に戻って死ぬ?」
「嫌に決まってるでしょ、死にたくない」
「じゃぁ、ゲームだ。 クリアしていけば生き残れるよ」
「は? どう言う意味?」
「僕はね、自分の創ったこの世界で、こうやってゲームをして遊んでるの、そんで、10個クリア出来たら、好きにさせてあげるって意味だよ。 元の世界に返すことだって、この世界で生きていくのも自由! さぁ、自由を勝ち取ろう!」
無茶苦茶な奴だ。
頭がおかしい。
理解できない。
「でもね、今まで僕に勝った奴いないんで、せいぜい頑張ってね」
テレビが消えた。
「セーラ、なんなのアイツ」
(この世界に貴女と私を作った創造主。 ゲームの対戦相手です)
「名前は?」
(いえ、創造主としか……)
「そう、じゃぁ、私が名前をつけてあげるわ。アイツは今日から、イカレ山 クソ夫ね)
冷めた笑顔で私は言った。
頭にきた。
人間をナメるな!
(イカレ山 クソ夫 記録しました)
そうそう、セーラちゃんど覚えとくのよ!
と、私は満足して頷く。
「そんじゃ、セーラ! こんなクソゲーさっさとクリアして帰るんだから」
私は、これから始まるゲームを生き抜く覚悟をしたのだ!
……ってか、何やんのかしら? クソ夫に聞けばよかったと後悔した。
はじめましての人も、自分の他の作品を見てくれている人も、見ていただき、ありがとうございます。
ゆっくり頑張っていきますので、宜しくお願いします。