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70話:前触れは何処へ……

 降り注ぐ岩石の雨。


「ぬぉおぉおおおおおお―――!?」


 一つ一つの雨粒がやけに尖って殺意に溢れたゲリラ豪雨を防ぐ術はなく、全速力で逃げ回る。いや、まあ例によって例のごとく私は一歩も歩いてはいないんだけど。


「しぬしぬしぬしぬぅぅっ!」

「いやリーンがそんな弱音吐かないでよ……」


 スズが死んでしまう頃には私なんてもうとっくに死んでることだろう。まあその前にナツキさん辺りが私だけ回収しちゃいそうではあるけど、ますます苛烈になった攻撃の中、そう言いたくなるのは分からないでもない。


 ブレス攻撃、やっぱりあってしまった。


 なにも悪くないと分かっててもきらりんを責めたくなるのはしかたないことだと思う。

 ブレス(吐息)とは呼んでみるものの、なんだろう、天井とか壁とか床を食べてそれをさっきみたいに降り注がせるっていう悪辣極まりないエコフレンドリーな範囲攻撃なんだけど。それを地竜も飛竜もどっちもやってくるから結構洒落にならないし、片方が仕掛けようと岩を食べてるとなんかもう片方がやけに張り切ってくるからものすごくめんどくさい。

 おかげでスズはさっきから走りっぱなしだ。

 ブレスもそうだしなんかときどき尻尾が飛来(・・)するのほんとやめてほしい。スズにはそこまで対処能力ないんだから、せめて鎧着てるときにやってと言いたい。言ったところで届く訳もないと、もちろん分かってるけども。


「尻尾!真後ろ!」

「うぉお!?」


 しゅだっ!と横っ飛び、するその真横をびしゅんっと通過する岩の塊。

 一安心と思いきや、尻尾の先端が地面に突っかかって棒高跳びみたいに吹き飛んで、空中の竜がそれを打ち返すっていうコンビネーションプレイを見せられる。


 ああこれスズは避けらんないやつだなあという確信。


「■」

「やらせるわけねぇっすよねぇっ!」 


 跳躍、さらにアンズの魔法を篭手で受けて飛翔。

 天地逆さまな体勢で、大きく身体を逸らして尻尾の通過点その直下。

 尻尾が宙を舞う瞬間には既に動き出していたきらりんの組んだ両手が、かち上げるように振り下ろされる。


 ごっ!


 完全なタイミングで直撃した一撃によって、私をスズごと引き潰すはずだった尻尾は強引に軌道を逸らされる。空気を砕きながら頭上を通過する岩の塊に少々ヒヤッとしつつ、背後で聞こえるぼぐっ!という音に気を取り直す。


「ありがとぅー!」

「ありがとアンズきらりん!」

「よゆ「―――!」っすぉう!?」

「き、きらりーん!?」


 ざゃぐっ!と地面を抉る音が響く。


 外した腹いせだろうか、殴った反作用で即座に着地したきらりんを、一拍遅れて突撃した飛竜の爪が襲った。


 とはいえ、つい悲鳴を上げてしまったけど、もちろん私がきらりんの姿を見落とす訳なんてなくて、無事は確認できてるんだけどね。


「あ、甘いっすね!」


 爪撃を回避するついでに飛竜に取り付いていたきらりんが、若干引き攣った表情で親指を立てて格好つける姿に改めてほっとする。

 強がりきらりん可愛い。


 ともあれそれなら大丈夫そうだと、スズに抱かれながら周囲を見渡す。


 までも、ないといえばない。

 きらりんとアンズがちょくちょく攻撃を仕掛けつつ、スズ、ひいては私の逃走をフォローしているこの現状。どう考えて一番問題なのは私とスズなんだから、むしろよそ見するなと怒られかねないくらいで。

 MP回復はもう十分、だから早いところ魔法を使うタイミングが欲しいところなんだけど、とりあえず私自身が地面に降りないことにはどうにもならない。かといって、この猛攻の中で下手にそんなことしたらあっさり潰されかねないことは言うまでもなくて、だからこそこうして走り回って機会を伺っているんだけど、みんなの力をもってしてもきついらしい。なにより、相手が怯みとは無縁な硬度を有してるのがきつい。アンズが全力でぶっぱなしても確実にどうにかなるという保証もないし、その後の対応が追いつかなる可能性だってある。


 だからまあ、結局のところ、今は待つだけ。


 とはいえそれも、もう―――


「やれますわ、おねえさま♪」

「分かった。みんな集合!」


 さっと寄ってきたナツキさんの背中に負われたソフィの宣言に、私は即座にみんなを呼ぶ。

 現状無理なく用意できる最高瞬間火力であるソフィのオーバードスペル、そのクールタイムが終わった。


 強引に時間を作るとするなら、つまりここ。


 するとなにを思ったか、飛竜が天井に張り付いて岩を貪り始める。

 ブレスの予兆。

 途端に猛る地竜が雄叫び一つ、どずんっ!と地面を尾で叩くと、猛然と駆け出す。


「五秒でいいから!頑張って!」


 即座にスズから降りて、地面に両足をつく。


「よっしゃこいやぁああああ!」

「止まるっすかねあれ……」

「止める」

「最悪の場合は私が待避させますので」

「たかぶりますの……♡」


 そもそもそこまで距離は離れていない、接触まで一秒の猶予すらなく、私は叫ぶ。


「『領域指定(エリアメイク)』―」

「ぃっしょおおおおお―――!」


 接触。

 衝撃がスズの向こうから吹き荒ぶ。


「『円環(サークル)』」

「ぐぅぅ、きついいいいいい……!」

「■■■■―――」

「とりまぶん殴っとくっすかぁ!?」

「『領域構築(メイクエリア)』―『既定構成(デフォルト)』!」


 地竜の巨体を受け止めるスズの身体はジリジリと押されて、アンズの魔法ときらりんの拳で後押ししてもその勢いは挫けない。


 魔法の展開の遅さがいつになくもどかしい、っていうか飛竜のチャージが終わってる!?随分早食いだなぁ……!


 焦る私の足元に顕現する領域。

 正円とグネグネの二重円、覆う霞は敵を惰弱に落とす力を秘めてはいるけど、この狭さだとそこまで出番はないだろう。次いで霞が集って左右に二つ(・・)の球体が、正面には鎖に絡まれた戦士が形を成す。


 そして。


 私の手元に、吸い寄せられる霞。


 それはみるみる細長く、確かな形を作り上げる。


 1mよりは長いだろう、振り回すのは結構しんどそうな全長。

 その寂れた金属のような全身には細い鎖が巻き付き、なんなら私の左の腕にまで絡みついている。

 片方の先端には霞の集まってできた朧気な玉が鎖のドームの中に閉じ込められていて、そこからこぼれ落ちる霞が領域の中心(・・・・・)にて渦を巻く。


 ここに私の領域は完成した。


 だけど既に遅いことに、私は気がついていた。

 ソフィが既に詠唱を終えていて、そして頭上には、今にもブレスを吐き出そうと構える飛竜がいる。


「『過剰詠唱(おーばーどすぺる)』」

「―――ッッッッッ」


 ―――『焼き尽くして』


 言葉にすれば、ソフィはゆるりと微笑む。


「―――――――――ッッ!」


 吐き出される、岩石の豪雨。

 いやそれは殺傷力とかを考慮してみると散弾とかそういうレベルの、なんなら散弾銃とガトリング砲を混ぜ込んだみたいなえげつない代物で。


 だけどそんなことは、関係ない。


 威力とか規模とか速度とか。


 そんなくだらない概念は全て、ソフィの炎の前には塵と同じだ。


「『やきこがすかえん』」


 ――――――――――――ッッッ!!!!!


 白熱。

 視界すら焼き尽くす火力に、だけど私はソフィの勇姿を逃すまいと目を見開く。

 感動からか、それとも盛大な光量を受け止めた眼球が悲鳴を上げたのか涙が流れるけど、目を逸らすことなんてできる訳もない。


「―――ッッ!!?!??!?」


 絶叫。

 相も変わらず音もなく、だけど白炎のその向こうから聞こえるそれは紛れもなく悲鳴だった。

 これまで、アンズの魔法連打やきらりんの攻撃をものともしなかった竜の、悲鳴。


 はたと、思い当たる。


 ソフィの火力が凄いのは間違いない。

 だけどもしかしてこれ、一周まわって火炎属性弱点になってるんじゃ……?

 いや、だってあの巨人の方は全然余裕で補修してたけど、でもさすがに顔面に喰らったら全然頭蒸発させれそうな気が……。


 なんて思ってると、びゅばっ!と火炎を突きぬけて上に飛ぶ飛竜。

 なんとまあ、その頭はほとんど形を残していなくて、なんなら比較的薄い翼とか結構溶け落ちてるし、全身から光を撒き散らすその姿はかなり痛々しい。


「のがしませんの……!」

「―――!!???!?!」


 追い立てるように動く火炎が、竜の尾を焼く。

 結構えぐい絵面ではあったけど、そこで魔法の効果が切れる。


 炎が止む。


「しとめそこないましたわ……」

「いやいやいや!全然十分だからね?すごいよゾフィ、よしよし」

「おねえさまのためとあらば、なんどでもやきこがしてやりますの……♡」


 ああもう、ほんと可愛いなあこのこの……はっ。


 ばっ!とスズの方を見ると、涙目のきらりんが手を貸して一緒になって押すことで拮抗してるみたいだけど、結構きつそう……?


「やば……死ぬ……」

「ちょ、て、てったーい!」

「どやってっす!?どうすりゃいいんっすかこれぇ!?」

「気合い」

「リコットさんそれは無茶ぶりっていうんっすよ……!」


 と。


 そんなてんやわんやの中、ジャララララ!と駆けつけた鎖が地竜を拘束する。


「■■■っ」


 更にそこへ、アンズの魔法が殺到する。

 これまではその尽くを弾き返していた堅牢な装甲に到達した闇の槍は、だけどその連撃によって確かにその額を削ってみせた。


「―――ッ?!」


 驚愕を見せる地竜、僅かにその力は弱まって。


「『弾き返して!』」

「ぃよいっしょおおお―――!」

「っおおおおおおおおっすぅ―――!」


 スズときらりん、二人の力で地竜を弾き飛ばす。

 砕け散る鎖を尻目に、即座にナツキさんが私を抱き上げる(・・・・・・・)


 両足が離れて、だけど依然として領域は健在。


 それはつまり、当然鎖戦士もまたそこにいるということで。


「『鎖さんは全力で弱体化させて!』みんなは柔くなったところを削りきるっ!」

「まっかせろーい!」

「待ち侘びた」

「反撃開始っすねぇ……!」


 ぎらりと目を輝かせ、スズとアンズときらりんが気炎を立ち上げる。

 きらりんの言う通り、鎖戦士の弱体化があれば削れることが分かった以上はここから明確に攻めに転じることができるというもので、これまでの鬱憤を晴らすという意味でも、ほんと待ち侘びていたんだろう。


 まあ、だからといって私にはこれ以上なにができるでもなく、死なないように逃げ回るだけなんだけども。


 それを可能にしてるのが、新しい魔法、私の手の中にある鎖付き錫杖の効果だ。


誇示する錫杖(セントラル)


 相変わらずのネーミングセンスはすっちん由来なんだろうか、まあそこそこ分かりやすいからいいんだけど、つまりこの魔法の効果は至って簡単。

 『領域守護』に属するこの魔法、どうやら発動すると今私が手に持ってるみたいな、多分領域毎に違う錫杖を召喚できるんだけど、それを持っていると領域ごと移動できるようになる。

 領域ごと移動というのは、つまり今ナツキさんに抱かれながらも真下の領域が効果を失っていないように、結構好き勝手できてしまうようだ。正直ここまでやるのはやばいかもと思ってたんだけど、どうやらかなり融通は利くらしい。

 効果が適応できる領域の範囲が狭かったり、あと他の領域守護の数が制限されたりはするけど、それでも今みたいな場面では結構有用、というかほんとこれまでの不満のほとんどが解消された思いで、私としては大満足だ。


「じゃあみんな頑張って!」


 私が言い残して、ナツキさんがその場を離脱する。

 今回はさすがに敵の足止め役のスズが不可欠ということで、ナツキさんが運搬係だ。

 まあナツキさんなら他の補助がなくたって大丈夫だろうし、私は応援に徹するとしよう。


 ■


「ちぇえりぉおおおおお―――っすぅ!!!」


 きらりんの拳が飛竜の翼の根元に叩き込まれる。

 びぎっ、と音を立ててヒビが広がる。

 だけどやっぱり硬い、鎖に巻かれてなおその硬度は容易く砕ける程じゃない。

 さっき炎に巻かれて結構ダメージを負ったはずの身体は、パーツを一部捨ててサイズを縮小するという強引な手法でほぼ感知しているんだけど、その硬度に変わりないらしいのだからやっていられない。


 即座に飛竜は身体を震わせ鎖を砕き散らすと、そのまま全身で叩き潰すように空中のきらりんを狙う。


「甘すぎっす!」


 くいんっ、と不自然にきらりんが飛竜に引き寄せられる。

 いや、正確には、拳のついでに叩き込んでおいた鞭先をそのままヒビの隙間にねじ込んで、それを引っ掛かりに自分の身体を引き寄せたのだ。


 その挙動によって、突撃する飛竜とすんでのところですれ違う。


 さらに続けて身体を引き寄せ、飛竜が反応するよりも早くその翼の付け根、ヒビの入ったまさにその場へと取り付く。


「いくら硬いっても、ヒビが入ってたら台無しっすよねぇっ!」


 わっるい笑顔を浮かべ、そしてきらりんの乱打乱打乱打―――!


「かち割ってやるっすよぉ!」

「―――!?」


 ふーははははー!とフラストレーションを発散するように高笑いしながらも拳を止めないきらりんを堪らず振り落とそうと暴れ回る飛竜。

 だけどきらりん次々に体勢を変えて、まるでそこに強力な引力が働いているかのように落ちる様子は微塵もない。


 多分、しばらくはあのまま殴りつつけることだろう。

 えぐいなあ。


 一方地上。


「しゃあ『こいやぁぁぁあああああああっっっ!』」


 咆哮はただ真っ直ぐに、それどころじゃない飛竜は捨ておき向かい合う地竜にのみ届く。

 地竜はざっざっと地面を掻き、そして一瞬身構え、


「―――――――――ッッッッ!!!!!」


 咆哮。

 そろそろ聴き飽きたそれに、スズは満面の笑みで体勢を低くもつ。


 なんかさっきから、妙に馬が合うのか同じことばっか繰り返してるんだよね。

 真正面からぶつかり合っての、力比べ。

 相撲でも観てる気分になるそれ、さっきなんてスズがぶっ飛ばされてヒヤッとしたのに、地竜はそれ以上攻撃を仕掛けてこなかったっていう……おかしい、一応殺し合い的な戦いをしているはずなのに、いつから路線変更したんだろう。


 それはさておき。


 互いに気炎万丈、飛竜の方から聞こえる騒音はものともせず張り詰めた緊張の中。


「ッ―――!」


 地竜、疾駆。

 地鳴りと共に迫る竜を、私は真正面から(・・・・・)見据えて。


「頑張ってね」

「へぁっ!?」


 すっ、と距離をつめて、スズに囁く。

 こんなに近づいたのに気がついていなかったらしい、いくらナツキさんの隠密能力があったとはいえ、変な声を上げるスズに若干の不満を覚えつつも、いや、だからこそちょっと意地悪してやろうと思って、そのままスズの背のすぐ後ろで私は観戦させてもらう。


 領域のぎりぎり中にスズがいるけど、罰として命令はなしだ。


 そんな私のわがままに付き合うナツキさんが『一歩でも下がったら承知しませんよ』とでも言いたげな視線をスズの背に突き刺して、アンズは私に寄り添いながら『最悪諸共吹き飛ばす』とばかりに杖を構える。


 ちらと、驚愕の表情とともに一瞬振り向いたスズと、目が合う。


 ―――できるでしょ?


 と、私が冷たい視線を返せば、スズは泣きそうに表情を歪めて正面を向く。


 そんな顔しても許す気はない。


 この私を差し置いて、私が傍にいても気がつかないくらいにそんな意味の分からない石ころと仲良くやってたんだから、命くらい背負ってもらわなきゃね……?


「きれてますわね」

「うん」


 面白くなさそうな様子のソフィに即答すると、それを聞き付けたらしい、スズがピクリと震えて。


「ぅぅぅぅぅううううおおおおおおおおおおおおおお―――ッッ!!!!」


 そして咆哮。

 その身体から立ち上る気炎が目に見えるくらいで……え?あ、あれ?なんか、ほんとになんか立ち上ってる……? 


 戸惑う私の視線の先で、そして地竜が到達する。


 揺らめく紅(・・・・・)を立ち昇らせたスズと、疾走する地竜。


 果たして接触の刹那。


 一歩。


 スズが、半身になるように一歩を踏み出す。

 もちろんその程度が回避になどなる訳もなく、だけど僅かに深くまで、スズは地竜の元へと踏み込んで。


 スズの手が伸びる。


 その光景はまるでスローモーションのように見えた。


 手が伸びて、竜の下顎と頭の付け根辺りに手がかかる。


 即座に身体が反転、涙目ながらもめいっぱいに目を見開いて、歯を食いしばるその表情に、不覚にも胸がときめく。


 竜の鼻っつらがほぼ垂直に地面を抉る。


 私の目前で深く突き刺さる頭。


 そこを起点に、竜の体が浮く。


 見ればスズの手は、竜の頭の付け根、そこに入ったヒビへと突き立てられていて、そして自らの全身ごと、強引に首を、ひいては身体を引きあげたのだと、理解する。


 そして。


「どらっしゃぁぁぁあああああああああああああ――――――っっっっっっ!!!!!」


 倒れ込むようにしながら、スズは渾身の勢いで手を離す。


 地竜が、宙を舞う。


 首辺りにヒビを入らせながら、その巨体が私たちの頭上を飛び越える。


 その軌道を、追ってゆく先で。


「っはぁっ!どーっすかざまあねえっすぅおあああああ!?」

「――――――!?!!?」


 きらりんと飛竜の、悲鳴。


 見れば、正に根元から砕けた翼と共に飛竜が落下しているところで、そしてそこにちょうどスズにぶん投げられた地竜が、モンキーハンティングもかくやっていう感じで……あ。


「き、きらりーんっ!」


 どぐぉぉおんっ!


「「――――――!!??!??!」」


 激突。


 砕け巻ちらされる岩の欠片。


 双龍の悲鳴。


 そして墜落。


 ……。


「……あー、や、やっちゃった……?」

「……スズ(・・)は後でおしおきね」

「っ!?」


 背後で鎧の倒れ伏す音が聞こえるけど気にしない。


 まあうん、でも、なんだろ……ナイスシュート、みたいな?


 ■


 《登場人物》

(ひいらぎ)(あや)

・実質サモナー的ポジションになった二十三歳。霊戦士連れ歩けるというその一点において有用度は十倍近くにも上がる(当社比)。比較的汎用性高いヒリスペを戦士が遅すぎてよっぽど慎重に行くタイミングでもなきゃ運用できなくなるという残念なところはあるけど、基本は便利。スズが地竜とずっと遊んでるのを見て敵性モブにすら嫉妬を見せるやべえやつ。にも関わらず女目当てで喫茶店通いするとかそもそも今別の女への貢物のためにやってるとかダブルスタンダードどころの騒ぎじゃねぇ……。まあ故にこそあやはあやなのです、多分。ちょっと自信ない……。


柳瀬(やなせ)(すず)

・あやに怒られるのが怖くて覚醒する二十三歳。どうしてこうなった……。代わりに段階を一つ増やしました。さすがにそう簡単にユニークはやらねぇぜ。まあどちらかというとこれまで大物と相撲ばっかやってたおかげですね。切っ掛けのひとつ、感情の昂りは結局あやの手によるのが一番でかいので。単純な筋力だけだとぶっ飛ばすのは無理でしたが、頭を支点にすることで地竜本体の勢いをそのまま転用して無事投げ飛ばすことに成功した。でもこれちょっとタイミングとか合わなかったら棒高跳びから倒立回転くらいになってあやがぺしゃんこ……には、まあなりませんが、ともかく成功はなかったと思われます。タイミングごときでこんな無茶が成功する訳ない?誰もやったことないなら分かんないじゃないかっ!想像で勝手なこと言うなよ!(暴論)


島田(しまだ)輝里(きらり)

・お星様になった二十一歳。いや、まああやが取り乱してないのが真実を物語ってますけども。一人で翼落とすとかなにげにすごいことやってるんだけど、まあ見事にスズにかっ攫われましたね。まあ、ちょくちょく鎖戦士も頑張ってた模様ですが、如何せん暴れ回る相手ですから。ほんとは地竜ぶん投げて死に体なスズの上に墜落させようかと思ってたんですけど、さすがにそれは可哀想かなって。目立つところを奪われた挙句地竜ぶん投げられるのは可哀想じゃないとでも……?


小野寺(おのでら)(あんず)

・ちまちま顔面とか砕いてたけど全カットされた十九歳。まあ常々色々やらかしやがるからたまには許してくれ。スズがダメそうだったら最恐さんのときにやったようなフルバーストを叩き込んで諸共ぶっ飛ばすつもりでいたけど、まあ結果上手くいってよかったねと舌打ち。いや、だってあやに嫉妬させるとか許せないじゃん?……お前らの思考回路はよく分からん。


沢口(さわぐち)ソフィア(そふぃあ)

・焼き尽くすの楽しすぎかよ……!な十一歳。放火魔(火炎放射器付き)。すっちんあたりが称号を検討しそうではある。まあ、まだまだだね。次に覚える魔法をどうしようかと悩んでいるんだけど、どっちを選んでもソフィの狂気がなあ……手遅れか……。ところで、ソフィはやってませんが、別にオーバードスペルのクールタイムのときでも魔法は使えます。でも、一度あの快感を知ったらもう普通ので満足とかできんやん……?つまりそういうこと。どういうことだってばよ??


如月(きさらぎ)那月(なつき)

・あやを運ぶ係に任命されたことをいいことにさわさわしてるけど記述すらされない二十四歳。無視とかじゃなくて、完全に身も心も許してるからです。ええ、まあ色々描写してる隙間にそんなん挟もうとしたらやばいことになるからっていうのもありますけど。さすがに18禁なことはできませんが、女の子が女の子の身体をさすさすしてるだけでぼかぁ……失礼、ナツキさんは満足なのです。戦闘中に愛撫(『愛おしみ撫でる』という意味で別に邪な意味なんてないのです。え?ほかになにか意味が……?)しているなど、一切描写してないから読者の皆さんは想像だにしていないことでしょう。いや、まあほんと描写するまでもないくらいちょっとですし。というか誰かに抱かれている時点でみんな似たり寄ったりなんかしてそうですよね。少なくとも筆者の中だと『ナツキさんはやるな』という確信がありましてですね、ええ。お前らそんなんほぼ痴女やぞ。


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