54話:SF世界のファンタジーゲーでSFやってるみたいな
あ、ありのまま今起こったことを言うぜ!今日は3日だと思ったら4日だった!なにを言ってるか(ry
(AA略)
いやほんと、すみません……遅れた癖にこんなクオリティですみません……あとちょっと色々あって不定期更新になります……すみません……。
不定期更新といっても週に2、3回は更新できるはずですので、よろしくお願いします。
さっさと早足に廊下を進む。
右を見ても左を見てもいい気分じゃなくて、かといって前だけ向いてても視界の半分くらいは見通せてしまって、それなら奥に見えている扉の元に、さっさと到着したいというものだった。敵も出ないし……いやまあある意味敵だらけではあるんだけど、戦いはないから進行もスムーズだ。
そんなこんなで、扉に到着。
廊下の行き止まり、その一部を切り取ってそのまま扉に加工したみたいな、もうちょっと照明が暗かったらかなり見えにくかっただろうというような扉。というか、取っ手も凹みもないそれが実際扉だという確証はなかったりするんだけど、その脇にまた角柱が立ってるとこを見ても、まあ、多分そんな感じなんだろうと、今回はさすがに予想がつく。
「えい、ですの♪」
きらりんは一回やったから、今度はソフィの番。
ゔぉん。
きゅるきゅる。
ぎゅいーん。
と、なんのかんのと音を立てて、扉が下にスライドして床に埋まる。
ハイテクだなぁと関心しつつその奥に視線を向ければ、その向こうには部屋があった。
部屋といっても、一般家庭にあるような普通の部屋じゃない。
手術室、みたいな。
それとも実験室とでも言うべきなんだろうか。
なんだか、いかにも切ったり摘んだりしそうな器具とか、ガラス片とか……あと肉片とか血溜まりとかそういう色んなものが床に散乱していて、壁際にはなにも入っていない壊れた棚が並んで、囲まれるようにして拘束具の備え付けられた手術台的なものが理路整然と並んで設置されている。ものによっては血に濡れていたり、腕っぽいのが繋がれていたり、肉っぽいのが落ちていたりするところを見ると、少なくともあの上でなにかしらのグロテスクな行いが行われていたことは間違いないだろう。
「作ったんすかねーここで」
きょろきょろと周囲を見回しながらきらりんが言う。
なまじ納得できちゃう分そういうことはあんまり言葉にしないでほしいなあとか思いつつ、とりあえず入口でまごまごしててもどうにもならないから、侵入してみる。
しゅいーんと、背後で扉が閉まった。でも脇に角柱が生えてるから、多分特に問題なく出ることはできる……といいな。
「敵いないなー」
「つまりませんわ」
「平和とは縁遠そうだけどね」
こう、実験生物的なものか、それとも狂った科学者だろうか、そういうのが闊歩してても特におかしくないと思う。少なくとも遭遇したくない相手なのは間違いないけど、逆に静かすぎるのもそれはそれでお化け屋敷的趣があるから適度に騒がしくしてほしいなあとか、そんなことを思ってみたりして。
とりあえずなにかないかなとみんなで探索してみるけど、あいにく特にめぼしいものは……まあ、これくらい。
『メス』
・肉を切るための小刀。戦闘向けではない。
『ピンセット』
・鑷子とも呼ばれるつまみ上げるための道具。基本的に先端を下向きにして利用するが、意識し続けるのはわりと大変。
『フォーセップ』
・鉗子とも呼ばれるつまみ止めるための道具。ハサミでない。
ここら辺はまあ割と見たことがある部類だとして、他にもなんか点滴台的なものとか魔導具とか色々あったけど、割愛。πちゃんが歓喜していたという事実に飲まれて消えてしまったから仕方ない。もう一回やってきたりは、どうやらしないみたいだけど。
それはまあ、ちょっと残念。
ともあれ色々と探索してみて、その最中になにに襲われるでもなく至って平穏無事に探索し終わってみたところで、次。
長方形の部屋の四隅にある扉の向こうに、そろそろ移動してみることにする。
最初の扉の正面に一つ、その同じ辺のもう片端に一つ、そして最初の扉から右手側に指をさせばもう一つ。
総計四つ、ここまできて引き返すという選択肢はないから選択肢としては三つか。
どれに行くべきかと考えたところで先が分からないなら意味もないだろうと、とりあえず全部開いてちょっと様子を見てみるけど、まあ、入る扉の位置が変わるだけで、光景としては似たようなものだった。
実験室と、扉。
相変わらず敵も他のプレイヤーもいない。
つまり結局、どこを選んでもさして変わりはしなさそうだった。
そうするとまあ、基本的に理由がない限り決定権は私持ちになるらしいから、適当に方向を選んで進んでみる。進んでみても、ざっと見回した限りとくになにも目新しいものが見当たらなかったから、さっさと次に―――
「あ」
適当に選んだ扉の向こう、またも同じような室内。
だけどそこには先客がいた。
「ちぇりおー!」
「#%+=―――!……」
ざむっ、と振り下ろされた槌、潰されたなにかは赤黒い肉片を撒き散らせて、奇っ怪な金切り声と共にポリゴンに消える。多分実験動物的なものなんだろう、このエリアのモンスターには丁度よさそうな見た目をしていた。
けどまあここで気にするべきはそっちよりも、それを倒した人のことだろう。
そこにいたのは、プレイヤーだった。
「ふぃー」
全長にして私の体長を超えるくらいの大槌を軽々と肩に担いで、だるっと息を吐く赤毛ツインテールな少女。格好いいけど露出多めな軽装が、その可愛らしい姿にとてもよく似合っているのが後ろ姿でも分かる。
「お疲れ様ですぅ」
そんな少女に声をかけるのは、なぜか布団を被った少女。布団すぎてもう他のことが分からないけど、床にぱさっと落ちる髪を見るに黒髪ロング……というか長すぎるような気がする。
「……客人だ、ゆず、キヨリ」
そして最後の一人、甚平を着て黒髪を後ろで一本にまとめるという和風スタイルに刀を引っ提げた浪人的な女性。
彼女が後ろの私たちに気がついて刀の柄に手を添えながら振り向くと、他のふたりも同じように私たちを振り向く。
「おん?、ってうぉ!なにあれ偉い人!?」
「違いますよぅ。あれは痛い人ですぅ」
「痛い人かぁ!」
痛い……あー、そっか、うん、そうだ、そりゃあこんなドレス着てお姫様抱っことか傍から見たら痛いに決まってるか……どうしよう、感覚が狂っている……ロ、ロールプレイロールプレイ。
というかそれを言うなら布団被ってるそっちの方も大概だと思うんだけど……?
なんて思っていると、槌の子が槌を肩でとんとんやりながら首を傾げる。
「そんでなんだ?なにか用か痛い人?」
「あ、いえ、通りがかっただけなのでお気になさらず」
「そうか。おい客人じゃないらしいぞのーたん!」
「……そのようだな」
「ならばゆくぞ!」
「ゆきますぅ」
「……すまない」
うおー!と次の部屋に向かう少女たち。布団の子が案外素早いことに驚きつつ、苦い顔をしつつも一人だけ深々丁寧にお辞儀をしてきた和風な子に手を振る。
そして全員がこの部屋から出ていったところで、私たちもひとつ後戻り。
「むぅ、すっごいしつれー!」
「っすねー」
「……向こう。会わないところに」
案の定みんなの気配がとげとげとしている。
私に対する許容範囲の狭さが、心地いいようなむず痒いような、なんかちょっと恥ずかしいような。特にソフィなんか、なにも言わないでにこにこしてるけどあれは次見かけたら問答無用でぶっぱなしてもおかしくないくらいの精神状態だし。
「まあ、言いたいことは分かるから」
そんなことを言いつつ、なでなでで精神の安定を図る。
いや実際、言ってることはごもっともだと思う。
白のドレスを身に着けて、お姫様抱っこで移動する、二十三歳。
痛いどころか痛々しい。
こう、絵面もそうだし、当事者的にも。慣れたけども。慣れてしまったけども。せめて私がソフィみたいなお姫さま的な感じならいいかもしれないんだけどなあ。
なんてまあ、しょんぼりするまでもないけど。
ロールプレイロールプレイ。
さておき、プレイヤーはともかくモンスターがいることも分かったことだし、少しだけ気を引き締めて適当な部屋に―――
どぼっ。
「のぉ!?」
「おおー?」
「わっ」
「■」
「む」
開いた扉の上からずり落ちてきた赤黒い塊が、アンズの魔法を受けてびちゃびちゃと吹き飛ぶ。だけど床に広がったそれはまだ蠢いていて、うぞうぞと集まってひとつになろうとしている。びっくりしたけど、どうやらそこまで凶暴な感じではない……っぽい?
だからこの隙にと、観察の目を発動して、ああ、やっぱりちょっと遅い……けどまあこれなら丁度いいくらいかな……?
なんて予想してみると、それはあっていたらしい、ひとつになって形を成すでもなくただの塊になったくらいのところで、最後まで判明したんだけど……。
「―――『やきこがすかえん』」
その名前を見て軽く引いてる私を尻目に、それは即座に放たれた炎に巻かれて、じゅわじゅわと音を立てて焼けてゆく。
そしてしばらくして、ポリゴンに消えた。
満足気なソフィは可愛いなあと思いながら、とりあえず、モンスターの情報を共有してみる……んだけど。
『実験体No.1129』
LV:9
耐性:物理
弱点:火炎
……うん、なんかもう、ね。案の定というかなんというかSFすぎやしないだろうか。というか1129ってまさかほんとにそんなたくさんいる訳じゃないよね……?
「実験体っすか……」
「まっどさいえんてぃー!」
「どんなじっけんをしているのか、とってもきになりますの」
「ロクな実験ではない」
「今更ですけれど」
まあ、あんな通路を見てたらそりゃあ。
というか、あれにも観察の目を使っとけばよかったかもしれない。もったいないことをした……とは、まあ、思わないけども。
「まあとりあえず、他のも見てみる感じでいこっか」
返答はみんな、肯定。
それならと、ちょっとワンブレイク挟むために退出した部屋にもう一度侵入。
見渡せば、多分同じく実験体なんだろう、色々な特徴を持った生物がうぞうぞと蠢いている。
とりあえず観察の目で名前を確認しつつ、殲滅。
してみたところ、どうやらやっぱりみんながみんな違う番号を持っているみたいだった。
人型で腕がない代わりに胸から触手がぞるぞる生えてたNo.1276。
身体の至る所から金属が生えてて運動が阻害されていたNo.1230
動く骨付き肉みたいなNo.1118
それぞれが独立して動くパーツを組み合わせた人間風のNo.1277
蠢く肉塊その二、でも若干形がしっかりしてた風なNo.1134
ドロップアイテムとしてなにかの魔法的な処理がされてるっぽい肉片とか魔導向きっぽい金属片とかそういうのがぽろぽろ拾えたからSFめいたファンタジーの産物っていうのは間違いないと思うんだけど、バラエティー豊かすぎて方向性が全く分からないっていう。全身から金属が生えてるのと肉塊とか、一体どんな共通項があるんだろう。見苦しいとかだろうか。
まあ謎解きは後回しということで、なにはともあれとりあえず金属片のことをπちゃんに教えてみ、おお?返信だ、早い。えっと……あ、うん、やっぱり。
「山でくれって」
「山かー」
「っすよねー」
「ん」
「ごうたんなかたですの」
「豪胆というよりは……いえ」
ナツキさんがなにを飲み込んだのかはさておき。
とりあえず、目標がひとつできたかな。
πちゃんに喜んでもらえるように、めいっぱい励もう。
■
《登場人物》
『柊綾』
・痛いと言われたのがわりとショックだったりする二十三歳。でもみんながそれを望むからまだスズ離れはできない。スズ離れしたところで歩かないのは変わりないですが。新キャラがあんまりささらなかったのは、ともすればその原因もあるかもしれない。
『柳瀬鈴』
・痛いとか言われるとすっごい頬ぷくぅする二十三歳。それを恥ずかしいという認識は絶無だからその点は全然いいんだけど、あやが侮辱されたというその事実に怒るタイプ。内容如何に関わらず、あや本人がどう思うに関わらず、基本的にあやに対する悪感情すべてに拒絶的である。
『島田輝里』
・痛いとか言われると若干恥ずかしい二十一歳。基本ノリノリでいけるけど客観的に見たら確かにまあちょっと酷いなと。それを理解しているからこそ当事者として反発するタイプ。割と常識人だからね、仕方ないね。
『小野寺杏』
・痛いとか言うやつは死ね、な十九歳。あやを姫扱いすることに至上の喜びを覚えてるタイプだから、それを侮辱するやつは死ね。アンズにとってあやは神よりも近く尊く愛おしい存在であるからして。
『沢口ソフィア』
・痛いとか知ったこっちゃない十一歳。そもそもあやを姫扱いすることにそこまでの意味を有していない。面白そうだからやってるだけみたいなとこある。むしろ自分を含めた全体に対しての侮辱を受け取って怒ってる。あやが悪口言われてもぜんっぜん気にしないけど、自分が言われたらそりゃ普通にキレますよねっていう。
『如月那月』
・痛い痛くないはさておき面は覚えた二十四歳。あやが話を長くしたくなさそうだから沈黙を貫いてたけど、ほんとだったら武力行使してでも説得してたかも。なにはともあれあや優先、あやの望みを中心にしつつ自分の欲望を押し付けて、たまに度が過ぎてお仕置きされたいタイプ。
改めてお詫び申し上げますが、不定期更新になります。すみません。




