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48話:アンズデート回

色々謎の言葉とか出ますが総スルーで大丈夫です。

 AWの世界でなんとも慌ただしい再開を果たしたその翌日。


 それはつまり約束の日で。

 私はいつもの駅で電車を降り、駅前に出てすぐ、彼女を見つけた。

 見つけたというか、もはや無意識レベルで惹かれるようですらあった。


 それほどまでに、彼女はひたすらに美しい。


 色素の抜け落ちたましろ色の髪、生々しくも作り物めいて透き通る肌。赤と呼ぶにはあまりに希薄、けど宝石のような力強い光を湛えた瞳。コンタクトやクリームなどで、今では海水浴すら余裕で楽しめるらしい、アルビノと呼ばれる生体的特徴を有した彼女は、それとは多分関係なく、生来の日光嫌いによって日傘をさしていて。


 近付く私に気が付いて、そしてふわりと微笑んだ。


「あやさん、久しぶり」

「うん。久しぶりだね、アンズ」


 私達は人目もはばからずに、といっても周囲に人はいないけど、仮にいたとしても気になんてならなかっただろう、脇目も振らずに抱き合った。ぶつからないようにと器用に持ち替えられた日傘の下で私達は、冷えゆく身体を互いに温め合うみたいに、それとも二人で溶け合うみたいにぎゅうと互いを確かめる。


 細くて、骨ばって、儚くすらある身体。

 けれどそれでも確かに生きて、熱く、とくとくと、命を刻んでいる。

 抱き締める手に込める力を、未だに私は掴みきれていない。だけどそんなことを無視して、ひたすらに強く、ただわがままに身を寄せて、触れていたいと、思うほどには愛しくて。


 どれだけの時間そうしていただろう。


 しばらくして私は名残惜しみながらそっと、顔を向き合える程度に身体を離して。

 その途端に、アンズの視線に捉えられた。

 甘えるような、縋るような、恍惚とした目が、私を見ている。


 私を誘っている。


 生来の甘え上手に、言葉や仕草なんてものが必要ないことを、私は何度もアンズに教えられていた。今みたいに、ただの視線で、表情で、私はアンズが堪らなく、どうしようもなく欲しくなる。むせ返りそうな愛しさに胸が詰まって、どうしてか泣き出したくなるくらいに追い詰められるのだ。


 そんな私にアンズは、そっと視線だけで伝えてくる。


 卑しいまでに焦がれる私に、赦しを与えてくれる。


 すると私は頭が真っ白になって、それとも真っ赤になって、気がつけばアンズの唇を奪っていた。

 紅も刺していない薄い唇、ほんの少しだけ乾燥したそれを、私の唾液でとろとろに溶かすみたいに、貪るように舌を踊らせる。唇のしわの隅々まで私の独占欲を染み渡らせる。


 本当にアンズは私の心を壊すのが上手い。


 脳の片隅で苦笑する、そんな思いは記憶にすら残らない。

 ただひたすらにたっぷりと唇を貪って、それから開いた口腔に舌を侵入させれば、外気とは裏腹に熱く濡れた肉が私を出迎えてくれる。それが堪らなく嬉しくて、嬉しくて。


 それからしばらく私は、必死になってアンズの口を貪った。


 年上の女が、年下の少女にこうも弄ばれる。

 言葉一つなく、ただその目で、表情で。


 それは多分どこまでも滑稽で、でも、果てしなく心地よかった。


 とはいえ、ここは外、地域的に南寄りとはいえ冬真っ盛りであればそんなことは些事でしかないし、抱き合っていたところで、どれだけ沸き立ったところで寒いものは寒い訳で、特にアンズは虚弱と言って差し支えないくらいだから、ずっとそうしている訳にもいかない。


 私は、諦め悪く、せめてアンズの口の中を全部愛してからと、念入りに歯列を舌先でなぞったり、親知らずの気配を感じさせる膨らみをつついたりしてから、それでようやく言い訳も効かなくなって、口を離した。


 多分、それはそれはみっともない顔をしているんだろう、そんな私を見て、アンズはからかうように笑う。


「あやさん、大胆」

「意地悪言わないで」

「意地悪じゃない。嬉しい」


 ちゅ、と、頬に触れる唇。

 それだけで胸が弾んで、私はアンズの言葉を疑えなくなる。


 狡いなあなんて思いながらも、私はお返しにアンズの頬に口付けた。

 赤らんだ頬は、けれど表面は冷ややかで、その奥の熱をより熱く感じさせるみたいに。


「寒くない?」


 アンズの今日の服装は、なんというか、暖かさより可愛らしさを優先したみたいな少し薄手のワンピースだ。ポンチョみたいなものを羽織っているとはいえ、この寒空の下ではあまりに心もとない。それともあるいは、部屋着のまま来たんじゃないかと思える。


 だから少し不安だったんだけど、アンズはゆるりと首を振った。


「あやさんと一緒だから」

「……そっか」


 こそばゆいというか、なんというか。

 そんなことを言われると、無条件で嬉しくなってしまう。


 でも無理をしてほしくもないから、それならと私はコートの前を開いてアンズを抱き込んだ。ついでに日傘も受け取れば、アンズはそっと私を見上げてはにかんだ。


「あやさんは、狡い」


 そんな可愛らしい抗議には、額に口付けを落とすことで応えておいた。


 ■


 暖房の効いた部屋の中、二人とも裸のまま、毛布にくるまってゲームをする。

 なんというか、怠惰の極みみたいなこれが、アンズとのデートのほとんどだった。アンズが出不精だから、仕方ない。わざわざやりたくないことをしたって、楽しくないし。その割に私との待ち合わせの時はいつも待っていてくれると考えると、喜びも一入(ひとしお)だ。


 そんな私たちがやっているのは、VRやらARやらが跳梁跋扈する昨今においてもまだまだ現役な、手持ちのリモコンで操作する、ディスプレイタイプのゲーム。今は格闘ゲームをやっているけど、まあ特にこだわりもなく色々やる感じで。どうせどんなゲームでもアンズには勝てないからなにをしても結果は同じようなものなんだけど、それでも一緒に楽しみたいからと、なんとかかんとか食らいつく。


 俗にレトロゲームと呼ばれるらしいディジタルのならまだ辛うじて戦ってる風にもなるんだけど、アナログになってくるともうダメだ。動きを見れても身体が動かないし、何度やってもあの立体的なボタン操作に慣れる気がしない。なんで押しボタンが全部くりくり動くようになってるのか全く意味が分からない。それを涼しい顔でこなしてしまうんだから、まったくアンズは凄い。どうして小指以外の指をバラバラに動かせるんだろう。訳が分からない。


「あー」


 画面の向こうで、私の操る筋骨隆々な二足歩行トナカイが、腕三本足五本顔二つというキメラティック幼女にコンボを決められて、残り僅かだった体力ゲージを失ってしまった。

 本日四敗目、累計で言えばどれだけだろう、手を替え品を替えやってみたけど、結局半分削るのがやっとだった。


「また負けた」

「ん。そんなに甘くない」


 上機嫌な様子で笑みを浮かべるアンズが、そして目を閉じたから、私はそっと口付けをした。何度も繰り返したせいですっかり唇はふにゃけてしまっているけど、どうせならもっと、零れ落ちてしまうのを目指してみよう。

 なんて、さすがにそれは冗談だけど、それからしばらく、アンズを愛でる。ゲームはそっちのけ、勝利演出を終えて決めポーズを続けるキメラティック幼女がどことなく呆れているような気がしたけど、そんなものはほんの一瞬で視界の外に弾かれる。アンズ以外の全部がなくなって、そしてその目に誘われるままに。


 ちなみに、好きと言いながら色々なところに口付けをするのが、アンズはお気に入りだ。アンズの肌は芸術品みたいに綺麗だから言われなくともしてしまうけど、恥じらいに頬を染めて小さく声を漏らすその様は、見ていて飽きない。


 しばらくして。


「そろそろ、変える」

「うん。あ、今度は協力プレイみたいなのやりたいかも」

「分かった」


 そう言うと、アンズはコントローラーを弄って色々と操作する。ぶっつりと消えた幼女に別れを告げるまもなくアンズはどんどん操作を続ける。その手つきに迷いはなくて、最近ダウンロードしたらしい、メニューのトップにおいてあったゲームを起動した。


「シューティングゲーム。機体と同じ色の弾には当たっていい」

「へー。あ、それで盾になったりするんだ」


 私の操る赤色の機体が、アンズの白色の機体に迫る赤色の弾に当たって無効化した。お返しとばかりに撃った弾は、だけど赤い敵に当たっても有効打にならなくて、代わりにアンズの白い弾に撃たれて撃墜されていた。


「これ、一人プレイのときどうなるの?」

「モードチェンジできる」

「忙しそうだね」

「二人プレイ推奨」


 淡々と言うアンズに、ついつい頬が緩む。

 それはまた、なんとも嬉しいことだった。

 もちろんアンズなら、一人プレイだって余裕でこなせちゃうんだろうけど。


 しばらく二人で、お喋りしながら、世界を救うために頑張った。

 主にアンズの頑張りが大きいのは、まあ言うまでもない。


 それから何面かのボスをやっつけたところで、ふとお腹の虫がウォーミングアップを始めていることに気がついた。


「んー、そろそろお昼だね」

「もうそろそろ来る」


 寝転んだまま伸びをしながら切り出すと、アンズはそんなことを言いながら傍の時計を見やって、もぞもぞと毛布から抜け出した。そして畳んでおいてあった服を身に着けると、部屋を出ていく。同時にインターホンが鳴って、なんやかんやと受け答えの声がした。


「お昼」

「わー」


 戻ってきたアンズは、手に宅配ピザの箱を重ねて持っていた。

 考えてみたらアンズとお泊まりデートは初めてだし、こういうのもありかもしれない。誰かの家じゃないとできないことは、なんだかそれだけでくすぐったい。


 によによしていると、アンズはピザを置いてまた服を脱いでから毛布の中に戻ってくる。おねだりするみたいに見つめられたから、またひとつ口付けをして。

 それから、互いにピザを食べさせあった。

 普通にあーんをして食べさせっこしたり、口に咥えて両端からはみはみしてみたり、それとも咀嚼してるのを、まるで親鳥が雛にするように口移しで。


「なんか、ダメになりそう」


 冗談めかして笑うと、急に口を塞がれる。

 爛々とした目が間近にあって、私は為す術もなく口内を蹂躙された。

 トマトとチーズの味が鼻腔を遡って、油に滑る唇がなんだか切ない。


 じゅくじゅくと下腹部が熱くなって、幸福が押し寄せてくる。


 ぽやぽやした頭では、アンズが口を離したことにも気が付かなくて。


「……一緒に、堕ちよ」


 耳元の囁きに、私はぞくぞくと背筋が震えた。


 シチュエーションだとかタイミングだとか、そんなものが酷くどうでもいい程に、それはとても甘美な誘いで。拒む意味すら見当たらなくて。


 そして。


 気が付けば、私はアンズの膝枕で頭を撫でられていた。

 慈愛と性愛に濡れた目が、私を見下ろしている。


「おはよう」

「おはよう。もしかして、寝ちゃってた?」

「少しだけ」


 言って時計を見せてくれるけど、ピザが届いてから三時間と少し経っていた。のんびりピザを食べて、それから……えっと、少し記憶が曖昧だけど、どうやらアンズと盛大に愛し合ったらしい、我ながら気が狂ったとしか思えないくらいに声を上げていた記憶がある。


 ううむ、魔性だ。


 アンズは本当に、なんでかよく分からないけど、私を壊すのが上手い。弄ばれるのも嬉しいから文句なんてないんだけど、年上としての威厳的なものが、こう、あったらいいなと思う訳で。


「シャワー、浴びよっか」

「ん。べたべた」


 肌をぺたぺたされると、無性に恥ずかしい。

 それを隠すように起き上がって、アンズと一緒に浴室へ向かった。

 お湯を張りながらお互いに身体を流して、その長い絹の髪を丁寧に梳いて、溜まった浴槽の中で太ももをマッサージしてあげると、アンズはいっぱい喜んでくれた。


 アンズに奉仕するだけで生きていたいと、私は切に願った。


 ■


 ゲームをして、溶け合って、ゲームをして、重なって、ゲームをして、夜ご飯を作ってあげて、またお風呂に入って、そしてまた……そんな蕩けるような一日が、気がつけば二日目になっていて、なんなら日が変わったという境目が分からないくらいだったけど、身体はそう易々と日を忘れたりはできないみたいで、私達は気がつけば眠っていたらしかった。


 目覚めれば、お昼前。


 隣を見れば、アンズは白い髪に包まれて安らかに寝息を立てていた。

 あどけないその表情が堪らなく愛しくて、私は髪の上からほっぺたに口付けを落として、そのままじっと見つめていた。


 しばらくするとアンズは目を覚まして、眠気覚ましとばかりに唇を奪ってから、微笑む。


「おはよう」

「うん。おはよう」


 お返しに首筋に吸い付くと、アンズは私の頭を柔らかく撫でて甘やかしてくれる。


 いげん……。


 それから差し出されたコントローラーを受け取って、また二人でゲームをした。

 協力プレイのアクションゲームなんだけど、私が下手だからアンズがいっぱいフォローをしてくれて、なんだか全く違うゲームみたいだった。ボスキャラへのトドメも譲ってくれるし、なんだろう、まるで介護でもされている気分だった。


 ……あながち間違ってもない。


「あ、倒した」

「ん。ナイスアタック」

「ありがと」


 ピコピコと、ゲームは続く。

 難易度の上がるギミックにも、負けじと奮闘するアンズ。

 私のお荷物度合いがどんどん増していって申し訳なくなるけど、アンズはそれがいいって言って、こういうゲームは欠かさずに入荷してくる。まあ本当に嬉しそうだからいいんだけど、こう、威厳が……まあ、いいか。


 ピコピコ。


 んー、さすがにアンズのフォローがあっても私がぽんこつだとミスが出てくるなあ……その度にむっとするアンズが、ごめんねと思うと同時に可愛くて目が奪われて、するとまた危うくミスをしそうになって、助けられて。

 嫌なマッチポンプだった。


 さておき、そろそろお昼かな。


「そういえば、今日はお昼どうするの?作ろうか?」

「あやさんのご飯、食べたい」

「分かった。じゃあ一段落したらお昼にしよっか」

「ん」


 そんなにも嬉しそうな顔をされると、作り手冥利に尽きるというものだった。

 なににしようかな。卵がいっぱいあったし、お肉はだいたい揃ってるし、オムライスにしよう。ミックスベジタブル、あるかな?


「あ」


 お昼ご飯のことを考えていると、間抜けなミスをして私のキャラクターが死んでしまった。これまで積み重ねてきた結果で、遂にゲームオーバーだ。

 目の前に残機アップがあったのに……。


「ごめんね」

「ん。ごはん」


 どうやらゲームよりもお昼ご飯の方が楽しみらしい、アンズは全く気にした様子もなく、むしろわくわくと視線を向けてくる。昨日の夜ご飯で味を占めたらしい。


 アンズの好きをまたひとつ私が埋められたと思うと、胸が踊る。


 上機嫌で、鼻歌なんか歌いながらご飯を用意して、二人で一緒に食べさせっこをした。

 これまでのオムライス史を塗り替える美味しさだったけど、多分これは自画自賛ではないと思う。


 そんなこんなで。


 お昼ご飯を食べた後は、またゲーム。

 今度は対戦型の落ちものパズルゲーム。

 操作はシンプルで、単純に頭の回転勝負みたいなはずなのに、やっぱりどうしても勝てない。いや、だからこそ、なんだろうけど。


「そういえば」


 相手の思考を乱すためにと、盤外戦術を仕掛ける。

 あ、うわ、ミスった。


「どうしたの」

「あ、うん」


 策士策に溺れるというやつだろうか、あっさりと自爆した私に情け容赦なくトドメを刺したアンズが訊ねてくる。

 まあ、わざわざ会話を途切れさせるのもおかしいし、訊いてみたいことがあったのは確かだ。


「アンズっていっぱいゲームやってるけど、なんでAWはやってなかったのかなって」


 ゲーム一覧の中にはRPGみたいなものもあったし、あの動きからしてVRがダメだなんていうこともないだろう。

 だからちょっと気になったというだけで、そう大した応えが返ってくるとは思っていなかったんだけど、想像よりも遥かに真剣な表情で、アンズは私を見た。


「人間が嫌いだから」


 飛び出た言葉は、いっそ懐かしさすら覚えるもので。

 かつてそう言って私を拒絶した姿が脳裏に浮かんで。

 いつの間にか随分と良くなっていたのだと思い込んでいた私は、驚きに目を見開いてしまう。


 同時にどうしようもなく胸が苦しくなって、涙が出そうになる。


 そんな私の頬に触れて、アンズは続ける。


「人間が嫌いだから、人間と関わるゲームは嫌い。だからやってなかった」

「でも、みんなは、」

「あやさんがいるから」


 その言葉は、あまりにも痛かった。

 胸が痛くて、心が痛くて、けれどどこまでも―――


「……それにあの四人……訂正、三人は、そんなに嫌いじゃない」

「やだ」

「え?」


 きょとんとするアンズに、はっと気がつく。


 私は今なにを言ったんだろう。

 いやなにをというか、そんなことは分かりきっているんだけど。


「な、なんでもない」


 無性に恥ずかしくなって、私は目を逸らす。

 どうしようもなく醜い自分を、見てほしくなかった。


 うぅ……毛布が足りない……。


「……あやさん」


 しばらく毛布に埋まっていると、慈愛を感じさせる声色で名前を呼ばれる。

 そしてもずもずと、同じように毛布に潜って、強引に目を合わせてくる。


 それだけで私は、全てを赦された気持ちになって、涙が流れてきた。


「あやさんだけ」

「……うん」

「あやさんだけが、好き」


 その言葉でチョロい私は簡単に機嫌を直して、アンズといっぱいイチャイチャした。

 そして、なによりも私のことを好きだと、なにはなくとも私だけあればいいと、そう示すみたいに一生懸命に愛してくれるアンズを撫でながら、私はそっと笑う。


 まったく馬鹿だなあ私は。


 アンズが私以外に心を許すだなんて、そんなことある訳がないのに。


 ■


 《登場人物》


(ひいらぎ)(あや)

・ここまでの積み重ねで着々とヤンデレめいてきて筆者も困惑中な二十三歳。まあものとしてはどちらかというとメンヘラですが。とはいえこれはちょっとした嫉妬であって別に可愛いもんでしょう。多分。少なくともアンズはそう思ってるはず。自分は複数人に愛を向けるのに相手がそうであると嫉妬して、更にはそれが異常であると微塵も感じていない辺りにあやがあやたる所以のようなものを表現しているつもりです。好きなものは仕方がない、と、好きな人には自分だけを見ていてほしい、というふたつを独善的に融和させている感じ。そういう所まで堪らないという変わり者とか、まあそれは仕方ないという器の広い人とか、それでも構わないという盲信者とか、だからこそ自分だけのものにしたいという狂ったロリとかに好かれる。ところで唐突な話ではありますが、あやの『目がいい』という特性は結局のところ好きな人の一挙一動視線の動きから目尻の震えまでその全てを見落とさないための観察力と、自分の好きを口より雄弁に余さず伝えるための目力に集約されます。だからこそアンズの誘いに簡単に持ってかれる訳で、裏を返せばその事実はあやがその瞬間たしかにアンズだけを見ているということの証左でもある訳です。アンズに限らず、脇目も振らず自分だけを見つめてド直球で好意を示されるとさすがに無反応ではいられませんし、絶対的に裏切りがありえないという確信を植えつけられたら無下にもできませんよねっていう。AW内においてそれは、あくまでゲーム、つまり仲のいいみんなで遊んでいるようなものという理解に基づいて普遍的に活用されているため、結果なんかすごい目がいいこいつ!ってなっているようです。なにせその場においてたった一人を優先することは他の誰かにとっての裏切りに他ならない訳で、あやは未だに上手く適応できていないのでちょくちょくアンズを筆頭に持ってかれますが、それでも基本平等を目指すために、視野を広げる必要があるのです。もちろん、ゲーム内だからこそ現在のようなナツキさんばりの活躍ができる訳ですが。というか長ぇ……。とりあえず終わり。


小野寺(おのでら)(あんず)

・できることならあやと永遠にゲームをして互いに貪りあって死ぬまで生きていたい十九歳。視線と表情と仕草だけであやの理性をぶち殺すという特技を持つ魔性。ただ、それはたゆまぬ努力の賜物であって、あや限定にチューンナップされている。つまり魔性。天性の才能のみならず暇さえあればゲームをして、暇がなくてもゲームをしているのでゲームの腕前はとんでもないという設定のおかげでAWでも大活躍。ただ、リアル方面であやとの関係性が変わっていくなんていうことは、少なくともゲームの話時代ではほとんどないと思われるため、今回のデート回が終わればリアルではあんまりスポットが当たらなくなる。予定。スポットが当たらないだけでやることはやりますけどね(下世話)。ちなみに唐突に明かされたアンズの人間嫌いですが、AW内とはいえあやが気がつかなかった程度には良くなっています。そこら辺の話は、未だどういう経過を辿ればちょうど今に落ち着けるのかぜんっぜん分からないなりにどうにかこうにか考え中ですが、一つ間違いないことはあやは人間だということですね。書くとしたらタイトルは『堕天の話』?ちょっと仰々しすぎんなこれ。


〜適当解説風〜

『アナログCPU』

・IT知識も機械的知識もほぼ皆無な筆者が勝手に妄想した新技術。ディジタルの信号に基づくのではなくアナログな信号に基づくCPU。また、その他のパーツの仕組み全般もディジタルとは色々異なる。とりあえずクロック信号とかガン無視していくけど、間になんらかの処理を挟めば互換性もありえる。つまるところ0と1の間を無限に解釈するみたいな感じで、故に原理上、処理速度に限界が存在しない。


 まあ、SFってサイエンスファンタジーですから(目逸らし

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