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39話:別におまけ要素ではない

お久しぶりです。

そろそろ毎日投稿に戻れそうな気配です。

解放感が凄まじい……。

 AWに戻って。

 またあの真っ白な景色に少し目を眩ませて。

 そして瞬きの隙間にやってきたミラさんは、私たちを見てニコリと笑う。


『また会ったね』

「会えましたね」

『その通り、実にその通りさ』


 私が返すと、一体なにが面白いんだろう、ミラさんはくつくつ笑って、それからまた宙に浮かぶ。そこだけ見ればなんだか不思議な光景だけど、それはつまり私がお姫様抱っこの体勢になったということで、まあとりあえず準備万端だ。


『さてそれではどこを案内しようか。とは言っても私に出来ることなど、ちょっとした目印になることくらいだけれどね』


 ……そう言われても、考えてみればそう大して目的がある訳でもない。そもそも街はリスポーン地点の更新のために寄りたいというのが一番の理由で、それはもう終わっている。あとはまあ道具の補充くらいだけど、それはミラさんの手を借りなくてももう行けるし……かといって、口振りからして誰でも来られるような場所じゃないみたいだし、せっかくの機会を不意にはしたくない。


 さてどうしよう。


「あ、じゃあ私からいいっす?」


 なんて思っていると、みんなが目を見合わせたところできらりんが手を挙げる。


「折角ならこの街特有みたいなところに行ってみたいっす」

『特有、なるほど。確かにどこにでもある場所に行ったところでそう大して意味などないだろうね。いやまいった、それはむしろ私から提案してもおかしくはないことだった』


 なるほどそういう考え方がある訳だ。


 そんな風に納得した様子で、それからミラさんは言う。


『とすると私が案内することの出来る場所は、生憎とただ一つに限られてしまうね。いやはや申し訳ないことだけれど、こればかりは許してほしい。流石に存在しないものを見ることなど誰にも出来ないのさ。いやあるいは誰にでも出来ると言うべきかもしれないけど、まあなんにせよ存在していないものなんてものは見ようとしたところで見えたりはしないんだから、仮に存在せしめたとしても到達することは容易ではないんだよ。故なれば、確かにここにあると私が知っている、つまりは私の案内出来る場所というのは、やはり一つに限られるね。けれどそれは実のところ案内するまでもないほどに目立つものなんだ。なにせこの街において最も大きな場所なんだから、仮に私の案内がなかったところで少し目が慣れれば(・・・・・・)容易に見つかるというものさ。君なんかは、もう見えていてもおかしくはない』

「え?」

例えば(・・・)君のいるそこが(・・・・・・・)既にその目の前(・・・・・・・)だと言ったら(・・・・・・)どうだい(・・・・)?』

「……わ、ほんとだ」


 言われて、私は気がつく。

 そこには壁があった。

 いや、それは壁なんかじゃなくて、それを理解するのに一瞬かかって、ようやくその正体を知る。

 それはドームだった。

 真っ白な半球が、確かにそこにある。大きくて、大きいからこそ景色を圧倒して、目に余る。だからきっと見えなかったんだろうと、そんな納得をしてしまうような、それは大きなドームだった。


「お、おおおぉぉ!?すごー!」

「で、でっかいっす……!」

「首が痛い」

「うちのべったくくらいはありますわ」

「……やはり不思議ですね」


 少し遅れてみんなも気づいたらしい、そのドームのあまりの大きさに驚きの声を上げる。まあソフィの感想はさすがに次元が違うけど、ほんとに大きいなこれ。


 私たちの反応がお気に召したらしい、ミラさんは楽しそうに笑う。


『ようこそ、歓迎しよう』


 その言葉に応えるように、ドームの一部がゆっくりと開く。


『ここはこの世界においてただ一つ、世界の外を垣間見ることが出来る場所』


 その向こうは、この街に似つかわしくない闇が覗いて。


『数多呼び名は存在するけれど、それでもひとつに定めるとするなら、そうだね』


 そんな闇に飲まれるように、ミラさんの姿は歪んで。


『ここは『迷界管理所』―――この街の大人気スポットさ』


 以後、お見知り置きを。


 なんて言って、ミラさんは。

 初めて私以外のナニカの顔で、笑った。


 ■


 迷界管理所。

 その説明を聞いたきらりんの言葉にいわく、ランダムダンジョン。

 なるほど、その性質も環境もその全てが降り立つまで未確定、アトランダムに決まるとくれば、確かにそれはランダムダンジョンと呼んで間違いないだろう。その原理はミラさんの話を聞いたところで全く分かりはしなかったけど、まあ少なくとも別に重要な事でもない。 


 ミラさんが言うには、この施設を通して私たちは迷界と呼ばれる場所へと行くことができるらしい。そこは色々な世界の可能性がひしめく場所でなんたらかんたら、降り立った途端に定まって、小さな世界を作り出す。その世界を冒険して、遥かかつてに死に絶えたモンスターと戦ったり、はたまた遥か未来に存在し得るアイテムを獲得したり、あるいは世界に有り得ない存在の仮想と遭遇したり、まあなんでもありの体験をしよう、というのがこの迷界管理所のコンセプトだとか。もちろんその性質上危険は付きまとう訳で、迷界に居られる時間に制限をかけてみたり、迷界からいつでも戻れるようなアイテムを支給してみたり、利用者をランク付けしてできる限りそれに合わせた危険度の迷界に飛ばしたりするんだけど、それでも予期しないトラブルとかで帰ってこない人も少なくはないらしい。ただでさえこの街にやってくる人が少ない上に、更に帰る人が少ないとくれば必然的にその存在を知られる機会というのは少なくなる訳で、あまり利用者がいないというのが少し寂しいとか。


 その点来訪者ならその手の心配は全然ないから、そういう意味でも真っ先に紹介するべきだったとミラさんは反省している様子だった。とりあえず今はちょうど私たちしかいないらしいけど、今度から来訪者を迎えるときは、とりあえず四の五の言わずここ連れてくるつもりらしい。流石にそれはどうかと思わないでもなかったけど、まあ、うん、頑張れ。


『それはさておき、どうだろう。せっかくの機会だ、是非とも君たちに迷界管理所に登録して欲しいのだけど』


 入口での出来事は気のせいだったのか、相変わらず私の顔で懇願してくるミラさんに、私たちは顔を見合わせる。

 明らかにスズときらりんが乗り気で、アンズはあまり乗り気ではないけどさっきミラさんを危険性について散々質問攻めしていたからある程度納得していて、ソフィはなんでもよさそうで、ナツキさんは私に任せるつもりらしい。


 まあ、私も特に否定的な意見はない。

 ゲームのシステムの一環なんだから、そう理不尽になにかある訳もないだろう。


「じゃあ、登録してみようかな」

『それは素晴らしいっ』


 すごい食いつき。

 の割に身体は動かない辺りちょっと面白い。顔のパーツは動くんだから全身動かせても別にいいだろうに。


『とすると色々と登録をしてもらうことになるのだけれど構わないかな。いやなに、そう時間はかからないとも。ああそうだ、なにか個人を識別できるようなものはないかな。あるのなら色々と早いんだけれど』

「識別……」

「冒険者カードで構わないのでは?」

『もちろん構わないとも。あれはこの世界で最も優れた識別子の一つと言えるだろうからね』


 そういうことならと、みんなで冒険者カードを渡す。

 渡すというのも、手が動かせないのに一体どうやって受け取るのかと思っていたら、まるで水面に落とすみたいに、ミラさんに……というよりはミラさんが借りているという私の像が映っているその平面に、波を立てながら入り込んでしまった。


『では少しばかり手続きをしてくるとしよう。待っていてほしい』


 言って、ミラさんは消える。

 ふと、白の中だからこそ像ができてどうたらこうたらと言っていたミラさんがドームの中、つまりは純黒の中でも普通にそこにいたという不思議に思いあたったけど、多分訊いたら答えてくれるだろうから訊くのはやめておこう。いや、うん、ミラさん自体には割と好感を持っているんだけど、理解できない説明というのはやっぱり少し辛い。なんとなく話の内容的にこの世界というかゲームの中でも独特の視点を持っている風だけど、別にそこら辺にすごい興味がある訳でもないんだよね。


 そんなことよりも、さっきからすごい私のことを心配してくれるアンズをそろそろ労ってあげたかったから、とりあえずよしよししておいた。明日はアンズの日だからもちろんとびきりに愛するつもりではいるけど、それはそれだ。そして、当然のようにおねだりしてくるみんなも一通り撫でる。


 そしてそこで、私は苦笑しながら虚空をなでなでする赤髪の欠片も似合っていない私を見た。


「あ、ミラさん」

『待たせた訳でもなさそうだね。まあとりあえず手続きは終わらせてきたから、カードは返すよ』

「どうも」


 にゅ、と中途半端な逆戻しみたいに生えてくるカードを回収……ん?


「二枚……?」

『一枚はこの迷界管理所の登録証だよ。同時に迷界から戻ってくるための道具でもあるから、絶対に無くさないでね。と言っても君達来訪者にはとても便利な荷物入れがあるみたいだから早々なくすこともないだろうけれど』

「まあ、気をつけるね」


 頷きつつ、冒険者カードと重なっていたもう一枚、真っ白なそれを見る。

 材質はどうやら冒険者カードと同じようなものらしくて、手触りに違いは感じられない。そして相変わらずその表面には光の線で文字が記されていて、目で追うとウィンドウがポップアップしてくる。


 NAME:ユア

 ランク:1

 深度:0

 ID:44-100-7777


 ああ、冒険者カードとは記されてる内容が違うんだ。IDの下四桁が同じっていうことは、もう私はこれで確定なんだろうか。いやでもそれだとプレイヤー人口に対して少なすぎるんじゃ……別に何桁だろうと容量が足りないなんてことはないんだろうから、もっと桁を増やすとか色々できたと思うのに。


 まあいいや、そこは多分どうにか上手いことするんだろう。

 そんなことよりこのランクとか深度……特に深度の方、説明してもらえるんだろうか。


『さて、とりあえず登録も済ませたところでもう少し詳しい説明をさせてもらうとしようかな。カードに記されていることにも、疑問は恐らくあるだろうからね』


 そんな前口上から語られた内容を適当に纏めてみる。


 ランクというのは言わずもがな、どの程度の難易度の迷界になら挑めるかという指標。そのランクに丁度いい難易度の迷界を規定数攻略すれば、どうやらランクは上がってくれるらしい。迷界の攻略に関しては、場合によって様々だけど、基本的にはその世界の核となるナニカを破壊することで攻略として認められるらしい。それがどんな姿をしているのかは全くの未知数だけど、大体の場合は見れば分かるとか。雑過ぎる気もするけど、まあそこら辺は実際にやってみてといったところなんだろう。

 そして、迷界の難易度にも関係するのが深度という指標。深度というと、まるで迷界に深さがあるようだけど、これはそうじゃなくて、挑む側の私たちがどれだけ深く迷界を認識しているかということらしい。……まあ正直よく分からないけど、とりあえずこれが高い(深い?)ほど、同じ難易度の迷界に訪れてもその難易度は変わってくるとか。ゲーム的に言うなら、深度はゲーム全体の難易度を表しているという感じだろうか。深度0がイージーモード、100がハードモードみたいな……いや、具体的にどれくらいが高くて低いのかもよく分からないんだけど、だいたい雰囲気そんな感じ。


 ……なんだろう、下手に手を出すと際限なく時間を奪われていきそうな感じのシステムをしている。北、南ときてどうして西で唐突にこんなことになるんだろう。もっとこう、バランス感覚を養うべきじゃないだろうか。いやまあ北も南も探索し尽くした訳でもないから一概には言えないんだけど……ああでも、北は農業南は工業に特化してるっぽいし、ある意味それはそれで果てしないと言えるのかもしれない……?


 まあいいや。

 そういうのは運営とかすっちんやクラブさんみたいな管理者とかがなんやかんやと考えてるだろう。


 そんなことより。


『それでどうだろう、百聞は一見にしかずとも言うことだし、実際に体験してみるのはどうかな』

「やるー!」

「やりたいっすけど……」

「ユアさん」


 明らかに興味津々といった様子のみんなからの視線。

 ナツキさんやソフィはどうも私の意見に従う感じのスタンスらしい。


 ううむ。

 まだ依頼のモンスターも全部討伐しきれてないし、ほんとはまだ探索を続けた方がいいと思うんだけど、折角の機会だしミラさんもすごい期待してるからなあ……うん、まあ、いいか。


「じゃあ、やろっか」


 ゲームは楽しんでなんぼだしね。

 主にみんなが。


 ■


 《登場人物》

(ひいらぎ)(あや)

・筆者が、ここなんかすごいつっこまれそうだなあと思ったところに言い訳をしようとした結果なんかすごい解説キャラになりつつある二十三歳。これが文章力のなさというやつだよ。いつぞや訂正入れたのを改めて念押ししておきますが、あやはRPG的なのをやらないだけでゲームはやります。アンズと付き合ってるからそりゃあね。


柳瀬(やなせ)(すず)

・驚きのバリエーション少なすぎるのに驚きやすい二十三歳。とりあえずおー!だのおおー!だの『お』を繋げてればセリフが成り立つのは逆になんかすごい面倒なんやなって。かといって個性的すぎるとそれはそれでなんか、こう、あれじゃないですか(語彙力)。そんなことを今更になって思ってみたところで、まあなにかする訳でもないのですが。


島田(しまだ)輝里(きらり)

・『っす』がなかったらキャラ立ってないよなあ……な二十一歳。まああやの恋人の中では貴重な真人間枠だから仕方ない。まだきらりんは恋人じゃないけど。というか果たして恋人になれるのだろうか?とりあえずミミちゃんがボトルネック。なんだろう、こう、書くことなさすぎてキャラクター評価みたいなことになってる。それもこれも説明回のせいなんや……。


小野寺(おのでら)(あんず)

・街が一番見えてない十九歳。あまりにも冷静すぎるせい。まあだからなんだっていうことはないけども。迷界みたいなやり込み要素感じさせるシステムには割とテンションが上がる方。だけど残念、誰も迷界がやり込み要素だなんて言ってないんだぜ。


沢口(さわぐち)ソフィア(そふぃあ)

・なんだかんだ使い勝手が一番悪い十一歳。下手にあやと絡ませるとなんか酷いことになりそう。誰だこんなキャラ考えたやつ。これでも割と構想内では初期メンツだったりする。つまり完全に自業自得。なんか筆者の中では、出る作品間違えてる感じがしている。もっとこう、閉鎖的な感じでやるべきだったか……。まあそれでもなんとかやっていってくれ。


如月(きさらぎ)那月(なつき)

・性格的にあんま目立てない二十四歳。一番年上でプレイヤースキルがアンズとかきらりんと別ベクトルでめちゃくちゃ高いから便利ではあるんだけど。このメンツの中だとなんか微妙に印象が薄い気がする。でも印象づけようとして極端にするとなんかもうカオスが舞い降りそうだしなあ……。


待たせた割にこんなんでほんとすみません。

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