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28話:装備更新すら終わらないよ

ほんとすいません説明回です

 ソフィちゃんの家で夕食までご馳走になって、それからナツキの車で少しだけ遠回りをして帰宅。迎えたスズがやけにハイテンションで、それこそ危うく玄関で転倒しそうになるくらいだったから軽く折檻してみたりしつつ。シャワーを浴びて、今度はソワソワしながらも大人しく待っていたスズに促されるままAWの世界へ。


「来たわね!」

「わ」


 視界が晴れた瞬間そこにあったπちゃんの顔に驚いて、つい抱きついてしまう。

 びっくりした。


「なんで抱き着いてくるのよ!?」

「あ、うん、ごめん」


 謝りながら身を離すと、πちゃんはまったくもう!なんてぷんすこお怒りモードだった。やっぱり少しも意識していないみたいだと少し落ち込む。まあ、本気で拒絶されている訳ではなさそうだからいいとしよう。

 それから例によって例のごとく先に居たらしい三人と合流していざ新装備、の前に。


 かくかくしかじか、πちゃんに事情を話す。


「そういうことなら構わないわよ!ただしまた決闘させてもらうわ!早く連れてきなさい!」

「まだ始めたてだから、お手柔らかに」

「あなた達もそう長い時間やってる訳じゃないでしょう!?」

「それはそうだけど」


 なんにせよ快く受け入れてくれたようで、一安心。

 していると、πちゃんはなにか思いついた様子でぱちんと手を合わせる。


「ということはあなた達クランを結成するのね!?素晴らしいことだわ!当然私も参加させてもらうわよ!?」

「クラン?」

「そのつもり」

「っすね」


 それはなんなのかと首を傾げる私を尻目に、アンズときらりんはノリノリだ。唯一スズだけが同じように疑問を抱いているらしいという辺りが少し微妙、とかそんなことを思いつつ。


「待って待って、私初耳なんだけど」

「ん。ちゃんと説明するつもりだった」

「無知は罪ね!でもそんなことは後回しよ!まずはこの私の素晴らしき作品を存分に称えなさい!?」


 アンズの講義が始まろうかという気配を、πちゃんが一瞬で吹き飛ばす。元はといえばπちゃんの発言から生まれた流れなんだけど、まあ、そういう所も素敵だ。


 さておき。


 とりあえずクランとやらのことは置いといて、試験場に移動してから、早速お披露目会。


「まずはあなたよ雑魚!」

「雑魚ってゆーのやめてよー!」

「あなたは宣言通り防具よ!受け取りなさい!そして今すぐそんなクソみたいなボロッボロの量産型のゴミを捨て去るのよ!」


 ボロッボロに関してはπちゃんのせいなのに散々言うものだと思ったけど、言われているスズはアイテムボックス越しに譲渡された装備が満足を通り越すくらいに素晴らしいものだったらしい、ぱぁあ!と表情を輝かせて、誰に取られる訳でもないのに食いつくように装備を変換した。


 ばぁー、と光に包まれて、そして止む。


 現れたスズは、なんというか……すごく白かった。

 いやそれは少しばかり冗談。

 その身に纏うは、輝き放つ真白の金属鎧。

 スズの身体が二、三倍に膨れて見えるのはなにも膨張色だからという訳ではないんだろう、さっきまで身に着けていた鎧と比べても一回りどころじゃなく大きく見える。なるほどその巨躯はかの圧倒的暴力の化身であった亀を彷彿とさせる程の威圧感を放っているけど、同時に関節とかのシャープな形状が全身を引き締めていて鈍重といったイメージを抱かせない。強固、堅牢、強靭、そんな言葉を詰め込んだみたいな堂々たる佇まいだ。一番の亀要素といえば、どことなく亀っぽさを感じさせる形状の、なんか頭突きの威力とか上がりそうなフルフェイスの兜くらいだろうか。それにしたってやっぱり、なんとも勇猛そうで格好いい。


 なんだろう、亀モチーフということで密かに心配していたんだけど、さすがあんな素敵な細剣を作り上げるだけのことはある、これはまた、なんというか……いや、わざわざ言葉を弄する必要も、きっとないんだろう。


「どーだー!」

「すごい」

「かっこいーっす!」

「……想像以上」

「この私があなた達ごときの想像に収まる訳ないじゃない!」


 むーん!と胸を張るπちゃんに、素直にぱちぱちと拍手。

 これに調子をよくしたπちゃん、饒舌に解説を入れてくれる。


「この鎧……『ホワイティアタートス』の素晴らしさはもちろん見れば分かるわ!けれどあなた達にそれでも更に語って聞かせてあげようじゃないの!光栄に思いなさい!?まずはその素材からよ!この新雪が如き輝きを放つ圧倒的美しさ!その上強度と身を支えるための重量を兼ね備えている最高の金属よ!この私が!こ・の・わ・た・しっ!がっっ!!作り上げた!しんっ!素材っ!通称プラチナムホワイトッッッ!!!硬度と重量のダルスに更に同じ属性の亀の甲羅を合わせることで逆説的に軽く硬くを実現したこの私の手腕に脱帽だわ!試験的にその鎧の一番薄い部分と同じ程度の板にメタルピアースをぶち込んでみたけど突き刺さりもしなかったからその強度は折り紙付きよ!更にそこにこの私の匠の技が加わったのだからもはや次の装備に変えるまで一度も修理が必要ないくらいだわ!もちろんこの私の素晴らしさは素材だけじゃあないわよ!相手の攻撃を受けることを前提にむしろダメージを与えるくらいの勢いで設計したわ!全体的に鋭利なのはそのせいね!素手で殴ってでもみなさい!拳なんて跡形も残らないわよ!?当然関節部は駆動域を障害しない形状のプロテクターで覆われているわ!とはいえそこも亀の皮を使ってるから生半可な攻撃じゃ傷一つつかないけどね!あとこの篭手のここのなんていうのかしら!?なんでもいいわ!裏拳よ!裏拳には甲羅をイメージしてこんな風に丸みを帯びた盾を付けたわ!手の関節を障害することもないし手に向けての攻撃を逸らしてくれるわ!魔法を撃たれた程度じゃ弾かれないわよ!?更に見なさいこの兜を!亀の頭をモチーフに造形をシャープにすることでなんと頭突きに突属性をつけたわ!いえついたわ!偶然よ!なにか文句ある!?これなら体当たりに突属性とか目指せばよかったわ!もちろんそれだけじゃなくて特殊効果も満載よ!嘘よ!これは二つだったわ!硬くなって重くなる!以上!だけどその分質を上げてるわよ!体感重量は重心を揃えてるしそうでもないはずだけど、外力に対しての重量が増すようになってるのよ!もはや押そうが蹴ろうが倒れるなんてありえないくらいだわ!格好いい上に堅牢!この鎧だけでもはや騎士の中の騎士を名乗れるほどね!我ながら自分が天才だと思ったわ!いいえ天才だったわ!この私としたことが謙遜なんてくだらない時間の無駄をしてしまったわね!私は天才よ!さああなたたちも褒めたたえなさい!」

「すごいよπちゃん、こんな強くて格好いい装備を作れるなんて、やっぱりπちゃんに頼んでよかった」


 ……。


「ちょっと!あなた達も褒め称えなさいよ!亀よりノロマねあなた達!?」

「あ、終わった?なんかよく分かんないけどすごい!」

「いや終わりどころ分かんなくてっすね、いやめちゃくちゃ格好いいっすけど」

「……強い」

「ならいいわ!」


 いいらしい。


 さておき。


「というか、これを一日で作ったの?」

「そうよ!リアルほど難しくもないわ!リアルでこんなことしたことないけどね!整形も粘土みたいにこう、こねこねできるのよ!」


 こねこねするπちゃん可愛い、というのはまあいいとして、仮に粘土みたいにできるにしても他の装備まで揃えると考えるとかなりすごいと思うから、もっと感動を伝えてみよう。


「それでもすごいよ、ほんとにありがとう」

「そうよ私は凄いのよ!だけど私はもっと凄いのよ!まだこんなもんじゃないわ!ほら次は私服よ!さっさと来なさい!」

「了解っす!」


 ノリノリπちゃんの進行で、次はきらりんのターン。

 さて今度はどんな装備かなと期待に胸を膨らませたのは私だけじゃなくて、けどきらりんの反応はまるで鏡の前に立ってしまったかのような微妙なもので。


「これっすか……」


 微妙な表情のままに言いながらも、きらりんはそれを装備する。


 部位は腕。

 光が集って現れたのは……なんだろう、すごい特殊な形をした篭手だった。

 いや、メインの形はやっぱり亀で、こっちはスズのやつより分かりやすく亀々しい感じになっている。かの巨体を支える亀の支肢を思わせる頑強な手の部分と、甲羅のような形状をした腕のプロテクター。どことなくスズのホワイティアタートスを思わせる鋭利な造形は、殴るというそれだけの攻撃に打撃に留まらない驚異を宿すことになるだろう。もちろん特殊というのはその程度じゃない。問題は、そのプロテクターの拳側の端から生えるもののことだ。問題というか、なんというかまあ、蛇のようだった。白い身体の長い長い蛇だ。それがしゅるりとしなやかに、地面に落ちてとぐろを巻くみたいに、左右の手から一本ずつ。その頭は金属光沢を宿して、牙は刃の煌めきを放っている。俗にそれは鞭と呼ばれる代物なんだろう、少なくとも篭手につけるものじゃないと思うんだけど。


「なんか、すごいねこれ。鞭?」

「むー?あー!げんぶだ!」

「なるほど」

「その通りよ!」


 げんぶ……玄武。


 なんだったかなと記憶から引っ張り出して、そういえばそんな感じの亀がいたなと思い出す。その造形を思い描いて、なるほどだから亀に蛇っていうことなんだと納得しつつ。


 私たちの反応を気にせず、きらりんは手を開いたり閉じたりためつすがめつ篭手の感触を確かめるようにして、それから徐に構えて腕を振り上げると、思いっきり地面に向けて振り下ろす。


 ぴゅばっ!と裂ける大気。

 びぢっ!と弾ける地面。


 きらりんは首を傾げて、今度は振り下ろすんじゃなく突き出すようにして即座に引っこめる。

 ぴゅひゅっ!と空気を穿って、また地面を弾く。


 それからきらりんはなんども色々な動作を繰り返して鞭の感触を確かめて、やっぱり難しい表情を浮かべる。そりゃあ鞭なんて使う機会普通はないだろうし、慣れてる方がおかしいといえばおかしいんだろう。まあ他の武器もそうだけど、きらりん他のゲームもやってるっぽいし。


「ムチ、難しいっすね……」

「そこはあなたの訓練しだいだわ!勝手にどうにかしなさい!」

「むむぅ……っす」

「他の武器と違ってあんまり力込めても意味ないし、こう、軽い感じで手をしならせるイメージがいいよ」

「え、あ、はいっす」


 こう、しゅぴっと。


 ……いや、うん、πちゃんまでそんな目を向けないでほしい。

 まあ、どんな言い訳もないけど。


「……まあいいわ!そんなことより武器よ!?私服の苦手な中距離を抑える上に近距離での運用も可能という超画期的な新装備!名付けて『蛇拳《玄武》』!こういうのはしんぽーオブザベストとっ!よ!つまり最高ということよ!いつか四聖獣コンプしてやるから覚悟しなさい!当然名前通り玄武をモチーフにしてあるわ!篭手部分は雑魚のものよりかなり堅牢強固に作ってるわ!配合を変えて重量比率を高くした分破壊力は増してるはずよ!?刺々しさなんて不要だわ!亀なのに突属性なんてくそ喰らえよ!基礎としての革はかなり繊細に処理を施してるけど基本殴ることを前提としてるから雑魚ほど自由度は意識してないわ!武器は武器!殴るなら殴る!その手に他の武器なんて握ってみなさい!?この私が直々にぶっ殺してやるわ!さておき鞭よ!蛇をモチーフにしているからあまり先細りにはなっていないけどその分しなやかさかを意識したわ!もちろん強度は折り紙付きよ!かなり張ってもアビリティ一発じゃ切れない程ね!削って並べた鱗がいい仕事してるわ!正直意識が飛びかけたけど中々面白い作業だったわね!おかげで新しいアビリティ出たわよ!?単純作業フルオートよ!おかげでEXP全部持ってかれたじゃないの!いい買い物だったわ!そんなことどうでもいいのよ!蛇の頭はわりと重めのプラホワで作ってあるわ!だからさっきお姫様が言ってたように力より速さで行くべきね!しかもおかげで巻き付けたりしやすくなってるわ!相手の腕にでも引っ掛けて引き寄せてぶん殴るのがいいわ!モンスター相手には適当に色々考えときなさい!蛇の牙はまあ正直おまけよ!でも喰い込んだら上手いこと抉り抜いてくれるようには作ってるわ!本当は毒でも付けたかったんだけどそこまで無理をしたら構造的に脆弱になるから止めといたわ!特殊効果は四つ!斬打突属性強化に鞭攻撃でたまにスタンをぶち込むわ!鞭の先端に打突、鞭本体のビシィッ!に斬属性がついてるらしいわ!あと拳も打属性ね!でもあんまり使い分けとか意識しない方がいいわね!斬りたきゃ大人しく剣で斬りなさい!これはあくまで中距離対応というだけだわ!その分現状究極的な性能になったと自負してるわよ!さあ崇めなさい!称えなさい!」


 今度は出遅れず、みんなで褒める。

 ひとしきり褒めて、πちゃんの自尊心を充たす。


 こう、二人きりでずっと耳元で褒め言葉を囁き続けたい。

 照れるところとか見てみたい。


 そんな邪な思いは置いといて。


「次はあなたよ魔法職!受け取りなさい!」


 そう言ってπちゃんは実体化させた杖をぶん投げる。


「ん」


 殺意満点、魔法付きとはいえスズの一撃を受け止める身体能力から放たれる豪速球……むしろバットだけど、ともかく回転して迫るそれに手を添わせてくるくる回すようにして勢いを抑えながら少しずつ方向をずらして身体ごと一回転、そして最後にずばっと横に突き出した手の中には、見事なことに白い短杖が綺麗に納まっていた。


「なかなか手に馴染む」

「当たり前でしょう!?この私を舐めないでほしいわ!」


 ……これはこれで仲良しみたいでちょっと悔しい。

 さておき。


 アンズの手の中にあるその杖は、比較的シンプルな形をしていた。それになんだろう、スズやきらりんのとは違って光沢がなくて、どこか幻惑的な雰囲気を醸し出してもいる。

 というか、亀要素はどこへ行ってしまったんだろう、シンプルな本体の杖先は、こう、天に向けて広げられた四枚の翼が籠を作るみたいに翼の先端を揃えるような形状になっていて、その中にはまるで目玉のような不思議な模様をした銀色の宝石が、なんだろう、四本指の鳥の足みたいなのに掴まれるように真上を向いて据えられている。よく見ればその反対側は鋭く尖っていて、謎の切れ込みが入っているけど槍とかそんな感じで突いて使えそうな気配がある。


 亀……?


「疑問そうだから先に言うわ!これは亀をモチーフにした訳ではないのよ!そのモチーフとはズバリ鶴!くれいんよ!」

「つる」


 ということはあの尖ったところは多分嘴なんだろう。

 翼と足と嘴と、言われてみれば鳥を構成するパーツは揃っている。

 鶴なんて小学生くらいの頃に教科書でしか見たことないような感じだからいまいちイメージが湧かないけど、ちょっと見てみたいかもしれない。


 それにしても、亀の素材で鶴を作るとは。

 鶴は千年亀は万年とか縁起のいい長命の象徴として並べて語られることも多いし、きっと相性は抜群にいいんだろう。なんの相性かはちょっとよく分からないけど。

 亀繋がりということで鶴にまでモチーフを波及させるその想像力たるや、いやはやπちゃんは本当に素敵だなあ。


「例によって例のごとく、語ってやるわこの杖を!銘は『永久生きる霊鳥の杖ワンド・オブ・クレイン』!敢えて亀を前面に出さないこのハイセンス!我ながら惚れ惚れね!魔力親和性の高いマジア鋼をメインにしなやかさと高水準の魔力伝導性を引き出した軸に甲羅を混ぜ込んでその分硬度を増した外側の二層構造で魔力媒体だけじゃなく鈍器としての運用を意識してみたわ!軸の方まで翼とか爪の細工を施した後に必要ないことに気がついた曰く付きの逸品よ!二時間かけたわ!馬鹿じゃないの!?そしてその宝石は亀の眼球を結晶化っていう特殊な技術で処理したものよ!まだ出来ないから他に依頼したら予算が想像の五倍くらいぶっ飛んだわよ!でも許してあげるわ!おかげでアビリティの糸口は掴めたもの!結晶化処理できる目玉なんて雑魚からは取れないのよ!よくやったわ!これで私はまた神に近づいたと言えるわね!?もちろん金をかけただけのことはあるわよ!その宝石だけで私が想定していた魔力充填量なんて軽く超えてみせたもの!これは想定外だったわ!あの職人中々いい腕前ね!私ほどではないでしょうけど!特殊効果は三つシンプルに揃えてやったわ!魔力充填と消費減、あとINT増加よ!魔力充填は素材特性みたいなものだから実質二つね!まあ典型的な効果で揃えたわ!しんぽーオブザベストっ!よっっ!?そうつまりこの杖こそ最高の杖!さあ待たせたわね!褒め称えなさい!」


 褒め褒め。

 もはやみんなも慣れてきたから、私もちょっと調子に乗って頭を撫でてみた。


 ら、全力で振り払われる。


「子供扱いするんじゃないわよ!私はロリコンが世界一嫌いなのよ!誰がロリよ!私は二十二よ!?舐めんじゃないわよ!」


 πちゃん、なんと私の一つ下だったらしい。

 それにしては可愛すぎる気もするけど、まあπちゃんだし仕方ない。


「別にそうじゃなくて、褒めたい気持ちの表れなんだけど」

「なら許すわ!考えてみたらあなたそこの私服も撫でてたしね!そういうことなら思う存分撫でなさい!」


 ずずい、と頭を差し出されたから、お言葉に甘えて好き勝手撫でる。


 それはもう撫でる。

 真っ赤な髪をさらさらすりすり撫でて撫でる。

 つむじを擽るように頭皮を解すように耳を弄ぶように撫で撫でる。


 撫で撫でて。


 撫で撫で撫でて。


 撫で撫でて。


 そしてπちゃんついに逃げゆく。


「な、なんかあなたの撫では駄目よ!駄目だわ!」

「えー」


 残念に思いつつ、当然のように撫でを要求してきた二つの頭を撫でて、少し遅れておずおず差し出されたもう一つの頭をまた撫でる。


 そんな光景にπちゃんはゴクリと喉を鳴らして、かと思えば即座にはっ!として指を突きつけてきた。よく見ると爪の形も素敵だなあとか思いつつ。


「そんなことより次はあなたよお姫様!」

「うん。πちゃんの手作り、早く欲しい」

「そんなに欲しいならくれてやるわ!感涙と共に受け取りなさい!」


 そう言ってインベントリ越しに渡されたのは―――


「……いやほんとに泣かれたら困るわ!?」


 いや、だって、こんなの嬉しいに決まってる……。


 ■


 《登場人物》

(ひいらぎ)(あや)

・器用ではないけど鞭の扱いとかは人並み以上に習熟している二十三歳。あと撫で技能も密かに高い。眼がいいからね、どこがいいか反応で分かるんですよ。鞭はほら、うん、まあ、色んな人と付き合ってますから。仕方ないね。腕の振りと手首のスナップで速度の加算をするのがあや流鞭術。身体に力を込めず最速で振るうその挙動にはシステマとかの流れも若干入ってる。


柳瀬(やなせ)(すず)

・こだわりのサークレットがフルフェイスに代わったけどそれはそれで格好よかったらしい二十三歳。ホワイティアタートスとか絶妙に合ってないけど語感だけで気に入ってるから全然気にしてない。タートルとトータス混ざってるよ、とかタートルって海亀なんだぜ、とか。自称小説家の設定を活かす機会なさすぎかよ。実は白亀着てるときにあやを抱いて走り回ると下手したら数秒であやが死ぬようになったけど気が付いていない。でも抱くときは服。鎧越しだと柔らかくないんだもの。まあシンプルに重すぎて走れないんだけどね。


島田(しまだ)輝里(きらり)

・両手に白いガントレットを着けて鞭を垂らす私服の女性二十二歳。変態じみた外見に突っ込まないのは果たして優しさなのだろうか。まあ今更。これまで割と色々なゲームをやってきたけどVRでもそれ以外でも鞭とか全然使ったことない。どっちかというとMだからとかは全然関係なく使ったことない。でもあやの鞭はちょっと受けてみたいかもとか一瞬危うく思いかけた。やめて、君は辛うじてマトモ枠なんだから……Mっ気を足したら流石に味覚障害なあや以外からしたらかなり変態じみちゃうから……!


小野寺(おのでら)(あんず)

・なかなかいい杖を貰えてちょっと嬉しい十九歳。ぶら下げてただけで一瞬も打ち合ってないのに打撃に運用するとか見抜かれてて密かに感心、πちゃんの評価を上げた。ほんとはネーミングセンスとかガッツリ突っ込んでやろうと思ってたけどやめてあげるくらいには高評価らしい。ちなみに鶴杖、総額四捨五入して十万マニくらい掛かってたりする。どこを四捨五入したのかとか入れたのか捨てたのかとかはなんかフィーリングで。結晶化がたっけえんだあれ。


天宮司(てんぐうじ)天照(てらす)

・あやのヤバさをなんとなく警戒中の二十二歳。まあ現代において恋愛性別とか割と些細なことだからπちゃんは男性女性にせよセクシュアリティ不明のやつには若干警戒するし、あやなんて明らかにビアンだからそれはそれで警戒してるんだけど、根本的に人付き合いの経験が薄いしゲームだし褒めてくれるからとガードが甘い。お菓子もらってもホイホイついてっちゃダメだよ……?まあその分性格がウザめなので邪な人も近付かないけど、残念ある意味ピュアなあやはむしろ進んで近づいてくるんやで。そんなことより武器に関して語らせると長いという設定にしたくて頑張ったけどどうしてもそこまでの熱意を表現出来なくて書いてると自分の無能に嫌気がさしてくる。あとネーミングセンスと造形センスは全部πちゃんのものであって筆者のものではないからこれダサくね?とかの文句はπちゃんに言ってください。褒め言葉もπちゃん宛てで。πちゃんウザくね?というのはまあ筆者が甘んじて受けますが。ワンクレは酷過ぎないかね。


ここからちょっと説明回的な感じが続きます。

すみません。


タコ殴りにしてくれてもええんやで……?

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