24話:ずっとπちゃんのターン!
πちゃんのターン
πちゃんが椅子とかを蹴散らかしたおかげで半ギレだったポッポちゃんに静かな威圧で追い出された後、私たちはみんなで試験場へとやってきた。
試験場というのは、まあ試験する場所だ。
このディラートの街には数限りない専門を有する職人たちがひしめいているけど、中でも武器や防具、兵器や爆弾みたいな実際に使用するときに危険を伴うだろうものを専門とする職人たちのために、そんな試験に使用することができる場所。丁度私たちが入ってきたのと真反対に設置された門の向こう、ともすれば街の総敷地面積にも匹敵するんじゃないかという広々とした広場が試験場。遮蔽物も建物もなにもない中で何人かの石霊族や人間が爆発を起こしたり謎の大きな物体を弄っているのは、なんというかあまりの物々しさに若干恐ろしいくらいでもある。
さてそんな試験場の片隅……いや、まあ隅っこまで行くのも億劫だから、適当に誰も近くにいない場所を探しただけだけど、ともあれそんな場所に展開された決闘フィールドの中、向き合うは二人のプレイヤー。
「『付与』―『魔法適応』、『付与』――『緑地』……さあ、どこからでもいいからさっさとかかってきなさい!」
一人はπちゃん。
付与魔法によって身に纏う土色のオーラ、そして黒を基調としたシャツに胸当ての軽装備、なんならスカートまで履いて、手には件のサンオブジャスティス。腰に吊った金槌があったところでどう見ても職人的なものには見えない出で立ちで、その剣の切っ先を真っ直ぐに向けて啖呵を切る。
「ほんとに本気でいくよー?」
もう一人はスズ。
特に目に見えるエフェクトもなく、いつも通りの鎧に大剣の重戦士な感じで、πちゃんの啖呵に喜色で応じる。
「くどいわ!さっさと来なさいよ!」
「よっしゃー!せんてひっしょぉぉぉおおおおお――――――!!!」
πちゃんの再度の急かしに応えて、スズは雄叫びと共に突貫。
見る間にπちゃんとの距離を詰めて、そして見覚えのある構えから大剣を横ざまに振り抜く。
これにπちゃんは、なんと回避じゃなくて受け止めるのを選んだ。
「ぐっ……!」
「すごい」
あまりにも無謀じゃないかと思う私の予想を裏切って、細剣に腕を添えて大剣に真っ向から立ち向かったπちゃんは、苦しそうな表情を浮かべて衝撃に地面を滑りながらも、完全に一撃を受け止めて見せた。
その事実にπちゃんはニヤリ、笑おうとして―――
ところがスズはそこでは終わらない。
「まだまだぁぁぁあああああ――――――!!!」
ふり抜く勢いを完全に受け止められたはずのスズは、けどなにがなんでも振り抜いてやるという気迫を咆哮に変えて、更に大剣に力を込める。
「う、そ!?」
πちゃんは笑うどころかじりじりと地を滑り始める身体に驚愕の表情を浮かべて、それでも逃げるでもなく……いやきっと力を緩めればその途端にばっさりとぶった切られそうだから逃げられないんだろう、伸脚するみたいに足を伸ばして懸命に耐えるけど―――
「――――――っらぁっ!!!」
「かふっ!?」
ざり、と足が滑った瞬間、それを見逃さずに渾身の力で振り切られた大剣。
πちゃんは盾にしていた細剣を身体に叩きつけられてそのまま、まるでトラックにでも衝突したかのような勢いで吹き飛んでいく。
「なっ!?ぼっ!?こふっ!?」
「うわぁ……」
「っす……」
「……」
地面で弾んで転がって、10メートル近く吹き飛んで、ようやく止まったπちゃん。
……正直見ていてあまり嬉しくはならない痛々しい光景だったけど、まだ決闘は終わってないし、なにより。
「……な、る、ほど、」
πちゃんは、それでもまるで当然のように立ち上がった。
大剣の衝撃を細剣越しにとはいえ叩きつけられた右腕なんてどう見てもへし折れていたけど、まるで気にした様子はない。
そしてπちゃんはスズに視線を向けて、訥々と言葉を紡ぐ。
「あなたはどうやら完全にパワーアタッカーみたいね。一撃特化……ということは耐久やATKよりも重量に重きを置くべきかしら?いえ、それともいっそ身体の方を重くするというのもありかもしれないわね。どちらにせよコンセプトは亀のような鈍重さであるべきよねそうに決まってるわ。ああ、でもそうすると堅牢でもないと整合性が取れていないからやっぱり硬くて重く重々しい方がいいに決まってるしなら使うとしたらロクトとカデンを合わせるべきかそれともいっそ純ダルスに甲羅でも砕いて混ぜてみたら面白いことになりそうねでもそれだとまだ亀っぽさが足りないしやっぱり鎧いっそどっちもでもそうすると他に作れなくなるしこの私の専属がクソみたいな装備だなんて許せないから駄目ねやっぱりどっちか決めないとでもああならいっそ大剣に甲羅を丸々一個使って合金みたいにこのゲームならできないなんてこともないでしょうしでもなら戦闘スタイルにそぐわない気がするけどああでもどうなのかしら多分そんな器用なことできなさそうだけど一度試してみた方がいいかもしれないしそうしよう……という訳で行くわよ!」
「へあ?」
なにやら言葉を投げかけるというか投げつけていたと思ったら、唐突に細剣を構えてπちゃんは駆け出す。
「さっさと構えなきゃ殺すわよ!」
「お、うおー!?」
「死になさい!『メタルピアース』!」
呆けていたスズが慌てて大剣を構えたところに、πちゃんは鋼色の輝きを纏う一突き。
スズはそれを慌てて大剣の腹で受け止めようとして―――
「あぶぇあ!?」
さも当然のように大剣を貫通してきたその切っ先を、スズは仰け反るようにしてかわし……きれなくて、ちょっと額が切れた。
「すごっ」
「うわ、えぐいっすねあれ」
「中々やる」
「中々なんだ……」
名前からして鉄を貫きそうなアビリティを使ったとはいえ、実際にああして金属の板を貫通するのは並々ならないことだと思うんだけど。
「やっぱり店売りなんかじゃ駄目ね!『ハイスラッシュ』!」
私たちの感想はさておき、なにやらちょっと理解できないことを口にしながら細剣を引き抜いたπちゃんは続けざまに大上段からの斬り下ろしを放つ。
「っ、うぁっ……!」
咄嗟に受け止めようとして嫌な予感がしたんだろう、スズは飛び退くように回避するけど、初動の遅れのせいで回避しきれなかった左腕がその身を護る鎧ごと空気のように切断された。
切断された。
宙を舞って、落ち、散る腕。
そのショッキングな光景にちょっと気分が悪くなった途端にアンズにむぎゅっとされて、それで気がついたきらりんにもぎゅっとされる。
おかげで精神の平静を保ったままに、二人の戦いを眺めていられた。
「店売りの装備なんて着けてるからそうなるのよ!この機会にあなたの装備を使い物にならないくらいにしてやるわ!」
「それはちょっとお断りかなぁ!」
受け身になったらまずいと思ったんだろう、スズは引き離した距離をむしろ一足に詰めながら大剣を振るう。
「無駄よ!『シャープエッジ』!」
ィィン―――!
と、金属的な耳鳴りみたいな音がして、スズの攻撃は完膚なきまでに空ぶった。
空ぶったというか、刃のない柄を振ったところで斬ることなんてできる訳もなくて。
「え、あ、」
絶句するスズの手に持つ大剣は、ただの大きな柄に成り果てて。
刃はといえば、ふり抜く勢いだけが乗ったままぐるんぐるんと吹き飛んで、遥か向こうで地に突き刺さった。
「―――店売りもそうだけど」
そしてπちゃんはそっと剣先をスズに向ける。
その視線は、期待を裏切られたみたいな冷め切ったもので。
「あなたはそんなに強くないわね」
―――言って、πちゃんは戦いを終わらせた。
……まあ、そんな終わり方をすればどうなるかなんて考えるまでもなくて。
「ゆあぁ……えぐっ、ひうっ」
「よしよし」
「剣斬られたぁ……高かったのにぃ……ひぐっ、ぐずっ、」
うんまあ、戦いは無情だから仕方ない。
というか別にどんな壊れ方しても直す値段は耐久依存だから同じだし、そもそもこの前バラバラになってたくらいだから、まあこれは高かったとかより普通に悔しいんだろう。惨敗だったし。
「あんなゴミに金なんか払うのがおかしいのよ!私が作ったなら絶対にあんなことにはならないわ!」
πちゃんはといえば泣きじゃくるスズに全く悪びれる様子もなく胸を張る。
実際のところ、スズの攻撃をあんな細い剣で受けたのに減った耐久は5%くらいだったみたいだし、その言葉には全く偽りなんてないんだろう。
可愛くて頼りになるとか、やっぱりπちゃんはすごいなあ。
なんて、そんなことよりスズだ。
「ほらリーン、元気出して」
「だっでぇ……」
「リーンの剣を斬ったあんな凄い剣を作ったπちゃんに今度はリーンの剣を作ってもらえるんだよ?嬉しくないの?」
「でもぉ……」
「ああ、あなたには剣作らないわよ」
「あれ?」
ちょっと効いたかなと思った途端に梯子を外されて、なにごとかとπちゃんに視線を向ける。
「当然でしょ?だって弱いんだもの。武器だけ凄くてもなんの意味もないわ!」
「ふぐぅ……」
「だからまず死なないように鎧を作るのよ!」
「……ふぇ?」
「なによ!なにか文句でもあるの!?でも無駄よ!どうせあなたみたいなタイプはまず攻撃を受け止めてカウンターを叩き込むでもしないとろくに攻撃なんてできないのよ!その分攻撃に勢いがなくてもパワーで押し切るの!ステータスがどうのこうのじゃなくて攻撃にだけ全身全霊を注ぐのがあなたには合ってるのよ!分かった!?」
「は、はい」
「ならそのつもりでいなさい!完璧な鎧を作ってあげるわ!」
「……!うんっ!」
おおー。
πちゃんの勢いでスズが立ち直った。
すごいなあ、なんだかんだ色々考えてくれてるし。やっぱり好きになってよかった。
「思ってたよりまともっすよ……?」
「……いい拾いものをした」
きらりんもアンズもなにげに辛辣だ。なにげというか普通に失礼だけど、まあ好評価みたいな感じだからいい……かな?
さておき。
「さてじゃあ次よ次!そこの私服!」
「それわたしっすか?」
「早くやるわよ!あなたのすべてを見せなさい!」
「わたしなんすか……」
私服って……と言いつつ、πちゃんについていくきらりん。
まあ実際、今や皮の鎧すら身に着けていない完全布の服装備だから、確かに戦闘服ではどう見てもないけど、それなら私だって私服な訳で、果たして私はどんな風に呼ばれるというのだろう。
さておき二人は私たちから離れたところで距離をとって向き合うと、早速決闘を始める。
展開されるフィールド、開始の合図と共にπちゃんが自分に魔法をかけて、準備は万端。
「来なさい!」
「上等っす!」
さっきと同じように、先手はきらりん。
対人戦の常套手段なのかその手に武器は握られていなくて、徒手のまま距離を詰める。
そして間合いに入る寸前に、抜剣―――
「面白いことをするわね!」
どうしてこんなにも不意打ちを平然と対処できるんだろう、切断しても刃が飛んできそうだからかπちゃんは叩き下ろされた大剣を打ち払い、続け様に大きな一歩と共にきらりんの首を狙って細剣を振るう。
「甘いっす」
きらりんはそれをいつの間にやら装備していた鉄拳で殴り上げて軌跡を逸らし、同時に大剣を地面に突き立てたまま放置して構えた長剣を横ざまに振るう。
それに対しπちゃんは為す術もなく、そのまま横腹に斬撃を浴びたけど、ここで顔を歪めたのはπちゃんだけではなかった。
「ぐっ……」
「やっぱ硬いっすね……!」
きらりんの斬撃はπちゃんの服を切り裂くことすら出来ないで、即座に振るわれる反撃の一閃を回避するために後ろに跳ぶ。
「『シャープエッジ』!」
その隙にπちゃんは鬱憤ばらしとばかりに大剣を縦に割って、そんなに市販品が嫌いなんだろうか、ほくそ笑んだ。
可愛い。
さておきスズとの戦闘でも思ったけど、やっぱりπちゃんはスピード型に見せかけた耐久型みたいな感じがする。使ってる魔法のアースって、なんか硬そうだし。
……というか今更だけど、考えてみればあんなに火を推してる風なのにアースって……まあ鍛治と考えると、金属とか鉱石とか地面っぽいし、それはそれでありかもしれないけど。
「ふつうそこは火じゃないんっすか!」
「うっさいわよばーか!『ハイスラッシュ』!」
「おっとっす」
ツッコミと共にまた仕掛けるきらりんだけど、今度は武器諸共に切断されそうになって咄嗟に斬撃を飛び越える。
「せいっ!」
「邪魔よ!」
そしてそのまま空中から顔面に蹴りを叩き込んだものの、πちゃんは全然たじろがないでむしろ反撃の一閃をお見舞してくる。
それをきらりんはπちゃんの顔を足場に回避、着地と共に距離を取る。
「中々厄介っすね……」
苦々しげに言うきらりんにπちゃんは噛み付くように叫んだ。
「そんなゴミみたいな装備をじゃ私は殺せないわよ!というかそうよ、それならもっと速度を活かす武器かそれとももっと威力のある武器を使わなきゃ意味がないじゃない!例えばそう、そうね、なにを作ればいいのか悩むわねあなた。速度を乗せた一撃に特化するか手数に特化するかでも変わるしでも大きいのもいけるだけのパワーもあるからやるならどっちも活かせるようなでもあんまり無骨だとキャライメージ崩れるわねむしろ手数の方がでも亀に速さを合わせるのは美しくないならいっそ白だし兎とかもありかもしれないわああそうよ兎なんて完璧じゃないだってそんな最高のアイロニー他にないわでもなにかしらそれはいけないと致命的ななにかが囁くから他のにでもなにをどうすればいいのかこれは悩みどころね亀で速さを出そうと思ったらどんなイメージにスラスターでもあったらそれっぽいのに亀速いいえいっそ遅くてもいいのよそれならむしろ甲羅の守るイメージの方にいえ違うわね守るだなんて攻めるのよつまりいっそ攻め守る攻め守るってなによいえ違うわ守り攻めるのかしらつまりだから……見えてきたわ!もっとやるわよ!」
「やっぱ唐突っすね!?」
驚きながらも二回目のことなので慣れたらしい、突貫してくるπちゃんの切り払いを危なげなくバックステップでかわしながら片手斧を投擲する。
「うっざいのよ!」
πちゃんは回転するように前進、片手斧を回避しながらそのまま一閃したところへ投げつけられた短剣に咄嗟に頭突きをして叩き落とすと、空中でキャッチして投げ返す。
「危ないっすね!?」
「殺す気だから当たり前じゃないの!」
短剣を受け止めインベントリにしまいつつ代わりに取り出した槍の突き出しをπちゃんは身を捩るようにして回避。続けざまに振るわれる腕を切り落とすような一閃をきらりんは腕をぐるんと回して掻い潜ると、その勢いを乗せて槍を振るう。
だけどそれをπちゃんは甘んじて受けて、僅かに表情を歪めながらも怯むことなく更に前へ。
「硬すぎっすよ!」
「あなたの武器が鈍いのよ!」
「くっ!」
きらりんはたまらず槍から手を離して鉄拳と長剣を装備、πちゃんの剣閃を拳で受け止めて長剣を突き込むけど身体を逸らして回避される。
そしてその瞬間、πちゃんは細剣を握る手に力を込めて―――
「『シャープエッジ』!」
「つぁっ!?」
咄嗟に細剣を掴んでいた手を上に振り払うように弾き上げながら咄嗟にしゃがみ込んだきらりんの頭上を、拘束ごと断ち切った白銀が過ぎる。
腕の次は手か……πちゃんの戦法的なおかげで、アンズとスズのぎゅっが骨身に染みる。
「ぐっ!」
「甘すぎなのよ!」
即座に飛び退るきらりんに、しかしそれを読んでいたπちゃんが追従、その剣に鋼色の光を纏う。
「『メタルピアース』ッ!」
放たれた突き。
それは両足の浮いたきらりんが回避できるような軌道ではなく、真っ直ぐに心臓へと吸い込まれて―――
「なっめるなぁっ……!」
「がっ……ひゅ……!」
寸前、地面に足を着いたきらりんはむしろ前進しながら持ち替えていた短剣を突き出して、それは真っ直ぐとπちゃんの首に突き立てられた。
片や心臓、片や首。
「……かふっ」
「ひゅっ……ふっ……」
倒れ伏すきらりんと、声を出すことすら出来ない状態で、だけど堂々と佇むπちゃん。互いに急所を狙いあって、同時にポリゴンを吹き出す二人だったけど、軍配はπちゃんに上がったらしかった。
それは多分圧倒的なVITの差。
STRとAGIと時々DEXに偏るきらりんがπちゃんの攻撃をモロに喰らえば、それは無理もないことなんだろう。
【勝者、ヘπトス】
無情なアナウンスが入って、決闘場が消える。
その途端に二人の傷もなかったことになって、きらりんはよろよろと立ち上がった。
「……負けたっす……」
「なかなか強かったわよ!もしも私の武器を使っていたら勝てなかったわね!」
「慰めはいらないっす……」
しょんぼりしながら私のところに来て、言葉とは裏腹に慰めを求めてくるきらりんだけど、多分事実としてもし武器が同等のものだったらきらりんは普通に勝っていたと思う。最初から最後まで、ずっと武器と打ち合わないように打ち合わないようにってかなり気を使ってたし。下手したらアビリティなくても鉄くらい何回かやれば切れそうだから、そりゃあ怖くて打ち会える訳がない。
そういう言葉は多分求められていないから、私はただよしよしときらりんを撫でる。
「とはいえ仮にあなたがわたしの武器を使ってても必ず負けたかは分からないわよ!あなたには分かりやすい弱点があるもの!」
「……弱点っすか?」
「そうよ!自分でも気づいてるだろうけどあえて言ってあげるわ!あなた逃げるの苦手なのよ!だから私みたいな攻撃をものともしないタイプに滅法弱いっていうワケ!」
「うぐっ」
逃げるのが苦手。
ちょっと私からはよく分からないけど、どうやらきらりんには心当たりがあるらしい。
「でも、お、斧とか投げてる、っすよ?」
「あんな片手斧投げた程度でどうにかなる訳ないじゃない!もうちょっと硬かったら全然無視してたわよあんなの!でも別にいいのよそんなの!というかそもそもあなたみたいな防御捨てて攻撃一辺倒なやつが逃げるんじゃないわよ!」
「いやでも、喰らったら死ぬっすよ?」
「回避と逃げは違うって言ってるの!分かる!?回避は攻撃の一手、逃げは逃げの一手よ!自分から相手を有効圏外に出すような行動を回避とは呼ばないの!ヒットアンドアウェイなんてソロプレイでやってなさい!いくら相手が怯まなくてもろくに打ち合えないくらいパワーに差があっても常に相手の射程内にいてこそ真の前衛なのよ!その点に関してあなたはそこの雑魚未満だわ!」
「ざこっ!?」
「みまんっ!?」
スズにまで飛び火した一撃できらりんが更に落ち込む……よくよく考えたらちょっと酷い気がするけど、まあスズが気がついてないからいいや。
よしよし。
「とはいえあなたの武器の扱いは正直ビックリだわ!まだインベントリ操作に慣れてない分場当たり的対処感が強かったけど今後に期待よ!だからいっそ今から回避を磨くよりその逃げを回避に転ずるような新しい武器を作ってあげるわ!そうすれば無理なく攻撃の手を広げられるわよ!いずれは全ての武器を私一色に染めてやるけど今はそれで妥協しなさい!いいわね!?」
「りょ、了解っす!」
ずばっと立ち上がってずびっと敬礼するきらりん。
πちゃんがすごい勢いでみんなのリスペクトを集めている気がする。
さすがπちゃん。
惚れ直してしまった。
……とはいえ。
最後の一人は多分、根本的に不可能そうだけど。
「……なら、次はわたし」
「そうね!あなたとは一度きっちり白黒つけてあげるわ!覚悟しなさい!」
そうして二人は睨み合って、早速決闘を……っていや、まず距離とって距離。
■
《登場人物》
『柊綾』
・ずっとヒリスペでボールと女の子を可愛がるだけの存在になっていた主人公なのに……な二十三歳。この物語ではよくあること。あれこれやり取りを見てπちゃんに対するラブ度が上がるのがちょっと筆者にもよく分かんないけどこいつ人によっては放置するだけでときめくからフラグ管理とかすごい楽なんだろうなあ……ヒロインがことごとくヒロインに寝取られるギャルゲとかノーサンキュー過ぎるけど。しかも『性別:男』の時点で攻略の可能性消失するという……全然関係ないですねごめんなさい。後は特にないです。
『柳瀬鈴』
・大剣ぶった斬られた上に腕まで切り落とされて最後には首チョンパされたやられ役二十三歳。でもほら冬野菜って厳しい時を越した分甘いからつまりスズもまだワンチャン!まあむしろわんちゃんくらいのもんですがねあっはっは。リアルでは圧倒的なのになあ……ゲームはなあ……まああともうちょっとだ。多分あと三章分くらい!(適当)
『島田輝里』
・まさかまさかの敗北を喫して筆者としても驚きを禁じ得ない二十一歳。まあ武器性能がちょっと違いすぎた。平均的に見ればステータス格差あんまりないのに武器性能が違いすぎた。下手すりゃ諸共にぶった切られるとか洒落かよ。実際のところ身長差を利用してジャンプを多用して滅多打ちにすれば全然勝てた戦いなんだけど、一回アンズにいいようにされたのが若干トラウマになってる感ある。根本的に反射神経で戦うからどうしても先を見据えた動きが上手くいかないので必要なときに既に手元に武器があるくらいの動きは実は余裕がないとできない。そこ無意識でできるようになったらもうちょっと強いんだけど。まあ頑張れきらりん。
『小野寺杏』
・ずっとあやの右膝を死守してごろにゃんしていた十九歳。正直きらりんの戦闘とかあんま見てなかった。早く終わらないかなと思ってるくらいある。今日が終わっても明日はソフィちゃんタイムですけどね。
『天宮司天照』
・実は強いよ二十二歳。伊達に引きこもってる訳じゃないぜ!そういう点では考えてみればアンズとキャラ被ってるしもしかしてこれ無意識の同族嫌悪……?強さの秘訣は職人業と素材集めになっっっっがいプレイ時間をつぎ込んだ潤沢なEXP。無駄なアビリティにつぎ込んでなければもっとステータス上がってておかしくないのに……今のところ店売りで存在する全武器種+αを幾つかの『〜使い』アビリティを入手しているという実はすごいプレイヤー。鍛冶師の嗜みとかドヤ顔する。でもメインウェポンは細剣だしなんなら細剣しか使わない無駄の極み。ちなみに魔法に関しては火炎属性も使えるけど最初っからこの二人とはできるだけ長く戦うつもりだったから耐久型の緑地でいってます。VIT上げて自分の重量を上げて自然回復つく優秀属性です。あと長ゼリフは考え事の癖です。孤独って独り言体質にするよね……。
なにげにπちゃんは廃人です。すっごいゲーム下手だから効率度外視のステータスですけど
批評酷評待ってます




