予選~数多の強敵達~
「で、どうやって大会に出るんだ?」
王都に到着したはいいものの、大会の参加方法を知らないのでセフィーに聞いてみる。
するとその言葉を聞いたセフィーは固まった。
「......」
あれ?
動かなくなったぞ。
まさかとは思うが、大会に参加する方法を考えてなかったんじゃ......。
「お~い、セフィリアさ~ん?」
「ど、どうやって参加するのでしょうか......?」
駄目だ。
やっぱり考えてなかったようだ。
こんなところで躓くとは。
肝心な時に役に立たない女神だ。
とりあえずオレは案を出す。
「ここの人に聞いてみればいいんじゃないか?」
「そ、そうですね」
セフィーに少し待っていてくれるように言う。
オレは噴水の近くで1人で座っている、猫耳が生えた獣人の男性に声をかける。
「あの、お時間よろしいでしょうか?」
「うん? 別にいいけど何か用かい?」
獣人の男性は快く対応してくれた。
オレは今日開催している大会にどうやったら参加できるか聞いてみる。
「武芸大会の参加方法? 君、大会に参加するのかい?」
「ええ、まあ」
「でも見たところ、君は平民に見えるけどねぇ」
やっべぇ!?
オレの服装はマールタ村を出た時からずっと愛用しているボロボロの服だからどう見ても貴族には見えない!
なんとか言い訳を考えないと!
「じ、実はある貴族の3男だったんですけど、家を飛び出して武者修行をしていたんですよ。だから貴族だとバレないように平民の物を身につけているんです」
苦しいか......?
頼む、これで納得してくれ。
オレの言い訳を聞いた獣人の男性は笑ってオレの肩を叩く。
「なんだ、そういうことか! 確かにあんたは見たところ、年のわりにかなり鍛えているし、戦士なら納得だな!」
「は、ははは......」
苦笑いをするオレ。
「大会に参加したいならこの先の道に闘技場があるから、受付の人間に言えば参加できるよ」
獣人の男性は大通りの道を指し示す。
オレは道を教えてくれた礼をする。
「気にするな若者! 俺も客席で応援しているから頑張れよ! 少年よ、大志を抱けってな!」
そう激励してくれた獣人の男性は歩いて大通りを歩いて行った。
それを見届けたオレはセフィーに声をかけようと、セフィーの方を向く。
オレを待っていたセフィーは年寄りに絡まれていた。
「お嬢ちゃんも武芸大会を見に来たのかいね」
「親子さんとはぐれたのかい?」
「私達が探してあげようかのぅ?」
「え、えっと、大丈夫ですのでお構いなく!」
セフィーがこちらにピューッと逃げてきた。
オレはお婆さん達に頭を下げる。
お婆さん達は笑ってセフィーの失礼な態度を許してくれたようだ。
お婆さん達はセフィーに手を振って離れていく。
「たく、なにやってるんだか」
「だって、いきなり話しかけられたら驚くじゃないですか......。ところで場所は教えてもらえたのですか?」
「ああ。この先の道を行けば闘技場に着くらしい」
オレ達は人が大勢行き来している大通りの道を闘技場に向かって進む。
◆
「うおっ! でっけえな!」
「闘技場というだけありますね......」
オレ達は大通りの道を歩いていると大きな広場とその真ん中に建てられてある巨大な建物がある場所に着いた。
それは大きな円形の建物だった。
入り口は複数あり、どこからでも入れる仕組みになっている。
まるでローマ時代のコロッセオのようだ。
「受付の人がいるんだっけ。そこでエントリーしないとな」
「あれじゃないですか?」
セフィーが指差した方を見ると、質の良さそうな白い服を着た女の人が椅子に座っていた。
その女の人の前には白いテーブルが置かれており、テーブルの上に束になった紙がある。
恐らくあの人が受付の人だろう。
「さっきみたいな言い訳は流石に通らないよなぁ......。催眠魔法とかないのか?」
「そういう魔法を使える人はいるかもしれませんが私は使えませんよ。サポート系特化なので」
「うーん。ならどうするかなぁ」
「お前、もしかしてユートか?」
オレ達はどうやって参加するか考え込んでいると、後ろから誰かがオレの名前を呼んだ。
振り返って名前を呼んだ人間を確認すると、そこには髭面の懐かしい顔がいた。
「ダグザ、か?」
「ああ。まさか王都で再会するとはな。こんなところでなにをしている?」
「実は......」
オレはダグザに事情を説明する。
オレの説明にダグザは腕を組んで納得がいったように頷く。
「どうやって出場しようか考えていたわけか。確かに平民はこの大会には参加できないからな」
「そういうことだがオレはどうしてもこの大会に参加したいんだ。何か良い方法はないか?」
「そんなことか。いいぜ、俺がなんとかしてやるよ」
「なんとか? ......大丈夫なのか?」
「大丈夫だろ。ま、さっさと受付しに行こうや」
「お、おい!」
ダグザはオレの腕を掴んで受付の人に近づく。
受付の人はこちらに気がついて笑顔で対応してくれる。
「大会の参加者ですか? ではこの紙に名前を書いてください」
受付の人から筆と紙を渡される。
紙には色んな人の名前があり、その横に番号が書かれてあった。
オレは書かれている名前の最後の下に『ユート』と書く。
この世界の文字の読み書きについては師匠から教えてもらったのだ。
「ほら」
終わったからダグザに渡す。
ダグザもすらすら自分の名前を書く。
ダグザの字が綺麗なのは意外だ。
やはり貴族だからだろうか?
ダグザは紙を受付の人に返した。
すると受付の人は困った顔をする。
「あのー、ユート様の家名を記入してほしいのですが......」
「え、えっと」
どうしよう。
またさっきみたいにデマカセで乗り切るか?
「そっちの兄ちゃんの家名は内密にしといてくれや。ちょっと公にできない家名だからよ」
「そ、それはちょっと」
ダグザが割って入った。
口からデマカセを言うダグザにオレは小声で文句を言う。
「(おい! どうするつもりだよ!)」
「(まあ、見とけって)なあ、姉ちゃん。もしこれ以上口答えするつもりならあんたの家を取り潰しても良いんだぜ?」
とんでもないことを口走りやがった!?
これに受付の人も恐怖に顔を歪ませた。
「ひ、ひぃ!? わ、分かりました、ユート様の参加を認めます! 選手控え室はこちらですので私についてきてください......」
「おう、ありがとさん」
受付の人がびびりながら案内する。
これじゃ悪役だ。
オレは悪態をつきたくなったが、目的は達成したので文句も言えない。
受付の人には申し訳ないが。
ダグザがにんまりして話しかけてくる。
「ほら、いけただろ?」
「権力でごり押しただけじゃん......。お前の家ってそんなに位高いの?」
この質問をしたら、途端にダグザはどうでも良さげな顔をする。
「ただの伯爵だよ。つまらねえ家だ」
伯爵ってかなり地位が高い家じゃないか。
本人は家のことなんてどうでも良さそうにしているが。
あまり触れてほしくなさそうなんでこの話題は打ち切る。
「ところで、私はどうすれば良いんでしょうか?」
確かにセフィーはどうするか。
受付の人に返した聞いてみよう。
「なあ、お姉さんに聞きたいことがあるんだけど」
「ひぃ!? な、なんですか!?」
なんかめっちゃ怖がられてる。
ちょっと傷つくが、無理もないか。
はぁ。
「この女の子はどうすれば? 選手控え室に入れても良いのですか?」
「一般人なら駄目ですか、助手でしたら構いませんので......」
「そういうことらしいぞ」
「そうですか。1人だけ観客席は嫌でしたからありがたいです」
「相変わらず仲の良いことで」
ダグザの茶化しを無視する。
建物の中に入り、階段をずっと下りていった先には扉があった。
「ここが選手控え室です。それとこちらをお持ちください」
渡されたのは番号の書かれたバッジだった。
オレのは『119』と書かれてある。
ダグザのは『120』だった。
「これは?」
「後で説明しますので、その番号札を服に見えるようにつけていてください。では、これで」
そう言って受付の人は元来た道を戻っていった。
よし!
覚悟を決めて扉を開く。
扉を開いた先には多くの戦士がいた。
戦士達の熱気がオレの体を突き抜ける。
みんな強そうだ。
ダグザもどうやら熱気に当てられてか、体からエネルギーが溢れているのが分かる。
オレも知らず知らず拳に力が入る。
この数多の強敵達に勝ち、絶対に優勝する!
オレはこれから起きるだろう激戦に胸を踊らせる。




